2016年3月10日木曜日

ヘイトフル・エイト


☆☆☆★★    クエンティン・タランティーノ   2016年

ワイオミングの冬山の、これみよがしなパンから幕を開ける
168分の大長編なのだが、5章立てのほとんどは「ミニーの
服飾店」という店の中で展開される。

タランティーノの映画が基本的に「会話劇」であるというのは
おそらく衆目の一致するところだとは思うが、同じ会話劇でも
この『ヘイトフル・エイト』とデビュー作の『レザボア・ドッグス』
では、似ている所を探す方が難しいぐらい、まったく違う映画
になってきている。特にここ2作は西部劇(もしくはマカロニ・
ウエスタン)の構造を借りているのもあって、単純に見える構
造をいかに裏切るか、しかも凄まじい緊張感の高まりを一気
に爆発させるやり方で解放するかに、心血を注いでいるよう
だ。

岩井俊二のMOVIEラボ「嘘をつく」の回で千原ジュニアが言っ
たことに思わずハッとさせられたのは、同じ"映画の嘘"でも
「登場人物の特定の一人だけが知らない嘘」「登場人物の誰
もが知らないが、観客は知っている嘘」「観客にも知らされな
い嘘」など、さまざまな種類があるということで、これはタラン
ティーノの映画を観ていくうえでもおおいに役立つ観点だと思
う。タランティーノは"嘘"を扱うのが恐ろしく巧い。

で、今回はどうだったかというと、『イングロリアス・バスターズ』、
(☆☆☆☆)、『ジャンゴ 繋がれざるもの』(☆☆☆★★★)、そ
して本作と、だんだん落ちてきているように思うのである。
いちばん大きいのは、最後に緊張感が解放される時のカタル
シスの差だと思う。あんまりスッキリしないのである。
とはいえ、これはかなり高いレベルの話であって、タランティー
ノの作る映画の質に疑義を呈しているわけではない。168分を
飽きずに観られたんだから、質は高いのである。そこんとこよ
ろしく。

まだ長篇8作目なんだ。
「キル・ビル vol.2」だけ未だ観ていない。早いとこ観よっと。

                                                      2.29(月) 新宿ピカデリー


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