2015年11月5日木曜日

秋の読書②


『あしながおじさん』
J.ウェブスター 著  土屋京子 訳  光文社古典新訳文庫

帯の「おじさまは、ハゲですか?」という一行だけの引用に
ヤラれ、思わず購入。カンボジアに行く飛行機で半分読ん
だところで、見事に機内に忘れて来たので、帰国後にもう
1冊おかわり。無事、読了できた。

もとは婦人雑誌に連載された(いまの日本でいうところの
『ミセス』とかだろうか?)ということからも分かるように、
想定されている読者は中流階級以上の女性であり、別に
子どもむけの児童書ではない。かくいう私もなんとなく、そ
ういうイメージだった。

主人公は孤児院で育ち、親の顔も名前も知らないが、いつ
も元気で作文が得意な女の子、ジュディ・アボット。
さる「評議員のおじさん」の厚意で大学に通えることになる
のだが、そこで出された条件が一つ。最低でも月に一度、
おじさん宛てにキャンパスライフのあれこれや、勉強してい
ることについて手紙を書くこと。ただし、おじさんからは一切、
返事は期待しないこと。以上。
作文の得意なジュディは、飾らない文章で楽しい手紙を月
に一度といわず、二通も三通も書く。おじさんの返信はない
ので、小説はジュディの手紙でほぼすべてが構成されてい
る。そこにはルームメイトのこと、勉強のこと、大学の行事
のこと、そして密かな恋のことがつづられるのだが…。

いやー、これ以上は言えないな。
ていうかみんな、こういう話だって知ってた? 私は知りま
せんでした。










『ニューヨークより不思議』
四方田犬彦 著    河出文庫

ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を
もじって、「Stranger than New York」というわけである。

四方田氏がコロンビア大学の研究員としてニューヨークに1年
間滞在したのは1987年。その時の見聞のあれこれを、おもに
アジア系のアーティストたちとの交流に特化してエッセイに著し
たのが本書の前半部分。ほんとにこんなに色々なひとたちと
仲良くなれるのか、というほど多くの人名が親しげに出て来る。
四方田氏のことだから、まあ……。話半分で聞いたほうがいい、
というと怒られそうだけど。
寡聞にして知ってる名前はほとんど出て来ない。ナムジュン・
パイクとチェン・カイコー、河原温、あとは『ラスト・エンペラー』で
溥儀を演じたジョン・ローンぐらいなものか。

後半は、それから28年後。2015年に四方田氏はふたたびコロ
ンビア大学の招きでニューヨークに滞在する。今度はキューバ
人アーティストとの交流に多くのページが割かれる。

こんなこというと怒られそうだが、たぶん本人に会ったら鼻持ち
ならない人物だと思うのだけれど、四方田氏の文章は心地よい。
とても好きな文章だ。

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