2015年3月26日木曜日

冬の読書④


『「AV女優」の社会学』
鈴木涼美 著      青土社

近頃とみに鈴木涼美さんの文章や対談をいろんな媒体
で目にするが、そして目にすると必ず読んでいるが、ま
すます好きになっている。軽やかな文体と、「きらびやか
な夜の世界」に没入していた自分との距離の取り方が、
絶妙に気持ちいいから。そして"ラスボス"としての「お母
さん」の存在。この、時々登場しては涼美さんに痛烈かつ
無慈悲な言葉を浴びせる「お母さん」の破壊力といったら
ない。

さて、そんな鈴木女史の原点が本書ということでいいのだ
ろう。けっこう大著である。慶応での卒論のテーマを東大
院の修論でブラッシュアップし、さらに本として出すときに
また加筆・修正したらしい。
サブタイトルにあるように、本書の大きなテーマは「AV女優
はなぜ自らを饒舌に語るのか」である。AV女優はとかくい
ろんな場面で(AVで、グラビア雑誌で、インタビューで)「な
ぜこういう仕事をしているのか」「この仕事をする前はどうい
うコだったのか」などの質問を投げかけられ、答えなくては
ならない。それも「うまく」答えなくてはならない。
それはAV女優という職業に特有のタスクといっていい。普
通に会社員をしていて、その手を質問を月に何度もされる
ことはない(ないですよね?)。

テーマを解明する前にまず、「女のコ」が「AV女優」になるま
でにどういうプロセスがあり、どういう会社がどういう役割を
果たしているのか、本書の前半ではとても分かりやすく解説
されている。プロダクション、メーカー、制作会社の連携でこ
の業界は成り立っているそうだ。だいたいAV女優に「単体
女優」と「企画女優」の二つがあって、ギャラも働き方も全然
違うなんてこと、私は知らなかった。

そこから本論に入るわけだが、まああとは実際に読んでくだ
さい。長くなりすぎました。










『回転木馬のデッド・ヒート』
村上春樹 著      講談社文庫

久しぶりに読み返してみた。毎晩ひとつ、という感じで読んだ
のだけど、楽しかったー。至福。
「今は亡き王女のための」と「野球場」はもともと好きだったし、
今回もやはり良いと思った。逆に「雨やどり」「ハンティングナ
イフ」はすっかり忘れていたが、これもなかなか乙ですな。

初めてリアリズムで長篇を書く(=『ノルウェイの森』のこと)た
めの習作として本作を書いたというのは「村上主義者」には
有名な話だが、これが全部作り話だと思うと寒気がするほど。
キレキレである。


0 件のコメント:

コメントを投稿