2014年3月24日月曜日

まだまだ冬の読書


『春の嵐』
ヘルマン・ヘッセ 著   高橋健二 訳   新潮文庫

ヘッセの小説に通底しているものにいつも胸が締め付けられる。
それを言葉にするのは難しいが、何だろう、誠実さ、やわらかさ、
無力感、あきらめ…。いろんなものがないまぜになったものの様
に思える。『春の嵐』は、とりわけ「切ない」成分の多い小説であっ
て、そんじょそこらの「切なさ」を売りにした小説や映画では到底
歯が立たないほどに切ないのである。

もとの題名は「ゲルトルート」。ヘッセの小説の題名はたいてい主
人公の名前だが、めずらしく主役ではない女のひとの名前である。

主人公は作曲家をこころざす青年で、名前はたしかクーンとかいっ
た。友達は多くないが、オペラ歌手のムオトという情熱あふれる男
と友達になる。ぼちぼち作曲家として名前が通るようになってきた
頃、ある芸術好きの資産家の音楽パーティーに招かれ、みずから
作曲したヴァイオリンソナタを弾いたりするのだが、その家の美しい
娘がゲルトルート。彼女もやはり音楽を愛し、高く澄んだソプラノで
歌うこともある。
まああとは、ヘッセですから、やっぱりか…という展開になるわけで。
あー思い出しても切ない。良い小説です。









『邪悪なものの鎮め方』
内田樹 著    文春文庫

「邪悪なものを鎮める」というテーマは、これまでもウチダ先生の議論
にはよく登場した「おなじみ」の概念である。それで一冊本が作れてし
まうほどとは思っていなかったが。

このひとの家族観・結婚観はいつも明快・爽快でおもしろい。へー、
そんなものかな、という感じ。
「家族に必要なただひとつの条件」を読んでると、なんだか結婚も悪く
ないな、と思えてくるのである。これはひとつの効用であろう。読んだ
ひとみんながみんなそう思うかは分からないが。

画像は、文庫本の画像がなぜかどこにも無かったので、単行本のもの。


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