2014年9月29日月曜日

八日目の蟬


☆☆☆★★★        成島出       2011年


水準の高い映画を観られて満足。
世間から孤絶したコミュニティや、ロードムービー的な要素に、
ちょっと塩田明彦の『カナリア』を想起した。
けっこう長かったが、登場人物たちの言動と動機はじゅうぶん
説得的であり、ずっと引きつけられっぱなしだった。やっぱそこ
が大事だね。
特に女優陣の演技には目を瞠るものがある。素晴らしい。小池
栄子はうまいなー。

                                                                  9.15(月) DVD


2014年9月24日水曜日

読んだ本③


『流されゆく日々1 1975.10~1976.6
五木寛之 著       双葉文庫

私は五木寛之の読者というわけではないが、1975年から日刊ゲン
ダイに「現在も」連載を続けていると聞いてその驚異的な長さに興味
が湧いた。よくそんなに書くことがあるな。私が最も興味のある70年
代カルチャーにまつわる単語が目白押しである。
寝る前にちびちび読んでいたが、けっこうおもしろかった。









『やりにげ』
みうらじゅん 著      新潮文庫

「エロ噺家」を目指していたみうら先生による「エロ小噺集」、とでもいえ
ばいいのか。自分の経験と他人のエロ話を織り交ぜているらしいが、
たいへんおもしろい。電車の中で読むと吹き出してしまうので危険。
イラストも載ってるから覗かれると変な本読んでると思われるし。


2014年9月21日日曜日

舞妓はレディ


☆☆☆★★         周防正行        2014年

楽しい映画だった。
舞妓さんに憧れ、独りで京都にやってきたものの、鹿児島弁と
青森弁のミックスでひどい訛りのある少女を、言語学者が矯正
して一人前の舞妓に仕立てる、というストーリー展開に、上映中
「そういうことか!」と思わず呟きそうになった。
そう。「舞妓はレディ」とは、「マイ・フェア・レディ」の「もじり」とい
うわけである。…ってアレ、知らなかったの、おれだけ?

「舞妓」も一つの大きな柱には違いないが、「訛り」がもうひとつ
の大きなテーマとなっていて、方言好きの私としては望むところ
である。途中、「深草少将の百夜通い」の話が出て来るが、去年
『にごりえ』で予習済みなので、これにも動じることはない。ブロ
グもたまには役に立つものである。
本家『マイ・フェア・レディ』でヒギンズ教授が、イライザの訛りを
矯正するための特訓フレーズ

The rain in Spain stays mainly in the plain.
(スペインの雨はおもに平地に降る)

って英語の授業でやりましたよね。いや、私の高校ではやったん
ですが、これから観る方はこのへんも覚えてると少し余計に楽し
めるかもしれない。

主演は上白石萌音(かみしらいし・もね)ちゃん。98年生まれだと。
ついこないだやん! と言いたくなりますね。妹の萌歌(もか)ちゃん
もタレント活動をしているそうな。よく声が出てるし、うまい。ミュージ
カルだからそりゃそうか。

                                                              9.13(土) 新宿ピカデリー


2014年9月19日金曜日

童貞。をプロデュース


☆☆☆★★          松江哲明        2007年

ようやく観ることができた。
大学のときに友達に誘われたけど、まだ松江さんも知らなかったし
なんかよく分からなかったので観に行かなかったのだ。
それを悔やんだ時はすでに遅い。釧路に赴任してしまってからは、
年に1週間だけ、それも池袋でしか上映されない映画を観るのは、
ほぼ不可能なことであった。

この映画、1と2に分かれていて、それぞれに違う童貞を松江さんが
「プロデュース」するという趣向。松江さんの指導はあくまで熱く、被
写体がカメラを構えているカメラマンからビンタされるドキュメンタリー
を私は他に知らない。そしてカンパニー松尾はすごく優しい…。
おもしろかった。でも1のほうがだいぶ良かったことを付記しておこう。
梅澤くんは強烈すぎた。やってることはみうらじゅんのエロスクラップ
に近いのだが、なんだか見てはいけないものを見ている気がした。
拾って来るっていうのがまたね…。

                                                                 9.11(木) 池袋シネマ・ロサ




2014年9月14日日曜日

リトル・フォレスト 夏・秋


☆☆☆★         森淳一         2014年

小森(=リトル・フォレスト)に住み、米も野菜も自分で作る「自
給自足女子」が主人公。いくら「一度都会に住んだ」という設定
があるにしても、橋本愛はちょっとシティガール過ぎるんじゃな
いか、と危惧していたわけで、やはりもう一つなじんでいない感
じがしてしまう。悪いけど。

もっと「人間関係」を前面に出して来ないと映画が成立しないの
ではと予想していたが、意外にもかなり原作通り、食べ物のエピ
ソードを並べただけという構成。逆に勇気があるぜと感心した。
そのへんは「冬・春」篇で展開してくるようだ。終わり方も次あり
きだったし。まあいちおう次も観ようかな。


それにしても橋本愛。今週の週刊新潮によれば、新橋ロマン劇
場の閉館を心から惜しんでラストの3本を観に行ったあげく、ロマ
ンポルノとピンク映画を観まくってて、好きな女優さんは芹明香
と宮下順子とどっかに書いたという記事には驚愕したが、この娘
は日本映画界の至宝になるかもしれないね。ガリレオなら「実に
素晴らしい」と言う所だ。女優たるもの、そうこなくちゃいけない。
きっと信用する映画評論家がいて、「日本映画史」の文脈で語ら
れる名作たちをどうしても観たくなったのだろう、と想像する。
私も大学生のとき、モルモット吉田さんのブログに登場する作品
が名画座でかかるたびに、一生懸命観たものである。ただ私は
その時もう18歳ではなかったけれど……。橋本愛はまだ18歳!
うーん。実に素晴らしい、のかホントに?
愛ちゃんは黒沢清の『ドレミファ娘の血は騒ぐ』はもう観たかな。
洞口依子が可愛いピンク映画の名作。

                                                     9.7(日) 渋谷HUMAXシネマ


2014年9月13日土曜日

ガントレット


☆☆☆        クリント・イーストウッド      1977年


監督・主演作のわりと最初のほう。
アウトローの警官役ということで、当然『ダーティ・ハリー』と比べられ
るのは織り込み済みだろう。完成度はあちらの方がだいぶ上だが。
「ある事件の証人をラスベガスからフェニックスまで護送する」という
何でもないはずの任務をサクッと遂行しようとするイーストウッドだが、
実はその証人がかなり「アブない」情報を持っていて、マフィアからも
警察からもさんざん追われまくり、彼らは何度も執拗に殺しにくる。
でもなんかいまひとつお粗末というか、緊迫感に欠けるのは気のせ
いか。最大の見せ場はラストの凄まじい銃撃シーン。ここを観るため
だけでも、この映画を観た意味はあった。

当時イーストウッドさんの愛人だった(らしい)ソンドラ・ロックをヒロイン
に起用するという豪快な公私混同をかましているのだが、アクションも
出来るし意外と悪くない。

                                                                9.5(金) BSプレミアム


2014年9月11日木曜日

【LIVE!】 相対性理論


回折Ⅰ

01. たまたまニュータウン
02. おとぎばなし(新曲)
03. キッズ・ノーリターン

04. (恋は)百年戦争
05. BATACO
06. 地獄先生
07. ジョンQ

08. Q/P
09. 人工衛星
10. YOU&IDOL
11. 気になるあの娘

12. 救心
13. 上海an
14. スマトラ警備隊
15. クリームソーダ(新曲)

アンコール
16. ロンリープラネット
17. LOVEずっきゅん

                               9/5(金) TOKYO DOME CITY HALL


『アワーミュージック』の時観て以来だから、4年半ぶりとなる。
釧路に居た間まるまる、ということか。
変化としては、やくしまるえつこ、心なしかボーカルが強くなっ
て安定感が増していた。そしてバンドにも"若干の"サービス
精神が感じられるようになった。各自のソロコーナーなんて昔
あったっけ?

半分は『TOWN AGE』から、あとの半分は昔のアルバムからま
んべんなく、というなかなか嬉しいセットリスト。昔の曲は「人工
衛星」「気になるあの娘」「(恋は)百年戦争」など、ドンピシャで
私の好きな曲をやってくれて喜びもひとしおである。久しぶりの
「LOVEずっきゅん」にも感激。あと登場曲がなぜか「千のナイフ」
だった。

演奏が凝ってたのは「キッズ・ノーリターン」。非常にカッコいい。
演奏後、例によってえつこ嬢はゆっくりとペットボトルの水を飲
んで、一息ついて、おもむろにマイクに近づき、

 「恋の死角にまわりこむ、相対性理論、回、折、1」

言い終わらないぐらいにカウントが始まっており、突入したのは
「(恋は)百年戦争」! これには感動した。バンドを知らないひと
にはまったく伝わらないと思いますけど、一応書きました。

ベストアクトは「キッズ・ノーリターン」。
「地獄先生」「人工衛星」もあらためて良い曲だと思った。


2014年9月8日月曜日

『こころ』 100年の秘密


テレビ番組をディレクターで観ることはほとんど無いが、

長嶋甲兵

というひとがいる。テレコムスタッフのディレクターだが、
実は私はこのひとのファンである。

最初にその存在を意識したのは、

「“虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」

という番組で、漱石の『虞美人草』の読書会を開いて、
文藝評論家やタレントや素人を集めて、分け隔てなく
うまく意見を引き出しながら、『虞美人草』に秘められた
謎の核心に迫る、という内容。そこで並み居る文藝評
論家やら小説家やらを相手に、涼しげに、しかしあくま
で理知的に司会進行をこなす楽しそうなディレクター氏
の様子に驚愕し、魅了されたわけである。

それからは「長嶋甲兵」の名前の付いた番組は見逃さな
いようにしてきたが、なんせテレビは映画と違って監督の
名前がなかなか表に出て来ないので、たぶんいくつか見
逃したと思う。昔は「名曲探偵アマデウス」とか「歴史秘話
ヒストリア」もいくつか作っていたらしい。私が観た中では
「明日へ -支えあおう-」も良かったし、「太宰治 短編
小説集」もこのひとがプロデューサーなのだ。

このひとは音楽も得意で、特に井上陽水と懇意らしく、「空
想ハイウェイ」シリーズとか、こないだもBSプレミアムで

「ドキュメント“氷の世界40年”
 ~日本初ミリオンセラーアルバムの衝撃とその時代~」

をやってちょっと話題になったし、

「世紀を刻んだ歌~花はどこへいった」

は色んな賞を獲った名作として、時々プレミアムアーカイブ
スで再放送されている。ちなみに「世紀を刻んだ歌Ⅱ」の
「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」もやっている。

このひとは詩もイケるらしく、

「詩のボクシング」

も数々の賞を受賞しているので私も再放送を待っているの
だが、まだ観ることができていない。


えー、なぜこんな話をしているかというと、今週水曜の番組に、
ものすごく「長嶋甲兵のにおい」のするものがあるからで、

漱石「こころ」100年の秘密
9月10日(水) 午後10時00分

という番組である。漱石の読書会というのは「“虞美人草”殺
人事件」と同じだし、小森陽一とか高橋源一郎という人選もそ
れっぽい。違ったらすいません。でも長嶋さんの番組だったら
きっと面白いと思うので、興味のある方はぜひ。
これが言いたかっただけなのである。

2014年9月6日土曜日

TOKYO TRIBE


☆☆☆★         園子温       2014年


このところ量産体制に入っているように見える園子温だが、1作
ごとに注ぐ熱量は衰えてはいないようだ。
「世界初のバトル・ラップ・ミュージカル」と銘打たれたこの映画、
観る前はとんでもない愚作だったらどうしようと密かに心配して
いた。でも蓋を開けてみれば、いつも通りバカバカしくも疾走感
に満ち満ちた、「園映画」と呼ぶより他ないものであった。

話の中身はほぼ無いに等しい。しかし物語の説明・進行の役割
を担いながら全篇を彩る「ラップ・ミュージック」がなかなかカッコ
よく、職業ラッパー達のクールさは分かるにしても、染谷くんが!
何でもこなすあの死んだ眼の青年のラップが、これなかなか乙
であった。
恒例になっている無名女優の起用も、今回は清野菜名さんとい
うらしいが、吉瀬美智子を若くした感じで可愛らしい。パンチラも
厭わずアクションに勤しんでらっしゃり、往年の満島ひかりを思い
出さずにはいられない。そしてまた『愛のむきだし』が観たくなって
くるのであった。なむなむ。

それにしても竹内力のセリフの聞き取れなさは異常だった。8割
以上何言ってるか分からないってヤバいんじゃないか。音声さん
のせいなのか、わざとなのか…。

                                                    8.31(日) 池袋シネマサンシャイン


2014年9月5日金曜日

愛のメモリー


☆☆☆★      ブライアン・デ・パルマ      1978年


「愛のメモリー」といっても松崎しげるとは関係ない。
原題は"OBSESSION"、つまり強迫観念ですか。
身代金目的で誘拐され、殺されてしまった妻と瓜二つの女性に
出会ってしまう男の話。

何とも気分の悪い話だね。
しかし最後まで緊張感を持って観ることができた。そこには手腕
を感じる。『キャリー』も観てみるとするか。

                                                                 8.23(土) BSプレミアム


2014年9月3日水曜日

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち


☆☆☆★★        ガス・ヴァン・サント     1998年


上質な人間ドラマという趣きで、「喧嘩っぱやい街のチンピラが実は
数学の天才」という突飛な設定も、うまく消化しており違和感はさほど
無い。マット・デイモン、ベン・アフレック、この秀逸な脚本を手がけた
若き二人の演技もナチュラルだし、先ごろ自死したロビン・ウィリアム
ズはさすがの名演。

観るまで題名の意味が全然分からなかったのだが、「ウィル・ハンティ
ング」というのが主人公の名前なのか。ウィルもハンティングも助動詞
と動詞にあるから紛らわしい。だから「旅立ち」と付けたのかな。それに
してもね。


全然関係ないけど、こないだ久しぶりに池袋のジュンク堂に行った。
各フロアの丁寧な陳列と圧倒的な物量を眺めているうちに、あれも読み
たいこれも読みたい、もう本だけを読んで1週間過ごしたいという、けっ
こう切実だが実現可能な欲望が頭をもたげてくる。夏休みは取らなかっ
たので、冬あたりに休みをとって、ほんとにそうしたいな。
「その1週間で読む本」を妄想するだけで楽しい。アーヴィングの新しい
やつ、ジェイン・オースティンの未読のやつ、漱石は『道草』だな、『族
長の秋』とか『白鯨』とか『花のノートルダム』とか『荒涼館』とか『挽歌』
とか『火山の下』とか『ピンチランナー調書』とか、長年わが本棚に鎮座
しているだけのやつらも読んであげたいし、山田宏一も四方田犬彦も
高島俊男も高峰秀子もミラン・クンデラもカズオ・イシグロもリルケもヘッ
セもまだまだあるし、たまには吉田修一も読んでやってもいいし、ドスト
エフスキー『未成年』もあるし、うーん、結局1週間じゃ全然足りんな。

                                                                 8.23(土) BSプレミアム