2015年7月30日木曜日

きみはいい子


☆☆☆★★         呉美保        2015年

尾野真千子も結婚かー。
まあ色んな役をやる尾野さんだが、今作では子どもを虐待
する母親である。これがまた「そう見えてくる」からすごい。
近年でも『そして父になる』や『ニシノユキヒコの恋と冒険』の
演技は忘れがたい印象を残す。良い女優ですなぁ。

そこへ来てこの映画には高良健吾も小学校の教師役で出て
いる。これがまた今風の、邪気の無い、決して悪い奴じゃない
けどあさーい感じの人間像をうまく演じていて、きっと監督も
高良くんの演技を見て「そうそう、これこれ」と思ったに違いな
い。私は『サッド・ヴァケイション』の頃から高良くんをひいきし
ているのだが、ますますファンになった。

そしてそして、この映画には池脇千鶴も出ているのである!
ひいきと言えば高校の時からだから、私が最も長いことひい
きにしている女優といえる。ちょっとお太りになられて(そうい
う指令が出たらしいが)、おせっかいなママ友の役である。
池脇千鶴がママ友の役とはね……。思へば遠く来たもんだ、
というやつですよ。そんなに大げさなことではないか。

お気に入りの俳優を観る、というのも映画の楽しみのひとつ
かと。

                                                      7.24(金) テアトル新宿








<ツイート>
来週月曜、BSプレミアムで是枝さんの『奇跡』を放送。
これ意外と観てるひとが少ない気がするが、個人的に
は是枝さんの映画の中でも好きな3本に入る。
長澤まさみが図書館の先生をやっているのにも注目。
小学校に似つかわしくない色気が充満しています。

2015年7月28日火曜日

トゥモロー・ワールド


☆☆☆★★      アルフォンソ・キュアロン    2006年

映画はある人物の死を悼むニュースで幕を開ける。世界中が
彼の死を悼み、悲嘆に暮れる様子を写し出している。それは
人類最年少、18歳の青年の死を告げるニュースである。
つまりこの映画の「現在」とは、新しく子どもが生まれることが
なくなってから、18年が経過した世界なのである。

近未来SF、と分類される映画だろう。ふだん私はこのジャンル
にはあまり近づかない。単純に、「おもしろい!」と膝を打つ作
品が少ない気がするから、なんとなく惹かれないのだ。

この映画は、アルフォンソ・キュアロンだから観た。
……これがすごかった。いやマジで。
企み、ストーリー、技術的な完成度、どれをとっても一級品で
ある。陶然としながら、最後まで観た。特筆すべきはやはり、
終盤の戦闘シーンだろう。このワンカメ・ショーには興奮した。

ただこういうディストピアものって、観ていて良い気分になれ
ないので、いまひとつ点数が低いのである。これでスカッとす
る映画なら素晴らしいのになぁ。
『ゼロ・グラビティ』も観なくては。酔うかも、とか言ってる場合
じゃないな。

                                                     7.22(水) BSプレミアム


2015年7月26日日曜日

リアル鬼ごっこ


☆☆☆★★         園子温        2015年

はっはー。来ましたね。
忘れかけていたけど、園子温ってこういう映画作るひとだったよね!

原作小説は全国の「佐藤さん」が殺戮の標的にされるという不条理
ホラーらしいが、今作はそんなルールは無視である。この映画では
女子高生であるというそれだけで、虫ケラのように殺されるのである。
しかも、なぜ殺されねばならないのかは分からない。不条理度もス
ケールアップ。

主役は「ごめんね青春!」に続いてJKを演じるトリンドル玲奈。この
際はっきり言うけど、可愛い。彼女を筆頭に、篠田麻里子真野恵
里菜のトリプルヒロインである。ヒロインは途中で入れ替わっていく
のだが、ずっと出ているのが桜井ユキという女優で、最近の園さん
のお気に入りらしい。たしかになかなかの存在感だった。

                                                              7.16(木) 新宿ピカデリー


2015年7月24日金曜日

バケモノの子


☆☆☆★★         細田守        2015年

目下のところ、国民的アニメ作家と呼べるのはこのひとしか
いない、細田守の映画第4弾。オリジナル脚本で夏休みに
全国公開される子どもでも観られるアニメ映画を作り続けて
いる、というだけでもう半分偉業である。

今回は「師匠と弟子」をメインテーマに、渋谷の狭い路地が
バケモノの住む異界につながっている世界を舞台として、
「捨てられた子」の要素も孕みつつ、ちゃっかり可愛いコとも
仲良くなり、なぜかメルヴィルの『白鯨』も絡んでくるという、
とても盛りだくさんな内容である。こうして要素だけ並べてみ
ると好き放題やっているようだが、別に「我を通している」み
たいな印象はない。これで世間に波風立ててやろうってこと
ではないのだ。あるいは前作『おおかみこどもの雨と雪』が
若干の説教くささを持っていたのを反省したのか。でも個人
的には前作の方が好きである。

                                                     7.15(水) 新宿バルト9


2015年7月22日水曜日

天空の城ラピュタ


☆☆☆☆★       宮崎駿       1986年

とあるセミナーで鑑賞。
ちゃんとした試写室で、フィルム上映で、まともな音響環境で
ラピュタを観るのはそういえば初めてだ。世にも素晴らしい体
験だった。

最初にシータが空から降りて来る場面、翌朝パズーがトラン
ペットを吹くシーン、ポム爺さんと話すシーン、ドーラに「金貨
でシータを売ったのか」となじられるシーン、シータを塔から
救出するシーン、シータと見張り台で話すシーン、そしてそし
て、シータが玉座の間でムスカに反撃するシーン……。
すべてに震えるような感動を覚えて、何度も何度も涙ぐんで
しまった。やはり完璧な映画だと再認識。

                                                   7.11(土) イマジカ試写室


2015年7月17日金曜日

梅雨の読書②


『もういちど村上春樹にご用心』
内田樹 著       文春文庫

「解釈病」を自称するウチダ先生が、村上春樹についてブログ
や雑誌に書いた文章を集めた本。読んだことある文章もいくつ
かあったが、通して一気に読むと、発表される小説に毎回触発
されて考えが変化・深化していくさまも読み取れ、なかなかおも
しろい。

文庫化に際して『女のいない男たち』の評論が新たに収録され
ていて、オトクである。やっぱりあらためて、あの短篇集の中で
「木野」が飛びぬけているような気がいまはしている。あるいは
あの短篇をもとに長篇を構想中ってことも、ある……ないか。









『督促OL 修行日記』
榎本まみ 著      文春文庫

入社早々、クレジットカードの支払い督促の部署に配属された
うら若き著者による、日々襲い来るすさまじくタフな業務の連続
に、どのように対処したかをつづったブログが元になっているら
しい。解説ではまさかの佐藤優が激賞。

客からは罵倒され、営業目標で精神的に追い詰められ、時間が
合わなくなって彼氏とは別れ、顔には謎のブツブツが出来……。
苛酷である。

しかし榎本さんの書きぶりがわりと能天気というか明るいので、
読んでる方はおもしろく読むことができる。




2015年7月15日水曜日

ラブ&ピース


☆☆☆★        園子温       2015年

今年は園子温の映画が4本公開される「園子温Year」だ
ということは皆さんとっくにご存じだと思うが、その第二弾で
ある。4本中で唯一のオリジナル脚本はなんとSF、というか
なんというか、捨てられた亀が巨大化して喋る話です! と
でもいえばいいのか。「らしい」といえば「らしい」ストーリー
である。

「スローバラード」が使われているのだが、曲の入りといい
音量といい、このためだけにこの映画があった、と言っても
いいぐらいの厚遇ぶりで、RCファンにもきっとご納得いただ
けるかと。

                                            7.10(金) TOHOシネマズ渋谷


2015年7月13日月曜日

【LIVE!】 森山直太朗


森山直太朗コンサートツアー2015『西へ』

01. 五線譜を飛行機にして
02. 風のララバイ
03. 昔話
04. こんなにも何かを伝えたいのに
05. 陽は西から昇る

06. コンビニの趙さん
07. 若者たち
08. どのみち

09. 運命の人
10. 生きとし生ける物へ
11. 愛し君へ

12. 放っておいてくれないか
13. あの街が見える丘で
14. 星屑のセレナーデ
15. 愛のテーゼ
16. さくら

17. 小さな恋の夕間暮れ
18. どこもかしこも駐車場

19. 黄金の心

アンコール:
01. 生きてることが辛いなら
02. 明けない夜はないってことを明けない夜に考えていた
03. 太陽

                                                  6.24(水) NHKホール


森山直太朗のコンサートもずいぶん久しぶりだ。
一昨年の中標津でのコンサートに仕事で行けなかったのもある。
久しぶりに聴いてまず思ったのは、トークが異常にうまくなってい
ること(笑)。歌よりまずそっちに驚く。さだまさしじゃないが、トーク
だけのCD出しても売れるんじゃなかろうかというレベルだった。

肝心の曲のほうは、なんせ最新アルバムを聴いてないもんで知ら
ない曲がけっこうあった。でもまあ彼の曲はとっつきやすいし、知
らない曲でもなんとなく楽しめる。

ベストアクトは「小さな恋の夕間暮れ」。

2015年7月11日土曜日

中間報告


どうも。
今年も半分が過ぎてゆきました。早いものですな。

わたしは去年の夏に東京に舞い戻って来てから、
ほぼ1年が経ちました。仕事や生活の面でも勿論
大きな変化でしたが、映画ライフにおける変化も
また、激甚なものがあります。なんせ車で15分の
ところにワーナーマイカルが1館だけだった釧路か
ら、新宿だけでいったい何館あるんだか分からな
いこのメガロポリス・TOKYOに来たわけです。
まさに「その気になれば観られない映画は無い」
状態になり、「観たくても観られない」という、あの
歯痒さはなくなりました。そのかわりに、「あれも
これも観逃してしまった」という、いわば「ぼんやり
とした後悔」に、四六時中さいなまれています。

さて、中間報告。
本数は、現時点で 70本!!!
意外に観てますな。あと半年で30本観ればいいだ
けなんだ…。楽勝だ。

良かった映画。
新作では『海街diary』『バードマン』『花とアリス殺人
事件』『劇場版BiSキャノンボール2014』『さよなら歌
舞伎町』『アメリカン・スナイパー』あたり。
突出したのは無いが、強いて上半期1位を決めれば
『海街diary』か。

旧作では『マディソン郡の橋』『マイ・バック・ページ』
『フルメタル・ジャケット』『劇場版テレクラキャノンボー
ル2013』『おとなのけんか』『トゥルー・ロマンス』あたり。

新旧両方をあやうくカンパニー松尾に制覇されそうに
なったところを、是枝さんが傑作で巻き返している。
今年は良作が多いと思う。

下半期楽しみにしてるのは、

細田守『バケモノの子』
荒井晴彦『この国の空』
黒沢清『岸辺の旅』
タナダユキ『ロマンス』
山田洋次『母と暮せば』

という感じかな。
では、みなさま下半期も充実した映画ライフを!

2015年7月10日金曜日

ウォールフラワー


☆☆☆★        スティーヴン・チョボスキー     2013年

青春してる映画が観たくなって、たぶん青春してるだろうとこの
映画をチョイスしてみた。
そしたらカーステレオでデヴィッド・ボウイの"HEROES"を流しな
がら、エマ・ワトソンが車のルーフから半身を出して風を身体に
感じるという、青春そのものなシーンがあって、私は満足しました。

ハリー・ポッターって観たことないからエマ・ワトソンをちゃんと観
たのは初めてなんだけど、なかなか可愛いね。でも同じエマなら
エマ・ストーンの方が好きかも。

                                                      6.28(日) スターチャンネル


2015年7月7日火曜日

あん


☆☆☆★★       河瀬直美        2015年

あの河瀬監督の映画がヒットしてるっていうんで、好奇心
から観に行った。私の知ってる河瀬映画といえば『萌の朱
雀』『玄牝』『朱花の月』である。残念なことにほとんど何も
覚えていない。『朱花の月』の主人公がキリンジの弟に似
てたことしか覚えていない。

まあそれはいいとして、本作は広く一般受け…とも違うが、
ハートフルな…とも違うし、青春映画…ではもちろんないし、
ハンセン病だから社会派…とも言えない、ともかくジャンル
分けを無効化する力強くて繊細な映画だったと思う。
登場人物はみんな、しがないドラ焼き屋の永瀬正敏も、樹
木希林も、内田加羅も、血の通った人間として立ち上がって
来ていた。そのへんも今まで観て来た河瀬作品とは違って
いる、なんて言ったら怒られそうだが。

                                                6.27(土) 新宿武蔵野館


2015年7月5日日曜日

おとなのけんか


☆☆☆★★★      ロマン・ポランスキー     2012年

これは見事。
登場人物4人、最初から最後までマンションの1室で展開される
会話劇には、一分の隙もない。ひとりづつ「良識あるおとな」の
仮面が剝がされていくさまは爽快ですらある。
男たちが妙に結託しはじめるのがおかしい。

巨匠の「巧」を堪能できる小品です。

                                                           6.27(土) BSプレミアム


2015年7月4日土曜日

近松物語


☆☆☆★         溝口健二       1954年

キネマ旬報で蓮實重彦と青山真治が溝口映画について
対談していて、相変わらずムカムカするような対談だった
が(じゃあ読むなよってね)、まあ要するに蓮實重彦が言う
のは「いいから溝口を観ろよ」ということで、うるせーなそん
なに言うなら観てやろうじゃねーか、としっかり口車に乗っ
ているのである。

対談の中で蓮實は特にこの『近松物語』の香川京子を口
を極めて絶賛するのである。うーん。まあもちろん悪くは
ないんだけど…。そんなに凄いかね。

                                                  6.21(日) BSプレミアム


2015年7月3日金曜日

探偵物語


☆☆☆         根岸吉太郎      1983年

「あまちゃん」の再放送を観ていたら(また観てます)、
架空の映画である『潮騒のメモリー』のストーリー説明
をしている吉田副駅長が「そんなもんですよ、80年代
のアイドル映画なんて」と言ってたが、このセリフはお
そらくこの『探偵物語』あたりを念頭に置いたセリフだ
ろう。良くいえばほのぼの、悪くいえばちゃんちゃらお
かしい。

主題歌「すこしだけ やさしく」は大瀧詠一の作品。
浮遊感のある覚えにくいメロディが光る名曲である。

                                               6.20(土) BSプレミアム