2016年5月30日月曜日

ヴィクトリア


☆☆☆★★   セバスチャン・シッパー  2016年

140分ワンカット。
看板には偽りなし、確かに1度もカットを割らず140分完走
していた。
超絶技巧だと思うし、主演のライア・コスタはじめ俳優もよ
く対応している。惜しみない賛辞を贈りたい。それはよくわ
かったが、肝心なのはワンカットという手法が、真に効果的
なものであったのかという点にあるだろう。

スペインからベルリンに来たばかりでカフェで働いている
女の子(ライア・コスタ)が、ある夜、酔っ払いの若者たち
と出会い、ひょんなことから犯罪に加担することになると
いうのが一応のスジだ。

ライブ感というのか、臨場感と緊張感はいや増す。まあこ
れが狙いなんだろうから、そこはひとまず成功していると
言えるだろう。
しかしどうしても観ていてカメラの存在を意識してしまう。
それは音声にも表れていて、カメラが向いた方向の喋り
声が明らかに明瞭になる。会話の中でこれがあると、と
ても気になってしまう。でもこんなのポスプロでなんとでも
できそうな気がするから、わざとそうしてあるということか。

あとやっぱ三半規管弱小部としては、酔いました!
特に車に乗って以降です。あれはツライ。

                                  5.21(土) シアターイメージフォーラム


2016年5月27日金曜日

レヴェナント:甦えりし者


☆☆☆★★    A.G.イニャリトゥ    2016年

冒頭、先住民から襲撃されるシーンがあまりに完璧すぎ、
このクオリティのまま最後までいったらエライことになる、
と逆に心配してしまったが、もちろん杞憂に終わった。
しかしどこからともなく飛んでくる弓矢があんなに恐ろし
いと思ったのは初めてである。

体調を万全にし、気合いを入れて観て、それでちょうど
よかった。でないと、監督の気合いに負けてしまうだろう。
思うに、重傷を負って身体を自由に動かせない、しかし
それでも追跡(ときに逃走)しなくてはならない、もどかし
い状況にある主人公をずーっと見せられていると、だん
だん観客にもフラストレーションが溜まってくるのではな
いか。
ラストの主人公の行動もよく分からない。「神にゆだねる」
と言っていたが、あれで「神にゆだねた」ことになるのか。

しかし映像も音響も俳優もロケーションも、あらゆるもの
が贅沢なフィルムである。こういう映画もあっていいよね。

                                                  5.17(火) 新宿ピカデリー


2016年5月26日木曜日

宇宙戦争


☆☆☆★★    スティーヴン・スピルバーグ  2005年

高度な知的生命体に地球がなす術もなく侵略されるわけで
ある。恐ろしい破壊力のマシーンが、おそらく人類誕生より
も前から地中にすでに埋められており、知的生命体は落雷
とともにそのマシーンに搭乗し、破壊と殺戮の限りを尽くす。
しかし、いったい何のために?

トム・クルーズは子どもふたりを守りながら(海を泳いで逃げ
られたのは奇跡!)、命からがら逃げ続ける。

この映画の魅力は、全体を俯瞰しても見えてこないと思う。
ディテールにこそ、この映画の魅力があり、逆にいえばディ
テールにしかない。暗雲を連れて来た不吉な嵐が、マシーン
の地中からの登場が、そのとき起こる地割れが、吹き飛ん
でくる車が、人々のパニックの様子が、マシーンのたてる不
気味な音が、無意味な殺戮が、すべてバシッと気持ちよくス
トライクゾーンに決まってくる、その快感。そこにスピルバー
グの底力をみることは難しくはないだろう。

                                                       5.16(月) BSプレミアム

2016年5月24日火曜日

革命児サパタ


☆☆☆     エリア・カザン     1952年

若きマーロン・ブランドがサパタを演じる。
民衆が蜂起して政府を転覆させようというストーリーな
のだからキレのいい展開を期待するが、どうもいまひと
つ躍動感に欠ける。なぜなんだろう。
サパタの兄を演じて、アカデミー助演男優賞をもらった
アンソニー・クイン、なんか見たことあるなぁこの顔、と
思ってたら、フェリーニの『道』の"ザンパノ"だそうで。
どうりで。

脚本はジョン・スタインベック。

                                               5.8(日) BSプレミアム








<ツイート>

ここのところ「ゆとりですがなにか」が良い感じに爆走して
ますね。歯車が見事に噛みあってる感じで、特にここ3回
は素晴らしい出来。僕はとにかくあの中国人妻がしゃべる
だけで笑いが止まりません。中国語が堪能な日本の女優
さんらしいですが。
「トットてれび」も楽しい。「おこだわり」もとっくに異次元の
世界に行っちゃってます。そしてもう帰って来ないと思い
ます。「真田丸」も大坂篇、けっこうおもしろいと思う。
ただ、「とと姉ちゃん」は……つまんない。

2016年5月22日日曜日

ロング・グッドバイ


☆☆☆★     ロバート・アルトマン   1973年

こんな話だったっけ?

テリー・レノックスってもっと繊細な、傷つきやすい青年じゃ
なかったか。赤ら顔の太ったおっさんだったので、かえって
私が傷ついた。

フィリップ・マーロウの住居も変わっている。ペントハウスと
いうのだろうか、エレベーターで最上階に上がると、2戸だ
けしかなく、お互いの住居のベランダが見える。そしてマー
ロウのお隣には裸族のおねえさんたちが住んでいる…。
頽廃的というかヒッピームーブメントの残滓というのか。

                                                     5.7(土) BSプレミアム


2016年5月20日金曜日

ラストエンペラー


☆☆☆★★★   ベルナルド・ベルトルッチ  1987年

たいそう良かった。
こういう、悠久の時の流れ…みたいな映画って退屈そうだとい
う予断があったのだが、最後までスクリーンに引き込まれた。
ジョン・ローン演じる清王朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の生涯
を、収容所生活の戦後と栄華を誇った戦前とをカットバックさせ
ながら進んでいく。

何がよかったって、何も論評していないところがよかった。
孤独。孤独。孤独。
とにかく皇帝は孤独な存在である。なんたって紫禁城から出ら
れないのだ。美人で聡明な妻がいたって、親しみやすい第二
夫人がいたって、孤独なのである。

まあ引っ掛かるとしたら、なぜみんな英語をしゃべっているの
か、というところである。字幕文化が無いから? 当時の言葉
に英語字幕ではいけないのだろうか。

"butterfly"という言葉が印象的に使われる場面があった。ずっ
と親しんできた美しい乳母と別れさせられる場面。

"His Majesty is a big boy now. He cannot have a wetnurse anymore."
(陛下は大きくなられました。もう乳母は必要ないでしょう)
"But she is not my wetnurse. She is my butterfly."
(彼女は乳母ではない。朕の好きな女なのだ)

こういう使い方ができるんですね。

私はイタリア映画をほとんどおもしろいと思ったことがないが、
ベルトルッチは唯一の例外かもしれない。今回の併映の『暗殺
の森』も格調高くて好きだったし、『ラストタンゴ・イン・パリ』も
おもしろかった覚えがある。最新作の『孤独な天使たち』も悪く
なかった。地下の部屋とレッチリがよかった。

アカデミー作品・監督・脚色・撮影・美術・衣装デザイン・編集・
オリジナル作曲・録音賞受賞とのこと。すごくね?

                                                            5.5(木) 早稲田松竹


2016年5月19日木曜日

ヨーク軍曹


☆☆☆★    ハワード・ホークス   1941年

第一次大戦で軍曹として活躍した実在の人物に材を
とったドラマ。
純朴な農夫が、見初めた女性を振り向かせるために
豊潤な土地を手に入れるべく発奮したかと思ったら、
信仰にめざめ、果ては招集されて戦争に行き、抜群
の銃の腕を買われて一目置かれるようになり……、
というなんだかよく分からない不思議な話であった。

印象に残ったのはゲイリー・クーパーの「背の高さ」。

                                                  5.3(火) BSプレミアム


2016年5月17日火曜日

春の読書③


『冷血』
トルーマン・カポーティ 著  佐々田雅子 訳  新潮文庫

大学2年ぐらいのときに一度読んだきりだった。
当時は、こんなに身の毛もよだつ話はないと思いながらも、
熱に浮かされたように一気に読んで、読了後は衝撃の大き
さにしばらく虚脱状態だったような覚えがある。

絵に描いたような「善良な一家」が、単なる金目当ての強盗
2人組に惨殺されるという、カンザス州の残酷な事件に取材
し、カポーティが6年にわたって、すべての力を傾注した作品
である。いまの言葉でいえば「ルポルタージュ」になるのだろ
うか。ただ、死んでしまった家族の会話やちょっとした仕草な
ど、それこそ「見てきたような」描写が多用されており、つまり
カポーティの"想像力"がこの作品の大きな柱であるのは確
かである。やはりカポーティ自身が使った「ノンフィクション・
ノヴェル」という言葉がいちばんしっくりくるように思う。









『愛の夢とか』
川上未映子 著   講談社文庫

短篇集。文庫化されたばかりである。

なんだかんだ言って私は詩集以外の未映子さんの本をほとん
ど読んでるんじゃなかろうか。典型的ないい読者だ。
週刊新潮のコラムさえ毎週読んでいる。

それでも「好きな作家は?」と言われて未映子さんを挙げるこ
とはまずない。なんでだろう。
それはもちろん未映子さんが「人気作家」であることと無関係
ではない。読書好きは人気作家を好きな作家にカウントでき
ないのである。あ、村上春樹は別だけど。

「お花畑自身」が出色。


2016年5月16日月曜日

モヒカン故郷に帰る


☆☆☆★     沖田修一    2016年

こういうトボけた味をやらせたらさすがに巧い、沖田
修一である。松田龍平のへらへらした顔、何も考えて
ないくせに考えているふりをする演技も素晴らしい。

売れないパンクロッカー(松田)が、彼女(前田敦子)
の妊娠を期に、実家がある瀬戸内海の戸鼻島(架空
の島だって)に帰省する。ゆるゆると物語は進むが、
父親(柄本明)が末期のガンだと分かってから、ちょっ
とだけ様相が変わる。

それにしても山下敦弘に始まり、中田秀夫、黒沢清、
また山下敦弘、廣木隆一、そして沖田修一…。こんな
華々しい経歴の女優ってそうはいない。
シネフィルあっちゃんの映画的地平はかなり開けてい
て、しかも明るいのではないか。

                                                4.30(土) テアトル新宿


2016年5月15日日曜日

【LIVE!】 KAN


KAN BAND LIVE TOUR 2016 【ロック☆ご自由に♪】

 01. 桜ナイトフィーバー
 02. テレビの中に
 03. Happy Time Happy Song
 04. 言えずのI LOVE YOU
 05. Songwriter
 06. 東京熱帯Squeeze
 07. どんくさいほどコンサバ
 08. scene
 09. 愛は勝つ
 10. Rock'n Soul in Yellow

 11. ポカポカの日曜日がいちばん寂しい
 12. 悲しみの役割

 13. 青春の風
 14. 夏は二の腕発情期
 15. 丸いお尻が許せない
 16. 胸の谷間
 17. Oxanne ~愛しのオクサーヌ~
 18. 安息

(Encore)
 01. ロックンロールに絆されて
 02. 適齢期LOVE STORY
 03. 逆全曲つなげ
 04. 寝てる間のLOVE SONG

        4.29(金) 東京国際フォーラムHALL C


あいかわらずの楽しいライブ。
真剣にふざけ散らすのも大変だと思う。
2曲目を歌う前にはやくも喋り出し、今回はプロンプターを
使わない宣言。のみならず、うしろのスクリーンに歌詞を
投影してお客さんに見せるという。案の定、歌詞はしょっ
ちゅう間違えていた。
ベストアクトは「丸いお尻が許せない」。名曲なり。


2016年5月14日土曜日

アイアムアヒーロー


☆☆☆★★    佐藤信介    2016年

血みどろ血みどろ。
ついに日本でも本格的なゾンビ映画が…ということで、
ゾンビ映画ファン方面には歓迎されている様子。
しかしキネ旬の星は意外なほど低調である。

ゾンビは頭を吹っ飛ばすまで止まらないという基本フォ
ーマットは踏まえているが、噛まれるとあっという間に
ゾンビ化するし、動きも速いやつは速いので、かなり厄
介である。血みどろ祭りになるのは必至であり、15禁も
まあしゃーないか。

私は有村架純がいつ戦力になってくれるのか、ずっと
期待して待っていたのだが、結局主人公を助けてくれ
たのは、山の中のあの一回だけ。うーん、あの特殊な
キャラクターはもっと活かせたのではと惜しい気がする。
肩すかし感が否めない。

それにしても長澤まさみが噛まれてないのは奇跡だな。
あんなピコピコハンマーみたいなのでよく戦ってたよ。

                                      4.26(火) TOHOシネマズ渋谷


2016年5月12日木曜日

蜜のあわれ


☆☆☆     石井岳龍    2016年

いまひとつ身が入らず。
どうしても鈴木清順の劣化バージョンに見えてしまう。
耽美的な世界というのは、映像化するのが難しいとは
思う。金魚が女の子になって老作家のもとに現れると
いう話なので、いたるところで水音の効果音(チャポン、
みたいな)が入れられている。ちょっとバカっぽくもある
のだが、悪くない試みだと思った。
本作をもし『私の男』の感じで熊切和嘉が撮ったらどう
なっただろうか。

二階堂プロは常に目を見開いて、奔放な金魚になりき
ろうとされていた。そして『この国の空』に続き、昭和初
期を意識したと思しきヘンな喋り方だった。しかしなが
ら二階堂プロ、肢体の美しさは当代一である。若さが
充溢して内側で暴れているようである。

                                               4.25(月) 新宿バルト9


2016年5月11日水曜日

日本侠客伝


☆☆☆★     マキノ雅弘    1964年

まいど同じ話なので、特に書くことはない。
ただ、中村錦之助が演じるあの客分の行動が疑問である。
客分ながら堪忍袋の緒が切れたということなのだろうが、あ
れではただ組に迷惑かけてるだけではないか。

「今日は"赤電車"まで飲むぞ」というセリフがある。桑田佳祐
にそっくりの長門裕之が、なじみのママに言うセリフである。
赤電車とは何か。文脈から、終電車か始発電車どちらかのこ
とだろうという察しはつくが、どっちか分からない。Google先生
に訊いてみると、はたして赤電車とは最終電車のことであった。
その昔、都市圏の路面電車は最終電車だけ赤い電球をつけ
て走ったところから来ているらしい。

                                                      4.24(日) BSプレミアム


2016年5月8日日曜日

春の読書②


『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ
佐々木敦 著   新潮社

本書の大部分を占める論考
「ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、」
は、最新作の3D映画『さらば、愛の言葉よ』の詳細きわ
まる分析である。このフィルムのすべてのカットを仔細に
腑分けし、すべての視覚効果・音響効果を叙述しながら、
このフィルムがなぜ3Dで撮られたのか? ゴダールがこ
のフィルムで試行したこと(あるいは試行しなかったこと)
は何なのか? を考えて考え抜いている佐々木敦に、も
うついていけないこと必至である。
だっていくら解説されてもわけ分かんないんだもん。すい
ません。でも装丁はカッコいい。









『結婚式のメンバー』
カーソン・マッカラーズ 著  村上春樹 訳  新潮文庫

「MONKEY」の「復刊してほしい翻訳小説リスト」に、どれも
おもしろそうだけど、全部絶版ってことかよ! と文句を言っ
たが、村上春樹と柴田元幸はちゃんと次の手を考えていた
のだった。抜け目ない。源次郎タイプだな。

"村上柴田翻訳堂"の創刊! 今後順次、新訳と復刊でお
ふたりのお気に入りの海外小説を、文庫で(←ここが素晴
らしい)出していくようである。わーい。

ということで、まず春樹の思い入れもひとかたならぬもので
あるらしい本書。カーソン・マッカラーズなんてひと、春樹か
ら聞くまで知らなかった。文庫で手に入らない海外小説は
やはり触れる機会がないということだろう。

けっこう気合いを入れて読んだのだけど、うーん、あんまお
もしろくなかったなぁ。なぜだろう。

作者が多分に投影されていると思しき、思春期の一歩手前
の女の子・フランキーが主人公。そのアイデンティティがあ
やふやな感じ、自分と他者との境界が曖昧な感じ、強情な
ところ、まあ愛すべきキャラではあるのだが。そしてこういう
人物を主人公にするのってアメリカ文学に多い気がする。





2016年5月7日土曜日

スピード


☆☆☆★    ヤン・デ・ボン    1994年

公開時から『新幹線大爆破』のパクりだと騒がれたらし
いが、まあ本家のほうが100倍おもしろい。
時速50マイル以下になると発動する爆弾がバスに仕掛
けられ、犯人から金を要求する電話がかかってくるとい
う、一種のパニック映画である。発端はビルのエレベー
ター、メインは路線バス、最後は地下鉄と、これでもか
これでもかと襲いくるピンチ! こういっちゃなんだが、
本人たちが真剣なだけに、だんだん笑けてくる。

ただ最後、命からがら地下鉄から脱出したふたりが、ひ
とめもはばからずイチャイチャするというのはなかなか
おもしろいラストだった。

                                                  4.24(日) BSプレミアム


2016年5月4日水曜日

春の読書


今期の芥川賞受賞作を読みました。

「異類婚姻譚」
本谷有希子 著

御徒町凧の奥さんです…といっても夫のほうをご存じない
かもしれませんが。私がいちばんラジオを聴いていたころ、
森山直太朗の"OH! MY RADIO"によく出ていたかっくん…。
詩人です。最近あまり聞きませんが、ご活躍なのでしょうか。

まあそれは夫のことだから措くとして、本谷さんもついに芥
川賞。小説は初めて読んだのだけれど、読んでみるととて
もあっさりめで、ちょっと似てるかなと思い出したのは川上
弘美の受賞作「蛇を踏む」であった。

これがもし「芍薬」とかの凡庸なタイトルだったなら、はたし
て芥川賞を獲れたかどうか、別にケチをつけようってわけ
じゃないが「タイトル勝ち」な気がしないでもない。


「死んでいない者」
滝口悠生 著

一方、こちらはこってりめ。
通夜に集まったすごい人数の親族たちを、語り手を自在に
変えながら叙述していく変わった小説である。これがかなり
手練れで、新人ばなれしたうまさには舌を巻く。

選評でだれも触れていなかったが、これラテンアメリカ文学
(というかガルシア=マルケス)の影響ある、よね、きっと。

多くの親族たちの中で、印象に残るのは知花と美之の兄妹
である。最後、制服のまま知花が浅い川に横たわる、その
水の冷たさまでが感じられるようであった。

こっちの単独受賞でぜんぜんよかったんじゃないか。


2016年5月2日月曜日

ダーティーハリー2


☆☆☆★★    テッド・ポスト   1974年

うってかわってこちらはハードボイルドの化身である
ハリー・キャラハン刑事が、タフな身をこれでもかと
危険にさらしながら巨悪と闘うシリーズの2作目。
対峙するのは、警察内部で法の裁きを介さず悪を
粛清している「正義の集団」である。シリーズ2作目
にして敵ははやくも警察内部! 5作目まであるのに、
この先はどういう悪役が登場するのだろう。

ラロ・シフリンによる音楽がクールこの上ない。音楽
も非情である。カッコいいったらない。

                                            4.14(木) BSプレミアム







<ツイート>

プレミアムシネマのページを見ていて、アナウンサー
の坂本朋彦さんが2014年6月から担当ディレクターに
なったという記述に気付く。つまりBSで放送する映画
の選者だ。のみならず「坂本朋彦のシネフィル・コラム」
なる連載までしているではないか。"シネフィル"を自称
するのは(映画好きならわかると思うが)かなり勇気が
いる。どれどれと読んでみると、相当マニアックであり、
映画愛にあふれたコラムである。そういうことか。
ここ1年ぐらい、私のHDDが映画でいっぱいで、いつ
も追われるように観るはめになっているのはどうやら
坂本アナのチョイスのせいのようだ。恨んでいいのか
感謝すべきなのか……。いや、もちろん感謝である。
小林信彦も文春で、ここのところBSプレミアムの火曜
日がいいと褒めていたのは坂本アナは知っているだ
ろうか。

2016年5月1日日曜日

ピース オブ ケイク


☆☆☆★★    田口トモロヲ    2015年

アパートのお隣どうしでラブアフェアというのは誰しも憧れ
るシチュエーションではないかと愚考いたしますが、それも
多部ちゃんのようなおぼこい(方言?)娘ならなおさらです
なー。

バイト先の先輩で部屋が隣なのが綾野剛というベタな設定
がとても気恥ずかしいのだけど、リップヴァンウィンクルで
すっかり「嫌いじゃない」方に入った綾野剛がここでも良い。
そしてベタさに輪をかけて、見つめ合う瞬間に流れて来る
ギターの曲が恥ずかしさを倍加させる。本気なのかフザけ
てるのか判断に迷いながら観ていたが、音楽は大友良英
だった。えーと、ますますどっちなんだろう。
監督は田口トモロヲである。カメラの向こうで監督が照れて
いる姿まで目に浮かんでしまう。

でもおもしろかったよ。

                                                        4.13(水) Blu-ray Disc