2016年5月8日日曜日

春の読書②


『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ
佐々木敦 著   新潮社

本書の大部分を占める論考
「ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、」
は、最新作の3D映画『さらば、愛の言葉よ』の詳細きわ
まる分析である。このフィルムのすべてのカットを仔細に
腑分けし、すべての視覚効果・音響効果を叙述しながら、
このフィルムがなぜ3Dで撮られたのか? ゴダールがこ
のフィルムで試行したこと(あるいは試行しなかったこと)
は何なのか? を考えて考え抜いている佐々木敦に、も
うついていけないこと必至である。
だっていくら解説されてもわけ分かんないんだもん。すい
ません。でも装丁はカッコいい。









『結婚式のメンバー』
カーソン・マッカラーズ 著  村上春樹 訳  新潮文庫

「MONKEY」の「復刊してほしい翻訳小説リスト」に、どれも
おもしろそうだけど、全部絶版ってことかよ! と文句を言っ
たが、村上春樹と柴田元幸はちゃんと次の手を考えていた
のだった。抜け目ない。源次郎タイプだな。

"村上柴田翻訳堂"の創刊! 今後順次、新訳と復刊でお
ふたりのお気に入りの海外小説を、文庫で(←ここが素晴
らしい)出していくようである。わーい。

ということで、まず春樹の思い入れもひとかたならぬもので
あるらしい本書。カーソン・マッカラーズなんてひと、春樹か
ら聞くまで知らなかった。文庫で手に入らない海外小説は
やはり触れる機会がないということだろう。

けっこう気合いを入れて読んだのだけど、うーん、あんまお
もしろくなかったなぁ。なぜだろう。

作者が多分に投影されていると思しき、思春期の一歩手前
の女の子・フランキーが主人公。そのアイデンティティがあ
やふやな感じ、自分と他者との境界が曖昧な感じ、強情な
ところ、まあ愛すべきキャラではあるのだが。そしてこういう
人物を主人公にするのってアメリカ文学に多い気がする。





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