2015年6月20日土曜日

梅雨の読書


『火花』
又吉直樹 著      文藝春秋

やはり芥川賞候補になりましたね。
私は受賞しても驚かない。これより内容も文章もマズい歴代
受賞作はいくらもある。ただ芥川賞はそのとき一緒に候補に
なった作品のレベルによっておおいに左右されるので、取る
かどうかは何とも言えない。話題づくりとかそういったことは、
銓衡委員はあまり考えないと思う。そんな素直なひとたちじゃ
ない。










『すべての戦争は自衛意識から始まる』
―「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい
森達也 著      ダイヤモンド社

言論弾圧の効果は、おもにテレビ方面でバッチリ表れてきて
いて、テレビを見ていてもなんだか正論をいうひとがめっきり
減ってしまった。「減ってしまった」というのはもちろん「テレビ
に出してもらえなくなった」ということだ。要するに、制作側の
過剰な忖度であり、自粛だ。批判されるのを極端に嫌う政治
家と、なぜかはさっぱり分からないが、それを半数以上の国
民が支持している現状。今の内閣になって、何かひとつでも
良いことがあったというなら教えて欲しいぐらいだ。

おっと、森さんの本について何も触れていない。
森さんは正論をいうひとである。正確にいえば「どう考えても
僕にはこれが正論としか思えない」ということをそのまま書い
てきたひとだ。ここ数年、明らかに「正論」と「現状」との乖離
が目に見えて大きくなってきていることに、森さんの苛立ちと
絶望が深まってきているのは、読んでいればわかる。
はっきり言って、森さんは同じことばかり書いている。「オウム
以降、日本では集団化の意識が高まった」「集団は異物を排
除し仮想敵を見付けようとする」「危機を煽る指導者が支持さ
れる」「自衛意識を刺激する言説が支持される」。ほとんどこ
ればっかりだ。それでも状況は、悪い方へ悪い方へ転がって
いく。だから森さんは「何度でもいうが」と前置きしながら、何
度も何度も同じことを書かなくてはならない。

森さんはいま佐村河内の映画を撮影中らしい。楽しみである。

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