2015年2月27日金曜日

Mr.Children REFLECTION


☆☆☆★★            稲垣哲朗        2015年

意外に良かった。
ただしこれは「ライブ映像」であって「映画」ではない。ドキュ
メンタリー的な要素を期待してはいけない。単に、ファンクラ
ブ限定でおこなったレアなライブを映像化しただけである。

でも最後までワクワクした2時間だったのは確かだ。
新曲ばかりのライブというのは、バンドもやりにくいだろうし、
客だってどう聴いていいか戸惑うだろう。いくらファンだって、
ほんとは新曲だらけのライブはあまり嬉しくないと思う。
桜井さんはそのへんのファン心理はよく分かっていて、でも
新曲ばかりのライブをやりたい。そこを巧いこと言って客を
ノせるのだが、桜井さんのMCのうまいこと。「持って行き方」
のうまさ、そして垣間見える誠実さに、思わず好感を持たず
にはいられない。まことに罪なひとである。

今回バンドメンバーに小林武史がいない。これは、大いに
示唆を含んでいるのか、そうでないのか、今後を注視して
いきたい。鍵盤はSUNNYがサポートで入っていた。
そして「Split the Difference」のときよりも、バンドの状態は
格段に良いように見受けられる。キャッチーな新曲がそれを
物語っている。繰り返し聴いたときにどうなるか、それはCD
が出てから考えればよかろう。

                                         2.17(火) TOHOシネマズ 渋谷


2015年2月26日木曜日

リトル・フォレスト 冬・春


☆☆☆★        森淳一       2015年

後篇は前篇よりもちっと人間関係重視かと思いきや、
やはりほぼ原作通り。全篇とおして、あくまで「食」と
「自然」を中心に据えた、かなりあっさりした仕上がり
の映画となった。これはこれで良いと思う。

つきたての餅に納豆を絡めて食べるのは美味そう…。
コンビニのおにぎり買うときは、必ず納豆巻きを選ぶ
(「おにぎり」じゃないけど)私としては、あれはぜひとも
食ってみたい。

最後の「5年後」のシーンはすべて映画版の付け足し
であり、原作には無い。でもこればっかりは、付け足さ
ないと「……は?」ということになってしまうだろうから、
しょうがない。むしろ自然だろう。原作はその「不自然」
な終わり方も含めて奇妙な味わいがあったが、映画で
はそうもいかない。

                                          2.16(月) 新宿ピカデリー


2015年2月24日火曜日

【LIVE!】 KAN


弾き語りばったり#19
~今ここでエンジンさえ掛かれば~

KAN…って誰だっけと思ったそこのあなた!
「愛は勝つ」のKANですといえば「ああ~」なのかもしれな
いが、あんな曲はKANの奥深い世界のほんの一端である。

かくいう私も数年前までは「愛は勝つ」しか知らず、Mステ
で平井堅が上記のようなことを力説していても、「ふーん」
と冷たく聞き流していたものだ。
KANを熱心に聴き出したのは言うまでもなく、桜井さんが
Bank Bandで「プロポーズ」や「何の変哲もないLove Song」
を歌ったのにいたく感銘を受けたからだ。この2曲はKANの
ストレートな、ひねりの少ないラブソングを代表する曲とい
えるだろう。
ビートルズとビリー・ジョエルをこよなく愛するだけあって、
KANの曲は、ときに凝りに凝りまくって、どこに連れて行か
れるのか分からないような展開をすることもしばしばである。
「まゆみ」「東京ライフ」など、名曲は枚挙に暇がない。

その人柄は、かなり軽薄である。それも「知性に裏付けされ
た軽薄さ」で、私がいちばん好きなタイプである。
よく喋る、おもしろい、歌も良い。これでライブに行かない手
はないだろう。
弾き語りツアー続行中なのでセットリストは載せないことに
した。

                                              2.14(土) 東京グローブ座


2015年2月22日日曜日

さらば、愛の言葉よ


☆☆☆      ジャン=リュック・ゴダール     2015年

いちおう便宜上点数を付けておりますが、もう採点不能です。
3Dというオモチャを手にしたゴダールが、まるで子どものように
活き活きと…みたいな評をよく見かけるが、そ、そうなのかね。

3D映画を観るのは初めてなので比較対象がないけれど、松江
哲明氏によると3Dにおける「禁じ手」をいくつもやっているらし
いし、右と左で違う映像を見せたり(当然どちらもよく見えない)、
しばしば高感度モードみたいなザラッザラの画がインサートされ
るし、まあ(いつも通り)わけが分からない。

とても独りでは観に行く気がしないため、友人とふたり、鑑賞後
に殺伐とするだろう精神を銀座ライオンのヱビスビールで慰撫
する算段までして、一種のイベントとして観に行った。
なぜそこまでして自らを鼓舞し、2200円払って茫然とスクリーンを
見詰めなくてはならないのか、もう自分でも分からなくなってきて
いるけれど、それでもゴダールの新作を「観ていない」というのは
どうも据わりが悪いのである。これで今夜から落ち着いて寝られ
ます、というのはおおげさだが、まあだいたいそんなところである。

                                                       2.15(日) 銀座シネスイッチ



2015年2月18日水曜日

劇場版 BiSキャノンボール2014


☆☆☆★★★      カンパニー松尾     2015年

これは迷いどころなのだが、結局この点数にした。
やっぱりおもしろかったから。
見方によっては最低の映画である。「テレクラキャノンボール」
より酷い。それも分かる。でも、たとえばこの映画の上映中に
映写機が故障して止まったとしたら、僕は続きが観たくて観たく
て狂いそうになっただろうと思う。

どういう映画なのか説明するのは無駄だろう。
「テレクラキャノンボール」と同じルールで、AV監督6人が、6人
組アイドルユニットBiSのメンバーそれぞれに「密着ドキュメント」
の撮影と称して密着するのである。さてどうなるか…。
「テレクラキャノンボール」を観た物好きなひとのなかで、さらに
物好きなひとは観るといいと思う。

                                                          2.12(木) テアトル新宿



2015年2月16日月曜日

網走番外地


☆☆☆★★        石井輝男       1965年

以前から観たいと思ってはいたのだが、ようやく観ることが
叶ったのが健さんの追悼特集というのは、なんとも寂しい。

若くて喧嘩っぱやくて、だけど義理人情に厚い健さんが見ら
れる。随所に歌が挿入されるのが新しい。つい笑ってしまう。

故あって、網走という街には三度行ったことがあり、通り過ぎ
ただけというのも併せればもっと行っている。釧路からだと、
藻琴山という山を越えていくわけだけれど、真冬は結構シビ
れる山道となっている。
真冬の網走に何しに行くのかというと、流氷を見に行くので
ある。見に行ったのに見られなかったこともあり(風が吹くと
すぐ沖の方に流れて行ってしまう)、その時は網走刑務所に
行くことになる。他に行くところなんて無いからね。だから、
網走刑務所にも二度行った。
まあそれだけの話。

                                                     2.11(水) BSプレミアム




2015年2月14日土曜日

ミリオンダラー・ベイビー


☆☆☆★★      クリント・イーストウッド     2005年

実を言うと観ていなかった。これでようやく『ミスティック・リバー』
以降の「重厚な」イーストウッド作品をすべて観たと胸を張って
言える。この間のイーストウッドの打率の高さたるや、映画史上
に類が無いと思う。『アメリカン・スナイパー』が早く観たい。うず
うず。

今作を観たひとは分かると思うけど、話も暗けりゃ照明も暗い!
どちらも問題だが、話が暗いのはある程度慣れてるからいいや。
問題はこの照明、かなり異様だよね。もはや暗い部屋の場面し
か記憶に無いもん。顔も半分しか当てない。徹底してるよね。

画像は折れた鼻を手で摑んで治す直前のイーストウッド。いて
てて! 思い出しただけで痛い。

                                                                       2.8(日) DVD


2015年2月10日火曜日

劇場版 テレクラキャノンボール2013


☆☆☆★★★       カンパニー松尾     2014年

いやー評判通り、スゴかった。ほんっとにおもしろい。
132分がこんなに短いと思ったのは久しぶりのことだ。
だいぶ話題になったのでご存じの向きもあろうが、本当は600分
ある本編を、劇場公開用に短く短く編集したのがこの「劇場版」
である。さすがに10時間のDVDを観るのはためらわれ、でも観
たいなー、うーむ、とか思ってるときに、Amazonでこの「劇場版」
が安かったので、ついクリックしてしまいました…。

どういう内容なのか説明し始めると長いし、いくぶん公序良俗に
反する内容でもあるので、詳しくは書きませんが、要は6人のAV
監督が、東京から仙台経由で札幌まで旅をします。ただし、単な
る旅行ではなく、レースをしながらの旅。どういうレースかというと、
行く先々で女の子を引っかけてはハメ撮りをして、女の子をゲット
する速さやハメ撮りの内容に応じた得点を競うわけです(すみま
せん)。書いているそばからばかばかしいですが、これが深いん
です。事実は小説よりも奇なりとはよくいいますが、やっぱりいく
ら精巧なフィクションであっても、「ほんとにあったこと」の圧倒的
な強度には勝てないことも時にあります。

誰にもオススメはしませんので、物好きなひとは勝手に観ておも
しろがればいいと思います。

                                                             2.3(火) Blu-ray Disc


2015年2月9日月曜日

Laundry ランドリー


☆☆☆         森淳一       2002年

『リトル・フォレスト』の後篇がもうすぐ公開だからBSでやっ
たのだろうか。そういうのはとても良いと思う。予習ができ
て便利だ。

映画は特にこれといって書くこともない凡作である。でも
窪塚くんは巧いと思う。

私が高校生の頃、窪塚洋介ブームがあり、明らかに旋風
が吹いていた。私ももちろん窪塚くんの演技が大好きで、
「I.W.G.P」や『GO』に熱狂したし、そのまま若気の至りで
「ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ」や「ロング・ラブレ
ター ~漂流教室~」といった愚にもつかないドラマも一生
懸命観てしまったものである。懐かしいな。

この映画もその頃公開されて、わりと流行ってた覚えがあ
る。でも私はなぜか観なかった。どうせ高校の頃に観ても、
私は何も思わなかっただろう。

                                                      2.2(月) BSプレミアム


2015年2月7日土曜日

冬の読書


東京は冬が寒くないからいいわ。


『一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教
内田樹 中田考    集英社新書

ずっと前に買ってあったけど、人質事件が起きてから読み始め
た。より正確には、人質事件が起き、中田考が「イスラム国」と
の交渉役になってもいいという表明をした記者会見があり、そ
れを文字起こししたものをネット上で読んで、その怪しげな風貌
とは裏腹に理知的な内容に驚いて、慌てて本棚から引っ張り出
して読み始めた。ということになる。

ブログではおなじみの内田樹と、イスラム学の第一人者である
中田考との対談本である。あくまでイスラムに関して素人のウチ
ダ先生が、中田考にいろいろと訊く、という対談スタイルなので、
何も知らない私のような読者にも分かり易い。
イスラームとは本来寛容な「施し」「分け与える」宗教なのだとい
うのはぼんやり分かった。イスラームと領域国民国家(国土があ
り、中央集権的な政府があって、という国のかたち)は水と油の
ようになじまない、ということも。そして原理主義=過激では必ず
しもないことも。それがなぜときにああいう暴力的な集団を生ん
でしまうのか、そのへんはまだまだ勉強が必要なようである。

それにしても安倍晋三は言論弾圧が好きだね。批判されるのが
よっぽど嫌なんだろう。政治家なんて批判されるのが商売なん
じゃないのか。
私は昨年秋からの安倍晋三の行動について、正面から批判を
続けている報道ステーションを応援している。内藤正典、ひるま
ずに発言を続けて欲しい。というか、報道ステーションしか批判
をしていないテレビの現状の方がどうかしていると思うが。










『美女と野球』
リリー・フランキー 著   河出文庫

えー。うってかわって、バカエッセイです。
やっぱり文章って結局のところ人柄が出るわけですよ。それも
「おおいに」出るんです。もちろんバカエッセイであってもそれは
同じこと。リリーさん、好きだわぁ。
こうなったら『東京タワー』も読んでみるか。

2015年2月5日木曜日

ショコラ


☆☆☆★       ラッセ・ハルストレム     2001年

主演がジュリエット・ビノシュだったので観てみた。

放浪しながら、色んな街でチョコレートの店をやる母娘の話。
日曜に教会に行かないジュリエット・ビノシュは、敬虔で偏狭な
村長に目をつけられ、追い出されそうになるが、持ち前の勝気
な性格で村長相手に一歩も退かず、逆に店は繁盛し始める。
そんな時、村に筋金入りの放浪者であるジョニー・デップさんの
一団がやってきて、川べりで暮し始める。よそ者どうし、少しず
つ心を通わせ合うふたりだったが…。
まあそんな話である。

『イングリッシュ・ペイシェント』からは4年。少しおばさん化は進
んだものの、ジュリエットはやはりキュート。
あとジョニー・デップさんの映画は初めて観たと思うが、なるほ
どカッコいいひとだね。色気があるわ。しかも子どもに「海賊な
の?」と訊かれていて、笑った。

                                                          1.31(土) BSプレミアム








<2/6追記>
今朝あさイチの石田ゆり子があまりに可愛いんで、つい朝飯を
食う手を止めて見入ってしまったのだけど、そしてそれで気付い
たのけど、石田ゆり子とジュリエット・ビノシュって似てない?
特にあの優しさと妖艶さを含んで潤んだ目元。
つくづく好きな顔なんだな俺よ、と独りしずかに苦笑した次第。

2015年2月3日火曜日

さよなら歌舞伎町


☆☆☆★★★       廣木隆一      2015年

よく知らないでいうのだけど、こういうのを「グランド・ホテル方式」
というのかな。ある夜、ある場所(たとえばホテル)に偶然居合わ
せた複数のひとたちを描く映画。そうするとこの映画は、その方
式の歌舞伎町ラブホテルバージョンということになる。

ポスターとか見ると染谷くんと前田あっちゃんが主役みたいな感
じだが、実際はそうでもない。いくつかの挿話の中のひとつ、とい
う感じ。どの挿話もよくできていて、完成度が高い。観終わってす
ぐは別にそうでもなかったのだが、振り返ってアラを探してもあん
まり見付からない。傷がない。その辺りを鑑みて、この点数とした。
でも大森南朋のシーンだけは浮いていたかな。

廣木監督と荒井脚本のコンビは他に『ヴァイブレータ』『やわらか
い生活』がある。しかし荒井さんは精力的ですな。『共喰い』『海を
感じる時』など、最近話題作が多い。
廣木監督も、2月にもうひとつ『娚の一生』が公開される。榮倉奈々
とトヨエツ。まあ『きいろいゾウ』よりはおもしろそうだ。

                                                         1.29(木) テアトル新宿