2016年7月14日木曜日

クリーピー 偽りの隣人


☆☆☆★★      黒沢清     2016年

"ホラー"と銘打てるほどの恐怖描写はなかったが、じわじわと、
ギリギリと締め付けられるような不快さと不気味さが全篇を覆っ
ている。冒頭の取調室の窓もかなり良い感じだが、ただ風が吹
いている庭を撮っているだけの画がとにかく怖い。私が黒沢清
を好きなのは、こういうところである。ざわざわしている森とか、
建物の外打ちとか、誰もいない部屋とか、なぜ怖いのかが説明
できないのに怖い。理性よりもっと本能的なところからくる恐怖
を喚起されるというか。いわゆる「この場所はヤバい」みたいな
ことである。黒沢清はそれをなぜ映像に定着できるのか、私に
は皆目分からないので、とりあえずマジック・タッチだということ
にしておこう。

緊張と不快を強いられる130分は正直いって疲れるが、充実感
もある。香川照之の不気味さを堪能。文句なしにすばらしい演
技だった。西島秀俊は、あれ以外の演技を見たことないけど、
まあ今回は表情のなさが映画とよくマッチしていた。同僚が殺さ
れ、怒りと焦りのあまり川口春奈に乱暴なことをするんだが、そ
れでも何も感情が伝わってこないのがすごい。あまり褒めてな
いが。竹内結子はまあまあかな。お茶々さま。

さっき数えてみたら、黒沢清の映画は20本目の鑑賞だった。
気まぐれで、私の愛する黒沢清の映画5本を選んでみる。

『CURE』
『叫』
『岸辺の旅』
『ドレミファ娘の血は騒ぐ』
『ドッペルゲンガー』

いずれも、「おもしろいからゼッタイ観て!」という類の映画では
ない。私が勝手に愛しているだけなので、むしろ観なくていいで
す。

                                                        7.1(金) 渋谷シネパレス


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