2014年4月30日水曜日

忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー ~感度サイコー!!!~


☆☆☆★               鈴木剛             2011年

忌野清志郎が生前、三度にわたって大阪城ホールで開催した
その名も「ナニワ・サリバン・ショー」。そのおいしいとこ取りをし
た映像と、彼の死後に撮り下ろした清志郎の盟友たち(矢野顕
子、間寛平、トータス松本、そしてもちろん仲井戸麗市など)に
よるミニコントのような映像で構成された変わった映画である。

誰がゲストに来ても、清志郎よりパワフルな歌を歌えるひとは
居ないわけだが、なかなか良い共演だったのは、斉藤和義か。
「空がまた暗くなる」という選曲が良かっただけかね。

最後、ゲスト全員と「雨あがりの夜空に」を歌い終わり、祭りの
あとのような静かなステージで、チャボとふたり「夜の散歩をし
ないかね」を歌う姿には思わずグッとくるものがある。

NHK総合で5/2(金)、「ラストデイズ」とかいう番組があるらしい。
どういう番組かよく知らないが、清志郎なら観なければなるまい。

                                                                   4.20(日) HBC


2014年4月28日月曜日

ちゃんと伝える


☆☆☆          園子温        2009年

園子温流の「難病もの」。
なぜ園子温が「難病もの」を撮らなくてはならないのか、
そのへんは今でもよく飲み込めていないけれど、巷間
はびこる「泣ける」と銘打たれたヌルい映画とは一線を
画す作りであり、後半になるほどなかなかおもしろい。
ただ、淡々と進む前半、退屈すぎやしないか…。
そして、伊藤歩は良い女になったなぁ。いつまでも『スワ
ロウテイル』を引き合いに出されて伊藤歩も迷惑だろう
けど、あの頃はこんな女優に成長するとは思わなかった。

主演はEXILEのAKIRAとかいう奴らしい。たしかに出勤
前にジョギングしてそうな感じはしたが、とりあえず下手。
まあ役者じゃないから仕方ないけど、こないだ爆笑問題
の番組で「素人で映画を撮るな!」と怒ってたのは園さん
だったけどね。

                                                   4.20(日) BSプレミアム


2014年4月27日日曜日

ジョゼと虎と魚たち


☆☆☆★★★       犬童一心      2003年

このブログに登場するのは2回目かと思う。
わたしの青春の一本であり、無条件で好きな映画である。
偶然テレビで放送されていたのを同期の家で途中から
最後まで観て、翌日レンタルしてきて最初から途中までを
観た。だからTVh + DVD。TVhは北海道のテレ東系列
の民放です。

池脇千鶴も良いんだが、当時は気付かなかったけど妻夫
木くんってほんとに器用な役者だな。

そういえば下の画像のジョゼが読んでいるのはサガンな
のであった。愛読していた『一年ののち』に続編があるこ
とを知ったジョゼは、妻夫木くんに頼んで買ってきてもらう。
それが『すばらしい雲』。今年のゴールデンウィークは暇
そうだから、読んでみるか。

                                                        4.6(日) TVh + DVD


2014年4月25日金曜日

女のいない男たち


村上春樹 著    文藝春秋

あの連載が単行本になったよ。むろん購入し、いそいそと未読
の2篇を読む。

「文藝春秋」連載の4篇を読んだ時点で、村上春樹の「新機軸」
として、私は事態をおおむね歓迎する考えを示した(政治家か)。
特に「ドライブ・マイ・カー」と「木野」はこれなかなかにエッジの
効いた良い出来で、とても気に入ったし、「イエスタデイ」にしても、
この短篇はなぜか私に「象の消滅」を思い出させるのだが(共通
点はあまり無い。立食パーティーで女の子と良い雰囲気になる
のに寝ないからか?)、決して悪くはない。「独立器官」は、まあ、
どうなんだこれという感じだけど。

残るは柴田元幸の「MONKEY」に掲載した「シェエラザード」。
これはなかなかに「過激な」お話で、気持ちは分からなくはない
けど、ちょっと笑ってしまった。新機軸といえばいえるのか。でも
長篇だとこういう女の子の「妄執」めいた描写って、青豆さんの
あたりから既に始まってはいたような。

そして書き下ろしの「女のいない男たち」。
こういう抽象的な短篇、昔は春樹よく書いてましたよね。
そういう意味で少し懐かしい気もしたが、話としては全体が見え
なくて、なんとももどかしい感じ。

2014年4月23日水曜日

ドッグヴィル


☆☆☆☆      ラース・フォン・トリアー     2004年


素晴らしい映画だった。これを映画館で単なる新作映画として、
前に『奇跡の海』を撮った気鋭の監督の「新しいやつ」として観た
なら、間違いなく相当ブッ飛ばされたはずだ。「これだから映画
はやめられねぇ」とか言いながら、その年のベストワンにしたこ
とだろう。

ある閉鎖的な村に、マフィアに追われた絶世の美女が迷い込ん
できたらどうなるかという「思考実験」のような趣きもある。「イン
テリが頭で考えた映画」にも成り得たのである。しかしそうはなら
ず、キャラクターたちは血肉を備えた「庶民」として立ち上がり、
彼らの欲望は切実さをともなった本当の欲望であり、そこで流さ
れた血は間違いなく痛みをともなった本当の血であった。そして
「見立て」を利用した演劇的な手法を大胆に用いている。さらに
手持ちカメラを多用して、恐らくカット割は考えずに撮り、あとで
つないでいるようだ。その一見「雑な」つなぎがまた画面に良い
緊張感をもたらしている。というか、ハンディの不安定な画と意表
を突くカット割という2つの要素によって、ようやくこの3時間に及
ぶ極めて"演劇的な"映画が成立し得ているのである。

要するにどこを取っても「こうでなくては成り立たない」のかたまり
の様な映画であって、本当によくぞ完成させたと監督には惜しみ
ない賛辞を贈りたい。

                                                                       4.5(土) DVD


2014年4月20日日曜日

ニンゲン合格


☆☆☆         黒沢清         1999年


だいぶ前に早稲田松竹で観て以来の再見だが、あら、
こんなにイマイチだったっけ…? たぶん「敢えて」なの
だろうけど、全編を通して起伏というものがほとんどなく、
若干退屈してしまったぜ。

役者が誰でもいいような演出と、突然キレる役所広司
はいつものことだが、なーんにもおもしろいところの無
いまま終わってしまったような感じ。
うーむ。これは『CURE』やら『ドッペルゲンガー』やらも
見直してみなければならんな。おもしろかったはずだが。

                                                            4.5(土) HBC


2014年4月19日土曜日

リアリズムの宿


☆☆☆★★★      山下敦弘      2004年


『もらとりあむタマ子』へとつながっていく山下×向井コンビの
ルーツがうかがえる初期の傑作といえるだろう。

本作の魅力は、「おそろしく狭い世界の中で繰り広げられる
みみっちいセリフの応酬」である。それがとてつもなく面白い。
途中、思わぬひとも出演していて、なんだか得した気分。
こういう映画はやはり、そこそこ客の入った映画館で、まわり
と一緒に笑いながら観たい。

                                                                 4.4(金) HBC


2014年4月10日木曜日

春遠からじの読書


TOKIOでは桜も既に散ったらしいが、こちとら桜といえば5月
の下旬。今日も釧路は雪と風で、もう「吹雪」と形容してよい
天候だった。それでもだいぶ暖かくなった。
そんな、春遠からじの。


『平成猿蟹合戦図』
吉田修一 著     朝日文庫

文庫になったのでいそいそ買って読む。

皆さんお手に取ると分かると思うが、けっこう長い。
しっかしなんか「ヌルい」んだよなぁ、というのが読後感である。
映画のカット割りのような「目に映像が浮かぶ場面描写」には
いよいよ磨きがかかってきているのだが。なんかいまいちなん
だよねー。
最新作の『怒り』に期待ですかね。










『シチュエーションズ  「以後」をめぐって
佐々木敦 著     文藝春秋

「以後」とはもちろん"2011.3.11"の以後、ということだ。
あの「以後」、日本のポップカルチャーは、小説は、演劇は、写真
は、どのように作品を生み出し・変容させ・あるいは断念もしてきた
か。私は「絶対安全文芸時評」以来の佐々木さんのファンだが、
「批評家」で飯を食えているひとがいったい何人居るのかというこの
ご時世、指針を示してくれる貴重な批評家である。わたしは阿部和
重の小説をちっとも良いとは思わないが、佐々木さんの批評を読ん
でいると読みたくなってくる。それも批評家の「効用」だろう。

本書の画像を探していると、佐々木敦の刊行予定に『4分33秒論』
とあるのに行き当たった。1冊まるごとジョン・ケージの「前代未聞
の一冊!」とのこと。そりゃ前代未聞だろうさ。こういう試みは好き
だね。思わず買って支えたくなる。

2014年4月9日水曜日

モスクワ パンクバンドの反乱


☆☆☆★  マイク・ラーナー、マキシム・ポゾロフキン  2013年

女の子だけで結成されたロシアの反体制パンクバンド「プッシー・ライ
オット」のドキュメンタリー。地下鉄や広場でのゲリラ的活動で徐々に
支持を獲得してきた彼女らだが、2012年3月、神聖な「救世主ハリス
トス大聖堂」でプーチン批判のライブ・パフォーマンスをしたことで「一
線を越えた」と当局に判断され、逮捕・起訴された。

このドキュメンタリーはその裁判を取材しているのだが、逮捕・拘留さ
れている当のメンバーのインタビューあり、公判の中での彼女らの証
言や反論もあり、メンバーの父母のインタビューまであり、なんだかず
いぶん自由に取材できていて呆気にとられる。

                                                                                 3.31(月) BS1


2014年4月7日月曜日

ダラス・バイヤーズクラブ


☆☆☆★★★      ジャン=マルク・ヴァレ    2014年

ちかごろ巷に氾濫している「実話をもとにした」映画のひとつだが、こ
ういうのは良いよ。おもしろかった。
「実話」はフィクションを補強もするだろうけど、かえって色々と厄介な
制限を生みそうなものだ。しかしこうも「実話」が映画の世界で流行る
というのは、やはりそれでうまくいってる作品が多いからだろうね。

ただの女好きのレイシストのヤク中の共和党支持の(あ、そんな描写
はなかったか)カウボーイだった男が、ある日突然HIVに感染すると
ころから始まる。まだ「エイズはゲイがなる病気」という偏見が強かっ
た80年代アメリカの話である。突如として生への渇望に目覚めた彼
は「生き延びるため」猛然と勉強をしはじめ、政府の遅々とした対応
や利益しか考えない製薬会社に怒りをたぎらせて、ついに自ら未承
認の薬を買い付けて販売する「ダラス・バイヤーズ・クラブ」を設立す
るに至るのである。

常日頃、「女優」か「監督」でしか映画を観ないし、それで十分だとも
思っているのだが、この映画はそれとは別になぜか気になったので、
上京ついでに観たわけである。主演のマシュー・マコノヒーはこの映
画でアカデミー主演男優賞を獲った。昔からアカデミー賞は狂人か
病人の役をやれば獲れるという揶揄もあるが、この映画のマシュー・
マコノヒーは実にすばらしい。帰ってから調べると『ウルフ・オブ・ウォ
ールストリート』のディカプリオをランチに連れて行って奇妙なアドバイ
スをするあの上司役だった。言われてみれば。あれも強烈だったな。

                                                  3.28(金) ヒューマントラストシネマ渋谷


2014年4月6日日曜日

男はつらいよ 翔んでる寅次郎


☆☆☆        山田洋次         1979年

マドンナは桃井かおり。支笏湖のあたりが出て来る。
女優が異色なので、若干いつもと違う感じに仕上がっていた。
布施明が最後、朗々と歌ったりなんかして。
それにしても、寅さんが「労働者諸君!」というだけでなんで
あんなに可笑しいんだろう。

                                                       3.28(金) BS JAPAN


2014年4月5日土曜日

孤独な天使たち


☆☆☆★       ベルナルド・ベルトルッチ     2013年


2本目はベルトルッチの最新作。
学校に、というよりも「世界にうまくなじめない」感じの、しかし良い
面構えをした少年・ロレンツォが主人公。学校のスキー合宿に行く
と母親を騙して、実はその金で食糧を買い込んでアパートの地下
室に1週間こもり、好きな音楽を聴いて(これがレッチリの"Power
of Equality"、懐かしい!)、気ままに過ごす。
そこへ奔放な腹違いの姉・オリヴィアが押し掛けて来たところから
映画が動き出すのだが…

まあ大巨匠が撮ったにしては瑞々しい映画なのだけど、別に瑞々
しい映画なら若いのがいくらでも撮るんであって。しかしデヴィッド・
ボウイの使い方なんてのはさすがである。思わず帰ってからアル
バムを借りてしまった。


全然関係ないんですが、6日(日)の午前10時から、「夢千代日記」
の再放送が始まるみたいです(BSプレミアム)。早坂暁の筆になる、
ある年代以上の方には言わずとしれた名作ドラマですが、私は8年
ほど前に観てけっこう衝撃を受けました。今度も観るつもりです。
未見の方はぜひ。

                                                                3.27(木) 早稲田松竹


2014年4月2日水曜日

眠れる美女


☆☆☆★        マルコ・ベロッキオ      2013年


久々の東京。
早稲田松竹でイタリア映画2本立てをやっていたので観に行く。

この監督の名前は知らなかったが、フィルモグラフィーによると、
1965年『ポケットの中の握り拳』でデビューしている、イタリアの
巨匠とのこと。ただ日本公開作は多くない。

『眠れる美女』という題だが川端康成とは関係ないようで、2009
年イタリア全土を震撼させた尊厳死をめぐるある事件を当時の
ニュース映像を含めて映画に取り込みつつ、3つのストーリーを
展開させている。女優、政治家、自傷癖の女、医師、さまざまな
人間が「自死」や「尊厳死」をめぐって対立する。展開のさせ方
にはさすがに手練れの感じがあり、いたって真面目なテーマだ
が飽きさせない。けっこうおもしろかった。

                                                              3.27(木) 早稲田松竹


2014年4月1日火曜日

砂の器


☆☆☆★★        野村芳太郎       1974年


ものすごい規模の大作映画だが、では大味かと思いきや、
意外に細部まで丁寧に作られており、単純に推理モノとして
も楽しめる。脚本が橋本忍と山田洋次だから、半端なものを
作るはずがないけれど。ただまあ、返り血を浴びたシャツを
愛人がビリビリに破いて列車から撒いたのが、「新聞のコラ
ムから分かる」というのは、ちょっと無理がある。原作でもそ
うだったっけ。もう忘れた。

オールスター映画というのはこうあるべきだろう。
丹波哲郎、加藤剛、森田健作という主役陣はそれほど派手
とは言えないが、脇を固めるのが島田陽子、笠智衆、菅井
きん、佐分利信、緒形拳、渥美清。端役で次々出て来るの
である。
夏の神社で瓜を食うシーンがあるのだが、むしょうに美味そ
うだった。

                                                             3.23(日) DVD