2017年3月24日金曜日

読書⑤


「劇場」
又吉直樹 著   新潮2017年4月号

ほんとうに「書ける」ひとであることを証明した2作目だ。
「恋愛小説」を志向したというが、まあ青春小説という気
もする。理由は、恋愛には必ず付随するある要素を排除し
ていたから。おそらく意図的に。
誰が見ても分かることだが、小説の成否はなんといっても
"沙希"という人物にかかっている。私には沙希はとても魅
力的な人物に見えた。

Nスペも観たけど、読む前に観なくてよかったよ。終盤の
ものすごく大事な場面まで朗読しちゃうんだもん。あれは
倫理的にアリなのか。私が又吉なら「えーマジか」と思う
と思うのだが。
『火花』の感想で「難しい」という声を多くもらって微妙
な思いだったという又吉。あれを難しいとかいう奴はもう
置いて行けばいいんじゃないかと思うが、又吉はそうは思
わず、なら次はもっとわかりやすく書こうと思ったという。
優しいのだ。









『神さまってなに?』
森達也 著   河出文庫

清水富美加の出家と同時期に文庫化されたので、ちょ
うど「神さまってなんだろうなぁ」とぼんやり考えて
いた時期でもあり、読み始めた。

森さんお得意の「そこで僕はかんがえる。」みたいな
感じの、読者にも考えさせる論法で、もともとは中学
生を対象にした「14歳の世渡り術」というシリーズの
1冊らしい。
森さんは仏教、キリスト教、イスラム教についてその
成り立ちから丁寧に説明し、もちろん宗教が戦争に利
用されてきた歴史や人間が集団化した時の危険につい
て持論を展開するのも忘れない。

森さんの知人が旅行から帰ってきたら熱心なキリスト
教徒になっていた話が興味深いが、逆にいえばそのよ
うな偶然みたいな"奇跡"でもなければ、おおかたの日
本人は「信仰」って何のことだかよくわからないので
ある。千眼美子さんのFAXにもそんなようなことが書
いてあったっけ…。少なくとも私はあのFAXに、日本
人の「信仰」に関する無関心さへの正確な理解を見ま
した。混乱の中にありながら、とてもよく書けている
文章だと思いましたけどね。私は文章のうまい女子に
は好感をもってしまうのです。まあ本人が書いたかは
知らないけども。




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