2016年5月17日火曜日

春の読書③


『冷血』
トルーマン・カポーティ 著  佐々田雅子 訳  新潮文庫

大学2年ぐらいのときに一度読んだきりだった。
当時は、こんなに身の毛もよだつ話はないと思いながらも、
熱に浮かされたように一気に読んで、読了後は衝撃の大き
さにしばらく虚脱状態だったような覚えがある。

絵に描いたような「善良な一家」が、単なる金目当ての強盗
2人組に惨殺されるという、カンザス州の残酷な事件に取材
し、カポーティが6年にわたって、すべての力を傾注した作品
である。いまの言葉でいえば「ルポルタージュ」になるのだろ
うか。ただ、死んでしまった家族の会話やちょっとした仕草な
ど、それこそ「見てきたような」描写が多用されており、つまり
カポーティの"想像力"がこの作品の大きな柱であるのは確
かである。やはりカポーティ自身が使った「ノンフィクション・
ノヴェル」という言葉がいちばんしっくりくるように思う。









『愛の夢とか』
川上未映子 著   講談社文庫

短篇集。文庫化されたばかりである。

なんだかんだ言って私は詩集以外の未映子さんの本をほとん
ど読んでるんじゃなかろうか。典型的ないい読者だ。
週刊新潮のコラムさえ毎週読んでいる。

それでも「好きな作家は?」と言われて未映子さんを挙げるこ
とはまずない。なんでだろう。
それはもちろん未映子さんが「人気作家」であることと無関係
ではない。読書好きは人気作家を好きな作家にカウントでき
ないのである。あ、村上春樹は別だけど。

「お花畑自身」が出色。


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