2017年11月21日火曜日

読書⑪


『五分後の世界』
村上龍 著    幻冬舎文庫

ふと意識が戻ると、自分が何かの行軍に加わって密林の中の
細い道を歩かされていることに気付く。ここがどこで、今が
いつなのかも分からない。道はぬかるみ、空腹も疲労も耐え
難いが、列から落伍した者には死が与えられることだけは明
らか…。
という幕開けからして映画的というか、映画を観ている観客
の気分というか。やがてこの世界の一端が見えてきて、一種
のパラレルワールドに入り込んでしまったことが分かってく
る。それがどういう世界か言ってしまうとおもしろくないの
で言わないが。
エッジの効いたヒリヒリするような文体は心地いい。
戦闘シーンの描写など、力のこもったすさまじい熱量である。









『非道に生きる』
園子温 著   朝日出版社

映画監督・園子温がいかにして生まれたのかを語り下ろしで
一気に語り尽くした本。
早熟の詩人で、若くしてPFFの大賞を獲り、『自転車吐息』
という成功作がありながら、なおかつ40歳を過ぎて『自殺サ
ークル』でメジャーに殴りこんできた"遅咲き"の映画作家で
もある。つまりほとんど映画を撮れなかった期間が10年ぐら
いあるのだ。

私は御多分にもれずユーロスペースで『愛のむきだし』を観
て、その過剰さと疾走感とゆらゆら帝国にノックアウトされ、
以来ずっと監督作を追い続けている。正直いって毎回おもし
ろいわけでもないが、「次はなにが飛び出すか」という怖い
もの見たさではダントツで一番である。本書を読めばわかる
が、本人がまずもうめちゃくちゃな人である。もうどんな映
画を撮ったって驚かない。








<ツイート>
BRUTUSの「観てない映画」特集。私は50本中25本でした。
ちょうど半分。寄稿者の平均が29本(観てる)だったという。
まだまだ修行が足りないようなので、精進します。

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