2016年5月20日金曜日

ラストエンペラー


☆☆☆★★★   ベルナルド・ベルトルッチ  1987年

たいそう良かった。
こういう、悠久の時の流れ…みたいな映画って退屈そうだとい
う予断があったのだが、最後までスクリーンに引き込まれた。
ジョン・ローン演じる清王朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の生涯
を、収容所生活の戦後と栄華を誇った戦前とをカットバックさせ
ながら進んでいく。

何がよかったって、何も論評していないところがよかった。
孤独。孤独。孤独。
とにかく皇帝は孤独な存在である。なんたって紫禁城から出ら
れないのだ。美人で聡明な妻がいたって、親しみやすい第二
夫人がいたって、孤独なのである。

まあ引っ掛かるとしたら、なぜみんな英語をしゃべっているの
か、というところである。字幕文化が無いから? 当時の言葉
に英語字幕ではいけないのだろうか。

"butterfly"という言葉が印象的に使われる場面があった。ずっ
と親しんできた美しい乳母と別れさせられる場面。

"His Majesty is a big boy now. He cannot have a wetnurse anymore."
(陛下は大きくなられました。もう乳母は必要ないでしょう)
"But she is not my wetnurse. She is my butterfly."
(彼女は乳母ではない。朕の好きな女なのだ)

こういう使い方ができるんですね。

私はイタリア映画をほとんどおもしろいと思ったことがないが、
ベルトルッチは唯一の例外かもしれない。今回の併映の『暗殺
の森』も格調高くて好きだったし、『ラストタンゴ・イン・パリ』も
おもしろかった覚えがある。最新作の『孤独な天使たち』も悪く
なかった。地下の部屋とレッチリがよかった。

アカデミー作品・監督・脚色・撮影・美術・衣装デザイン・編集・
オリジナル作曲・録音賞受賞とのこと。すごくね?

                                                            5.5(木) 早稲田松竹


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