2016年3月29日火曜日

やっと読書③


『最低。』
紗倉まな 著   KADOKAWA

紗倉まなが好きなので、週刊プレイボーイのコラムはいちお
う読んでいる。屈託のない文章で、私はけっこう好きなのだ
が、この小説が新刊コーナーに並んでいるのを見たときは
驚いた。言うまでもなく、コラムを書くことと小説を書くことと
は、まったく別のことだ。小説を書くというのは恐ろしく孤独
で根気のいる作業だと思うし(書いたことないから想像だけ
ど)、華やかな世界でもてはやされている人気AV女優が、
なんでまた小説なんか(失礼)書こうと思ったのだろうか…。
驚きは好奇心に変わり、よし、読んでやろうやないかという
気になったわけである。

…結果からいうと、なかなか良いのではないかと思う。
もちろん22歳の可愛らしい女の子が書いた小説、というバイ
アスは取り払うことはできないので、これを知らないおっさん
が書いたと思って読んだら果たしてどう思ったか、まったく同
じ評価が下せるという自信は私にはない。それは先に断わっ
ておこう。私はそんなに公平な人間ではない。公平であろう
と努力はしているが…。

閑話休題。
まず普通の文章が書けて(これも重要である)、そこに自分
の文体をなんとか出そうとしているところに好感がもてる。
もっとも特徴的なのは読点の使い方だろう。独特の間合い
で挿入される読点で、読み手のリズムをわざと崩そうとして
いるようにも見える。必ずしもすべてが効果的とも思わない
が。

そして個人的にもっとも気になったのは、たびたび出て来る
道東の地名。第一章の主人公「彩乃」は釧路出身という設定
で、何度も釧路の風景が回想される。のみならず、第二章は
AVプロダクションの社長「石村」の視点で語られるのだが、
網走で「おーろら号」に乗って流氷を見るという描写さえある
のだ。これは捨て置けない…。
プロフィールによると紗倉まなは千葉出身で、北海道に暮ら
した形跡はない。なぜ道東なのだろうか。

まあ、甘々な採点になっているのは自分でも分かっているが、
ぜひ書き続けていってほしいものである。行きがかり上、次も
読みますよ。








『たましいのふたりごと』
川上未映子×穂村弘    筑摩書房

ふたりがトークテーマにしたい単語をいくつか挙げて、それ
について語り合うという対談集。テーマはたとえば「おめか
し」「牛丼」「ホスピタリディ」「死」などなど。
どれも短く、あっさり読めるので、寝る前に読むのにちょうど
よかった。未映子さんは、やっぱエキセントリック、だよな…。
穂村さんの「ターボ!」のくだりには笑う。







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