2018年2月16日金曜日

デトロイト


☆☆☆★★   キャスリン・ビグロー   2018年

よく「悪夢のような時間」とか言ったりするが、当時者た
ちにとって思い出すのも辛かろうと思われるその「数時間」
を、わざわざ克明に再現してその悪夢の一端を観客にも体
感させようという映画である。

実際にあった「デトロイト暴動」のさなかに起きたレイシ
ストの白人警官たちよる強迫的な尋問と3人の黒人の殺害
事件。映画はそれを丹念に追っていく。冒頭、油絵のよう
な絵で時代背景をさらっと説明したあとは、ドキュメンタ
リータッチのぶれぶれカメラで、いちど火がついた暴動が
燃え盛っていく様を当時のニュース映像を交錯させながら
積み重ねる。その一方で、モータウンでスターダムを目指
す才能あるコーラスグループの若者たちの物語が、数々の
ソウル・ミュージックに彩られて展開するが、その行き着
く先は…。

悪夢のような映画の中核をなすのは、アルジェ・モーテル
事件と言われる酷たらしい出来事である。オモチャの銃の
発砲音を聞いた警官がモーテルに駆けつけ、一斉射撃を加
えたのち、無関係の者を含む若者たちを一晩中脅し続けて
黒人青年3人を殺害する。レイシストの白人警官を演じた
役者の憎たらしい顔といったらない。観ていて永遠にも感
じられる終わりの無い「悪夢」である。

                                       2.6(火) TOHOシネマズ新宿


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