2014年12月30日火曜日

バンクーバーの朝日


☆☆☆★★       石井裕也      2014年

石井裕也がはじめてビッグバジェットで挑んだ、カナダ
移民二世たちの野球チームを描いた大作映画。「家族」
に的を絞った映画が多かった石井監督が、差別や戦争と
いったものが複雑に絡んでくる「移民」をどう描くか、
いままでイメージになかった野球という「スポーツ」を
どう見せるのか、個人的には注目して観た。

あまり詳しい感想を書いている暇がないが、無難にまと
まってはいたが、光る部分もさほど見られなかったかな、
という感じ。

今年はこれで打ち止めだろう。104本で終了。

                                            12.30(火) 新宿ピカデリー


2014年12月28日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


マニアックヘブン vol.8

第1部 イキルサイノウ全曲

01. 惑星メランコリー
02. 光の結晶
03. 孤独な戦場
04. 幸福な亡骸
05. 花びら
06. プラトニックファズ
07. 生命線
08. 羽根~夜空を越えて~
09. 赤眼の路上
10. ジョーカー
11. 未来


第2部

12. 天気予報
13. 雨乞い ~ 怪しき雲行き
14. リムジンドライブ
15. 舞い上がれ
16. 時代(中島みゆき)
17. カラビンカ
18. さらば、あの日

                              12.25(木) 新木場Studio Coast

このイベント、バックホーンのファンにはいまさら説明不
要であるし、ファンでないひとはそもそも興味がないと思
うので特に説明はしないけど、つまり、マニアックヘブン
の9回目です。
今年は好きなアルバムに投票して、1位になったアルバ
ムを全曲やるという企画で、3rd Album「イキルサイノウ」
が1位になりました。いちファンとして、非常に納得の結果
です。
今年こそは「カオスダイバー」をやってくれないかと期待し
ましたが、今年も聴くことはできず。

ベストアクトは、客の盛り上がりも私自身の盛り上がりも
「怪しき雲行き」だけど、それだとおもしろくないので(なぜ
ならマニヘブに限らず何回もやっているので「マニアック
感」に欠ける)、ここは敢えて「孤独な戦場」にしよう。この
曲も2つぐらい前のツアーで聴いた気がするが、あらため
て秀逸な曲と演奏だった。最後のサビの後に「暗闇の中 
ドアを叩き続けろ」と繰り返すところなど、自然と握った拳
を突き上げたくなる。

2014年12月26日金曜日

ゴーン・ガール


☆☆☆★★     デヴィッド・フィンチャー    2014年

結婚5周年の記念日に妻が失踪するところから話は始まる。
旦那(ベン・アフレック)が帰って来ると妻の姿はなく、ガラスの
テーブルは粉々に割れ、家の中の数箇所に血痕があり、キッ
チンの床には大量の血液を雑に拭き取った跡が。しかもそれ
は妻の血液型と一致した……。
これはまだ序盤も序盤だが、いろんなことが後々「効いてくる」
構成になっているので、ネタバレしないようにするとほとんど何
も書けない。

まあとにかく狂ってるひとが大好きなフィンチャーさんだし、毎回
ファンからは「いやぁ旦那、今回も盛大に狂ってましたね」と褒め
られるんだろうけど、この映画でいちばん狂ってる「あの人」も、
歴代と比べてもかなり良い感じに狂ってます。ラスト30分までは
狂気控えめだったんで、なんだか旦那、今回はおとなしいでんな、
と思っていたんだけど、最後の30分にはゾッとした。あっぱれ。
フィンチャーさんの映画は後味が良いのがたぶんひとつも無いが、
観ている間はけっこう楽しい。

                                                        12.22(月) 新宿ピカデリー


2014年12月23日火曜日

鬼灯さん家のアネキ


☆☆★★         今泉力哉       2014年

同じ監督でなぜこうも違ってしまうのか。げに映画とは。

父の再婚相手の連れ子である「アネキ」が高校生の主人公
にエッチないたずらを仕掛けてくる、という微かな前情報だ
けを頼りに観た。実は原作のマンガも、今泉監督の名前も
知らなかった。
「血の繋がらない色っぽいアネキ」というのは、最近でも「ご
めんね青春!」にて中村静香が完璧に具現化してくれたよ
うに、際限なく夢の広がるシチュエーションであり、要は男子
の憧れなのである。これをうまいこと「くすぐる」ことができれ
ば、かなり面白い映画になる可能性もあったが、どうも歯車
が嚙みあっていたとは言い難い。すべてが生ぬるく、退屈き
わまる映画だった。

やはりそもそもがピンク映画向きなのかなー。でもピンク映画
にしてしまうと、とたんに上映館も、観る人間も、限定されてし
まうわけで。

                                                        12.21(日) キネカ大森


2014年12月22日月曜日

サッドティー


☆☆☆★       今泉力哉       2014年

2回目のキネカ大森。日曜なのに今回は席に余裕あり。
こないだがたまたま激混みだっただけか。

本当はこのあとのを本命視して来たのだが、こちらの
『サッドティー』のほうがはるかに良い出来であった。

映像の専門学校に通う、もしくは卒業したばかりの若者
たちの人間模様というか、まあ要は「好きかも」だの「付
き合う」だの「別れる」だのの、どうってことない話を120
分。でもこれが意外に観れてしまう。

このスカスカ感はなかなかのもんで、良くいえば「間を恐
れない」というのか、普通は怖くてできないぐらい、登場
人物たちは言い淀み、逡巡し、沈黙する。この監督の演
出力、なかなかのものと見込んだのだが……。

                                                  12.21(日) キネカ大森


2014年12月18日木曜日

天国の門


☆☆☆      マイケル・チミノ      1981年

『ディア・ハンター』で破格の成功を収めたマイケル・チミノが、
今度は1890年頃のワイオミングを舞台に東欧系移民の苦難
と被虐を壮大なスケールと壮大な尺で描いた超大作である。
その尺3時間40分。いくらなんでも長過ぎる!

映像は文句なく美しいが、説明セリフを排除しているおかげで、
「誰が」「どういう思惑を持って」「何のために」「何を」言ってる
のかが全然分からなかったんだけど、当方の理解力不足のせ
いなのか。そして、移民たちの放つ銃弾は、なぜあんなに当ら
ないのか…。銃の性能でしょうか。

記念すべき100本目! 今年も無事ノルマ達成。やったね。

                                                        12.13(土) BSプレミアム


2014年12月16日火曜日

ショーシャンクの空に


☆☆☆★★       フランク・ダラボン     1995年

実は初めて観たのだが、なるほどよくできてる。
一瞬も「ゆるみ」がなく、無駄なシーンがない。観終われば、ずっし
りとした感触が心に残る。お手本のような映画だな、というのが最
初の感想。
スティーヴン・キングの短編「刑務所のリタ・ヘイワース」は昔読ん
だことがあるので、最後のリタ・ヘイワースにまつわる部分と、頭部
に刺激を受けると人間は反射的にものすごい力で歯を嚙みしめる、
という件だけはよく覚えていた。

男しか出て来ない映画では『アラビアのロレンス』の次に面白い。
その2本しか知らないけど。

99本目。あと1本!

                                                            12.8(月) BSプレミアム


2014年12月14日日曜日

超能力研究部の3人


☆☆☆★★        山下敦弘       2014年

『もらとりあむタマ子』で前田敦子を主演に、のちに「甲府映画の
傑作」と語り継がれることになる(たぶん)映画を見事に撮った山
下監督の最新作は、乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本
奈々未を主演に、アイドル映画の撮影現場を舞台としたフェイク・
ドキュメンタリーであった。
つまり、3人が主演の「超能力研究部の3人」という、高校の部活
を舞台にした映画を撮影するメイキングと、映画の本編と思われ
る映像が複雑に入り混じる構成でありながら、実はそのメイキング
もしっかり演出が入ったフェイクであるという、非常に凝った内容
なのである。ただ、演出は入っているものの、全部セリフが決まっ
てるわけではおそらくなく、インタビュー部分とかリアクションとか、
演技指導に涙する場面とか、多分に「本当」と「演出」とが不可分
に境界を接しており、そのバランスの取り方は実に巧い。手練れ、
というやつで、もうアイドル映画は全部山下監督でいいんじゃない
かと思ってしまう。山下監督がやれば『ホットロード』はどうなった
だろう、『ソラニン』はどうなっただろう、考えても仕方のないことだ
が、夢想は広がっていくのだった。

                                                             12.7(日) シネマート新宿


2014年12月11日木曜日

エターナル・サンシャイン


☆☆☆★★     ミシェル・ゴンドリー     2005年

現代美術館に「ミシェル・ゴンドリー展」を観に行くことになり、
当日の朝に予習として鑑賞。我が国が誇る内田けんじをSF
寄りにしたような、なかなか凝ったラブストーリーで、辻褄合
わせも含めて楽しめた。

映画の時代設定はよくわからないが、まず前提として、特定
の人物の記憶を消す技術が開発された世界である。手術で
自分が記憶から消したい人物に関する記憶を根こそぎ除去
できる。すると、手ひどい別れ方をした恋人たちが手術を受
けに来るわけで。まあ、そういう話。

ミシェル・ゴンドリーのMV(ミュージック・ビデオ)もYouTubeで
予習したが、ミシェル・ゴンドリー作であることを知らずに観て
いたものが多数あり、それも名作が多いのに単純に驚いた。
ケミカル・ブラザーズの電車の車窓のやつとか、路上でドラム
叩いてるやつとか、えぇこれもそうなの、という感じ。

                                                                   11.28(金) DVD


2014年12月8日月曜日

【LIVE!】 椎名林檎


林檎博'14 -年女の逆襲-

01.
02. 葬列
03. 赤道を越えたら
04. 都合のいい身体
05. やっつけ仕事
06. 走れゎナンバー
07. 渦中の男
08. 遭難
09. JL005便で
10. 私の愛する人
11. 禁じられた遊び
12. 暗夜の心中立て
13. Between today and tomorrow
14. 決定的三分間
15. 能動的三分間
16. ちちんぷいぷい
17. 密偵物語
18. 殺し屋危機一髪
19. 望遠鏡の外の景色
20. 最果てが見たい
21. NIPPON
22. 自由へ道連れ
23. 流行
24. 主演の女
25. 静かなる逆襲
26. マヤカシ優男
27. ありきたりな女

                             11.29(土) さいたまスーパーアリーナ

念願であった林檎さまのライブ。初ライブである。
2時間弱で、ご覧の27曲を一気呵成に畳みかける圧巻の
パフォーマンスだった。ただ、曲数的には充分だけど、終演
後に時計を見て2時間経っていないと、なんとなく「物足りな
い…」のが人情というもので。じゃあ無駄なラーメン屋のMC
とかで水増し(別にバックホーンの悪口ではない)すればい
いのかというと、そういうもんでもなく、なかなか難しいところ
である。なむなむ。

今回は大編成のストリングス&ブラス隊がバックを固めてい
て、ほとんどの曲で豪勢なアレンジがなされていた。の、だが。
こっそり言うと、ストリングス&ブラス隊が入る曲よりも、シンプ
ルなバンドサウンドの曲のほうがグッときたのは間違いない。
曲でいえば「やっつけ仕事」「能動的三分間」「ありきたりな女」。
「やっつけ仕事」なんて特に、懐かしさが込み上げてきて高校
時代をちょっと思い出したり。良かったなー。
ベストアクトは「能動的三分間」で! So coolであった。

2014年12月2日火曜日

【LIVE!】 スガシカオ


NEXT ROUND TOUR 2014

01. バクダンジュース
02. Re:you
03. 19才
04. ストーリー
05. バナナの国の黄色い戦争
06. Hop Step Dive

07. ぬれた靴
08. グッド・バイ
09. LIFE
10. アストライド

11. アイタイ
12. AFFAIR
13. Progress

14. カラッポ
15. モノラルセカイ
16. 奇跡
17. したくてたまらない
18. 91時91分
19. Thank you
20. 午後のパレード

Encore-1
01. アシンメトリー
02. イジメテミタイ
03. コノユビトマレ

Encore-2
01. 情熱と人生の間
02. 俺たちファンクファイヤー

                       11.22(土) TOKYO DOME CITY HALL

ツアー最終日だったので、ダブルアンコール含めて計25曲
の大盤振る舞い。
これまでシカオちゃんのライブでは「PARADE」のツアーを
神奈川県民ホールで観たのがベストだが、それに迫る勢い
の楽しいライブだった。

RISING SUNではちょいちょい観ていたけど、単独ライブに
行くのは何年振りだろう。断わっておくが、決して好きじゃな
くなったわけではない。アルバムは聴いていた。配信限定
のシングルだって買った。「アイタイ」に至っては配信で買っ
て、シングル盤も買った。
しかしながら、恐縮ながら、「わざわざ札幌まで観に行きたい
アーティストリスト」には入っていなかった。シカオちゃん、実
にすまん。というか、山下達郎とTHE BACK HORNしか、その
リストには載っていなかったんだよ。ほんとだよ。

しかしあいかわらず「奇跡」がキラーチューンだと思ってるの
はいただけないな。あれはキラーチューンではないよ!
シカオちゃんのキラーチューンは「ストーリー」であり「黄金の
月」であり、「クライマックス」だ。

ベストアクトは「カラッポ」。この曲が好きすぎる…。
弾き語りから始まってだんだんバンドが加わっていくアレンジ
の「Progress」も相当よかった。


2014年11月29日土曜日

秋に読んだ本④


『すべて真夜中の恋人たち』
川上未映子 著      講談社文庫

本、喫茶店、光、雨、服。
すべてが「真夜中」のイメージと合わさって、静謐で独特な
世界をかたちづくることに見事に成功している。
人物も会話も展開もよくて、最高傑作ではないでしょうか。
『ヘヴン』より圧倒的に良いと思います。

川上作品にはわーっとまくしたてる人物がよく出て来るが、
口喧嘩を描写させたらほんとに天下一品ですね。今回も肝
になる部分にある言い争いがあって、それがなんとも効果
的だし、印象的だし、じんわりとしみてくる。おもしろかった。










『アは「愛国」のア』
森達也 著   潮出版

「尖閣・竹島・靖国・従軍慰安婦・死刑制度・原発・捕鯨・憲法
9条…について、若者たちと、とことん語り合ってみた!」と帯
にあるように、森さんがさまざまな立場・考え方をもつ6人の
若者と討論した内容をまとめた本である。森さんもよくやるよ
と思うが、わざわざその中に安倍晋三を強烈支持する嫌韓・
嫌中のほとんどネトウヨみたいなひとまで呼んで、喧嘩になら
ないように議論している。ただ、補足するとこのひとはけっこう
マジメに支持しているというか、単なるネトウヨなどではなくて、
安倍晋三の推し進めている政策とか外交、それが意味するこ
と、いろんな政治家の過去の発言やなんかにもとても詳しい。
それを踏まえての支持であり、先だっての都知事選では田母
神氏に投票したと、まあそういう人物らしい。どうしてもこの森
さんとはある意味で「対立しかしない」ひとのキャラが立ってし
まうのは致し方ない。
構図としてはだいたいこのひとが森さんの「お花畑的発想」を
糺すべく挑発し、森さんはその政治的言説の言い換えやごま
かし、メディアによってもっともらしく報道されていることの欺瞞
やすり替えを、ひとつひとつ丁寧にくつがえしていく。

9月に出た本なので、まさか今年のうちに衆議院選挙があると
は森さんもまったく思っていない。でも、投票する先が無いわ
と思っているひとがいたら、一読してみてもいいかも。参考に
なったり、ならなかったりするかと。

2014年11月27日木曜日

インターステラー


☆☆☆★★     クリストファー・ノーラン    2014年

宇宙モノに正直それほど興味は無いが、監督を信用して観に行
く。ハリウッドの大作映画を映画館で観るのは久しぶりだ!

結果としては、やっぱり大味だけど、かえってそこが良かった。
ツッコミを入れたいところが累計100か所はあったと思うが、まあい
いじゃない、という気分で3時間の上映を楽しく終えることができた
のは、さすがクリストファー・ノーランというべきか。こういう映画は
途中でシラけたらおしまいである。ブラックホールから水平線ぎり
ぎりの重力ターンで脱け出す? はっはーん、さてはなんでもアリ
かい、やってられんわ! となったら終わりである。なんでもアリ感
は否めないが、少なくともシラけはしなかった。力作であることは
疑いない。
まあでもちょっと長いな。

                                                             11.22(土) 新宿ピカデリー


2014年11月25日火曜日

【LIVE!】 真心ブラザーズ、藤井フミヤ


マゴーソニック2014 ~オラ、真実の愛が知りてぇ!~

<藤井フミヤ>
01. 女神(エロス)
02. 嵐の海
03. TRUE LOVE
04. Another Orion
05. Stay with me.
06. 恋の気圧
07. UPSIDE DOWN

<真心ブラザーズ>
01. 空にまいあがれ
02. BABY BABY BABY
03. splash
04. あいだにダイア
05. I’M SO GREAT!
06. どか~ん
07. EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
08. 拝啓、ジョン・レノン

(Session)
01. NANA(チェッカーズ)
02. ENDLESS SUMMER NUDE(真心ブラザーズ)
03. Twist and Shout(The Beatles)

                                                    11.21(金) 渋谷公会堂

一昨年ぐらいから真心ブラザーズの2枚組のベスト盤を
よく聴いていた。でもライブに行ったことがなかったので、
先週ふと思い付いてチケットを買ってみた。渋谷だし。
藤井フミヤもわりと好きだし。

真心が主催のイベントということで、先にフミヤ先輩登場。
独特な歌い方は変わってないが、マイクスタンドを使った
パフォーマンスに釘づけになる。えらいカッコイイ。動きも
どことなくマイケル的。股間を押さえたり。

そして真心が登場。こういうイベントの時は、フミヤファンも
いることだし、ベスト盤的な選曲になるのでは、という期待
は的中。知ってる曲ばかりだひゃっほーい。「拝啓、ジョン・
レノン」が聴きたかったんだよ。最高。わたしはYO-KINGの
声が好きだ。ノンビブラートの、あの突き抜ける感じというか、
迷いの無い感じ。

最後はもちろんセッション。
チェッカーズはやるだろうと思ったが、まさかの"NANA"!
う~ん、良かったけど、普通に"ジュリアに傷心"とかの方が
盛り上がったような。
本編ではやらなかった"ENDLESS SUMMER NUDE"をや
り(ちょっと練習不足だった?)、ビートルズで締めて、私とし
ては満足の一夜だった。真心のライブはこれからも行こう。


2014年11月21日金曜日

秋に読んだ本③


『花のノートルダム』 
ジャン・ジュネ 著  中条省平 訳   光文社古典新訳文庫

「最も汚れたものが最も聖性を帯びる」という話型は文学史上に
しばしば出て来るのだが、いまひとつ感覚がわからないというか
なんというか。代表的なのは『罪と罰』のソーニャとかね。

その話型の極北にあるような、このジュネの小説。なんとも強烈。
10月はトリュフォーを観まくっていたので、よっしゃ、いっそ映画も
小説もフランスもので「フランス月間」にしてまえ! と意気込んで
読み始めたものの、なかなか苦戦したのであった。

「花のノートルダム」とは何なのかというと、中盤になるまで出て来
ないのだが、美少年の男娼のあだ名なのである。だがこの小説の
主人公は明らかにディヴィーヌという男娼であり、ミニョンというこれ
また美男のヒモと生活している。語り手は、ジュネ本人を思わせる
ジャンという男で、刑務所でこの物語を書いたことになっており(実
際ジュネは獄中でこの処女作を書いたらしいが)、他にもいっぱい
登場人物がいて、非常にややこしいのである。そして、まあとにかく
犯罪者か同性愛者か両性愛者しか出て来ない。翻訳はがんばって
るようなのだが、いかんせん読むのに骨が折れる。
おもしろかったらサルトルの『聖ジュネ』にも挑戦してみようと思って
いたけど、うーん、どうかな。









『きみは赤ちゃん』
川上未映子 著     文藝春秋

いやー笑った。
未映子さん渾身の出産&育児エッセイ。おもしろい。
すべての出産がこんなに地獄のような大変さではないのだろうと思
うが、しかし大変な出産というのは大変な出産なのだ。なのだろう、
きっと。いずれにしても男には想像するしかない&想像できるはず
もない経験である。

阿部和重の小説は好きじゃないが、ここに出て来る「あべちゃん」は
いいやつである。男性性の代表として未映子さんに攻撃されるあべ
ちゃんを思わず擁護したくもなる。

2014年11月15日土曜日

ふしぎな岬の物語


☆☆☆          成島出        2014年

『あなたへ』を観たときに覚えた感覚がよみがえった。
こんな映画をつくって一体どういうひとが喜ぶのかがよく
わからない、という感覚である。基本的に「いいひと」しか
出て来ず、悪人に見えても必ず最後にはそのひとなりの
事情があることが説明される。不条理なことも起こらない。
特別切り口が斬新なわけでもない。ただの喫茶店の話で
ある。

ものすごく眠い状態で映画が始まってしまったけれど寝な
かったので、別につまらなかったわけではない。
ただ「不思議だなぁ」と思いながら観ていた。

これで95本。
ここまで来ればあとはなんとでもなる。
「ごめんね青春!」を繰り返し観ても、「うぬぼれ刑事」の
再放送を観ても、佐々木昭一郎のドラマの再放送を観て
も、「山賊の娘ローニャ」がイマイチでも、本数にはならな
いけど余裕である。
あぁ心に余裕があるってのはいいことだなぁ。


~関係ないけど~
16日(日)からのNHK-FM「サウンドクリエーターズ・ファイル」
は2週にわたって真心ブラザーズ!
前回は喋りはおもしろいし選曲は良いし、なかなか最高だっ
たので、宣伝しとこう。私ももちろん聴きます。私は先々週と
先週のグループ魂も聴きました。

                                                       11.3(月) 新宿バルト9



2014年11月13日木曜日

秋に読んだ本②


これも9月に読んだ本ですが。

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
ジェイムズ・M・ケイン 著  池田真紀子 訳  光文社古典新訳文庫

映画は2種類あるよな、と思っていたら、なんと4度も映画化されて
いるらしい。4度は伊達じゃない。

ちなみに「郵便配達」はストーリーとまったく関係がない。
舞台はアメリカ。ハイウェイ沿いのしがないレストランに、ならず者
の主人公がふらっと立ち寄る場面から始まる。そこで働くことになっ
たならず者はレストランの経営者の美しい妻とすぐ火遊びをし始める。
やがて本気になった二人は、亭主を殺す計画を考え始める…。
『オン・ザ・ロード』みたいな乾いたアメリカが好きなひとにもいいし、
タランティーノみたいなクライム・アクションが好きなひとも楽しいはず。

ホントに「読み出したら止まらないで賞」をあげたいおもしろさで、休憩
なしで読了。無駄の無い描写と、ワクワクするようなセリフの応酬に何
度もうなる。このまま映画の脚本として俳優に渡しても支障なさそうに
思えるぐらい無駄がない。

今度映画も観てみよう。
私の嫌いなヴィスコンティの映画化がいちばん有名のようだ。









『道草』
夏目漱石 著   新潮文庫

『明暗』のひとつ前の長篇。ということは、完成させた小説としては、
漱石の最後の小説ということになるか。

主人公は健三という名だが、多分に漱石の自伝的要素が強いと言
われている。親族がたくさん出て来るのだが、出て来るやつ出て来
るやつみな、こんな親族ばかりじゃ、そりゃ胃も悪くなるわ、という感
じのロクでもない養父、養母、姉、兄、義父などが、次々と列をなして
漱石の家に金の無心に来る。この小説をひとことでまとめると「親族
が金を借りに来る小説」以外にはないだろう。巻末解説によると、こ
こまで一時期に集中していたわけではないらしいけど、でもおおむね
本当のことらしい。有名人はいつの世もたいへんだ。
勝手な想像だけど、村上春樹に言っても「僕はそういうの嫌なんです
よ」とかいって貸してくれなそうだよね。大江健三郎は結局貸してくれ
そう。「…ちょっと待ってなさい」とかいって、書斎に取りに行ってくれ
そうな。

『道草』には最初の小説の原稿を出版社に渡したという記述もある通
り、時期的には『吾輩は猫である』を執筆した当時のことと見られる。
『猫』では色々な青年が訪ねてきて先生も愉快そうだったが、一方で
こんな不愉快なことも満載だったようである。



2014年11月11日火曜日

光の音色 -THE BACK HORN Film-


☆☆★★        熊切和嘉         2014年

まあファンだから観ますよ。いくら評判が悪くてもね。

ストーリーパートの方をもうちょっとおもしろくできたんでは?
熊切監督ともあろうひとが、死んだ妻をリヤカーにのせて運ぶ
男の話を、ただ時間軸をいじくっただけにしか見えず。あまりに
もおもしろくない。

キネマ旬報の星取り表ではなぜか北川れい子が大絶賛してい
た…。なんで?

                                                       11.2(日) 新宿ピカデリー


2014年11月9日日曜日

秋に読んだ本


9月に読んだ本ですが。

『エマ』
ジェイン・オースティン 著  中野康司 訳    ちくま文庫

ちくま文庫の裏に書いてあるあらすじ。

 エマ・ウッドハウスは美人で頭が良くて、村一番の大地主のお嬢さま。
 私生児ハリエットのお相手として、美男のエルトン牧師に白羽の矢を
 立てる。そしてハリエットに思いを寄せる農夫マーティンとの結婚話を、
 ナイトリー氏の忠告を無視してつぶしてしまう。ハリエットはエマのお膳
 立てにすっかりその気になるのだが――。19世紀英国の村を舞台に
 した「オースティンの最も深遠な喜劇」

あらすじだけ読むとゲロつまんなそうだし、驚くべきことに
あらすじ以外のことは本当に起きないのだが、いつもなが
らオースティンの小説はめちゃくちゃに面白い。なぜなのか。
前にも書いたように、登場人物たちはみな定職も持たず(な
ぜなら貴族だから)、ダンスパーティーと食事会に文字通り
明け暮れ、恋愛と家の名誉と土地の管理しか頭に無い。男
女で手紙を交わすこともほとんどないので、お互いの人柄を
知る機会といえば、食事会やパーティーにおける「紳士的な
会話」に限られる。前にも書いたけど、こんな条件で恋愛小説
を書けと言われてもまず無理だろう。オースティンの小説を支
えるのは、キャラクターの造形と、鋭い人間観察なのである。

これでジェイン・オースティンの6作の小説のうち、長いの3つ
(『高慢と偏見』『マンスフィールド・パーク』『エマ』)が片付いた
ことになる。何年か前に『ジェイン・オースティンの読書会』とい
う映画があったが、私にもそろそろその読書会に参加する資
格があるかもしれない。









『女子の生きざま』
リリー・フランキー 著    新潮文庫

オースティンが描いたのが19世紀貴族の「女子の生きざま」だと
すれば、こちらはゼロ年代を生きる"女子"たちへ、リリーさんが
満腔の愛を込めて送る「指南書」である。おもろい。



2014年11月7日金曜日

トリュフォーの思春期


☆☆☆★★★      フランソワ・トリュフォー    1976年

素晴らしい映画で3週間にわたったトリュフォー映画祭を締めくくる
ことができて余はたいへん満足している。最終日の最終回だった
こともあり、上映後の劇場には自然と拍手が起こった。

子どもを使うのがうまいトリュフォーだが、全篇にわたりほぼ子ども
の演技だけで構成され、即興も多いと聞いて、正直観る前は不安
だった。しかし杞憂。なんたる杞憂。子どもたちの自然な表情や演
技に魅了される。

原題は「おこづかい」の意だそうな。
たしかに「思春期」はヘンであって、登場するのはいずれも10歳前
後と思しき幼い子どもたちである。思春期といったら、いくら早熟な
フランスの子といえどもせいぜい中学生だろう。

10月はさながらトリュフォーにささげた一か月であった。有楽町の
ビックカメラに通いすぎて、飽きた。13本のトリュフォー映画を観た
が、気に入ったのは

①トリュフォーの思春期
②終電車
③夜霧の恋人たち

となろうか。『恋愛日記』もなかなか。やっぱりカラーになってから
のほうがおもしろい。

                                                          10.31(金) 角川シネマ有楽町


2014年11月5日水曜日

隣の女


☆☆☆       フランソワ・トリュフォー     1981年

小さい田舎町に暮らす主人公の家の隣に、昔自分を捨てた女が
引っ越して来る。なので「隣の女」。今ならさしずめ火曜10時の枠
で放送される不倫ドラマだ。
愛の作家・トリュフォーの面目躍如かと思いきや、あんまりおもし
ろくなかったな。私はどうも、欲情に身を焦がして抑制の効かない
男女を見ると、つい「バカだ」と思ってしまって全然共感できない。
ジェラール・ドパルドューもファニー・アルダンも、愛ゆえになのか
「いやいやそれはダメでしょ」という行動を取って、結果的にそれが
破滅を招くわけで、いかにも回避可能なリスクなのだった。どうせ
わたしは冷たい人間ですよ。

                                                         10.31(金) 角川シネマ有楽町


2014年11月2日日曜日

終電車


☆☆☆★★     フランソワ・トリュフォー    1980年

これは見事。
『大人は判ってくれない』は別格とすると、今のところ一番よく出来
ていて、おもしろいと思う。サスペンスとしても、恋愛映画としても、
一級品である。
ナチス占領下のパリが舞台。戦争中なので原則夜11時以降は外
出禁止で、"終電車"を逃すと大変なことになった、という説明が
まず入る。電気が不足していたから(だったか?)、寒さから逃れる
ため、市民は夜の映画館や劇場に殺到したという。
そんな時代のモンマルトル劇場の女主人をカトリーヌ・ドヌーヴ。
劇場では「消えた女」という芝居を打とうとしている。つまり劇中劇
のかたちで、稽古から公演までのけっこうスリリングな日々がつづ
られるわけである。これがかなりよく出来ていて、おもしろい。

冒頭「これは元の35mmを4Kでデータ化して2Kで処理した云々」
という字幕が出た。詳しい意味はわからなかったが、デジタル・リマ
スター版ということらしい。たしかに映像は綺麗だった。

                                                          10.26(日) 角川シネマ有楽町


2014年11月1日土曜日

黒衣の花嫁


☆☆☆       フランソワ・トリュフォー      1968年

ジャンヌ・モロー、『突然炎のごとく』からはだいぶ月日が経って
いるし、そもそも「そういう役」だからかもしれないけれど、なんだ
か目が据わってて「怖いおばはん」なのである。彼女はけっこう
正当と思える理由から復讐を企て、冷徹に着実にそれを実行し
ていく殺人者なのだが、可憐さがひとかけらも無くて、残念なこと
に彼女の復讐を応援する気持ちがまったく湧いてこない。

そして、今年はこれで90本目。ククク、余裕だぜ。

                                                      10.26(日) 角川シネマ有楽町


2014年10月30日木曜日

イングリッシュ・ペイシェント


☆☆☆★★       アンソニー・ミンゲラ      1997年

あまりにも続けてトリュフォーを観たので、ここらでひとつ、ビッグ・
バジェットの大作映画が観たくなった。折よくBSプレミアムでこの
映画が放送されたので、予備知識ゼロで鑑賞。

題名は「英国人の患者」の意だが、第二次大戦中の、資料によれ
ば「北アフリカ」が舞台、とのこと。そういえば場所の特定につなが
るシーンやセリフは無かったような。忘れただけか。
飛行機が撃墜されるシーンから始まる。パイロットの他に、機体の
前のスペ-ス(『紅の豚』のフィオのスペースといったら分かり易い
か)には意識を失った金髪の美女が乗っているように見える。銃撃
を喰らった機体が火を噴き、パイロットの顔面に爆風がもろに吹き
付ける。そして不時着…。顔が焼けただれ、どこの誰とも分からな
い「患者」というわけである。
雄大で苛烈な砂漠の美しさと、複数の時制を往復しながら徐々に
謎が明らかになっていく構成の妙を堪能した。たいへん満足。

ジュリエット・ビノシュが出ている(というか主演だ)ことすら知らずに
観たので、非常に得した気分である。ビノシュねえさん、相変わらず
お美しい。何が好きって、まあ顔が好きだね。キャリー・マリガンと
同系統の顔のように私には思える。つまり私には一貫性がある。

気分転換になったところで、さぁ、また有楽町に通うか。

                                                               10.24(金) BSプレミアム


2014年10月28日火曜日

柔らかい肌


☆☆☆★       フランソワ・トリュフォー      1964年

この辺までがトリュフォーの「初期」かな。モノクロである。
さまざまな形の「愛」を描く作家として名高いトリュフォー。若者同士
のさわやかな恋愛は「ドワネルもの」を始め既にやってるので、あと
はどうしても「不倫もの」が多くなるのは致し方ないか。

本作は、高名な文藝評論家とスチュワーデスとの不倫が題材。あ
まり実のある内容は無いが、美しきスッチー役にはフランソワーズ・
ドルレアック。キレイなひとだなぁ、としみじみ見とれていたら、なんと
カトリーヌ・ドヌーヴの姉で、25歳という若さで交通事故で亡くなった
とのこと。なんたる。

                                                          10.24(金) 角川シネマ有楽町


2014年10月26日日曜日

夜霧の恋人たち


☆☆☆★★      フランソワ・トリュフォー     1968年

やっとだよ、未見のジャン=ピエール・レオー主演作。
度重なる不服従で、軍から除隊されるシーンで始まる。ウキウキと
パリの街を走るジャン=ピエールを観てるとこっちも楽しくなる。
本作は万事この調子で、職を見付けては何かやらかしてクビになる
んだけど、本人はあっけらかんとしているし、全体にワクワクするよ
うな楽しい空気が漂う喜劇である。こういうのって、ゴダールには無
いですよね。
いやあ、面白かった。
パリの街に張り巡らされた気送速達便を捉えたシーンも面白い。
地下の圧縮空気管を使って手紙を送る方式である。いつ頃まであっ
たんだろう。

                                                              10.23(木) 角川シネマ有楽町


2014年10月25日土曜日

アントワーヌとコレット


☆☆☆★       フランソワ・トリュフォー     1962年

アントワーヌとは言うまでもなくアントワーヌ・ドワネルのこと。
『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオーの役名で
ある。あれから色々あって、アントワーヌはレコード会社で働い
ていて、コンサートで出会った美少女のコレットに恋をするわけ
である。窓から会話するシーンが有名だが、他にも瑞々しい描
写がいっぱいで、トリュフォーの本領発揮といった趣き。

本作はオムニバス映画『二十歳の恋』のフランス篇。
どうもこれ以外はパッとしないらしく(石原慎太郎の監督作も含
まれてるらしい)、いまでは単独の短篇映画として上映されるこ
とがほとんど。なので私は一毫の躊躇もなく、これを1本とカウン
トするのである。それも観るのは2回目であるにも関わらず。
そうまでして100本観たいのか…。

                                                    10.23(木) 角川シネマ有楽町


2014年10月23日木曜日

恋愛日記


☆☆☆★★       フランソワ・トリュフォー      1977年

女とみれば口説き出す、中年のプレイボーイの物語。女をとっかえ
ひっかえしているが、不思議と嫌われることなく、冒頭とラストの彼
の葬式には関係のあった女ばかりが参列してめいめいが棺に土を
かける。『ニシノユキヒコの恋と冒険』の、女だけの葬式のシーンは
どうやらここからのいただきみたいだ。

どうもトリュフォーはカラーになってからのほうが面白いような。
それにしても今回、トリュフォー映画の象徴だと思っていたジャン=
ピエール・レオー出演作にまだ一度も出会わない。意外と多くない
ということか。

                                                            10.18(土) 角川シネマ有楽町



2014年10月21日火曜日

アデルの恋の物語


☆☆☆★★         フランソワ・トリュフォー      1975年

か・な・りクレージーな女のひとの話で、今で言えばストーカーである。
けっこう面白かった。ピンソン中尉、まあイケメンではあるが、そこまで
するほどかねえ。『高慢と偏見』で軍人と駆け落ちする四女(だっけ)を
想起した。

郵便局で一度だけ出て来た子どもが、妙に心に残る。
やっぱトリュフォーの映画は子どもが出て来ないと。

                                                             10.17(金) 角川シネマ有楽町


2014年10月19日日曜日

突然炎のごとく


☆☆☆★★      フランソワ・トリュフォー      1961年

「ジュールとジム」ですよ、原題。味も素っ気もない。
そりゃあ「突然炎のごとく」のほうが断然カッコいいよ。

いろいろと有名な場面が目白押しの映画なのだが、ストーリー
的にはジャンヌ・モローの尋常じゃないわがままに振り回される
ジュールとジムの物語。端的に言って、ジャンヌ・モローの頭が
おかしいとしか思えない。


~関係ないけど~
今週と来週のNHK-FM「サウンドクリエーターズ・ファイル」の
DJはなんとU-zhaan !! 今までになくシブい。
90分基本独り語りでひと月(4回)の番組なので、「喋れるミュー
ジシャン」だとじっくり聴けるしおもしろい。反面、慣れてないひと
だと(というか喋り慣れてるミュージシャンなんて一握りだし、そ
れでいいとは思うが)聞いててツラいこともある。
真心ブラザーズとか、レキシとか、やくしまるえつこの時はすげえ
おもしろかった。真心は選曲もさすがのセレクトで、ローザ・ルク
センブルクはここで掛かって何なのコレと思って聞きだした。
U-zhaan、いちおう聞いてみるか。
(追記)
始まっちゃったので聞いている。
淡々としてるな。

                                                        10.13(月)  角川シネマ有楽町


2014年10月18日土曜日

ピアニストを撃て


☆☆☆       フランソワ・トリュフォー      1960年

冒頭、ピアノの弦部分のアップに「エヴァQ」を想起する。
わりと複雑な筋だったみたいで、なんとなくは分かったけど、なん
だかあまり付いて行けず。ピアニストの前の奥さんはなんで窓か
ら飛び降りたんだっけ…? レナは最後の銃撃戦のとき、なぜピ
アニストの方に行こうとしたんだっけ…?
ダメだ、もっかい観ないとな。

                                                       10.13(月) 角川シネマ有楽町



2014年10月16日木曜日

あこがれ


☆☆☆★★       フランソワ・トリュフォー      1957年


「あこがれ」といえば、ベルナデット・ラフォン、自転車、テニス。
体育教師の彼氏はまったく存在感が薄いが、ベルナデット・ラ
フォンの本当の夫なんだってね。うらやましいぜ。
トリュフォーはベルナデットに出てもらいたくて、仕方なく夫を
相手役にしたら、なんだかいろいろ注文つけられて頭に来る、
みたいなことを言っていたと『トリュフォーの手紙』(山田宏一)
にあった。
岩井俊二に通じるような、瑞々しい短篇映画である。

もうひとつ『トリュフォーの手紙』から引用。

 フランソワは死んだかもしれない。わたしは生きているかもしれない。
 だからといって何の違いがあるというのだろう。
 (ジャン=リュック・ゴダール)

なんだかわかんないけど、カッコいいから良いか。

                                                  10.13(月) 角川シネマ有楽町


2014年10月14日火曜日

野性の少年


☆☆☆     フランソワ・トリュフォー     1969年

トリュフォー映画祭が有楽町で始まったので、さっそくどんな
感じか偵察に行って来た。初日のジャン・ピエール・レオーの
舞台挨拶があった回は、はやばやと売り切れたらしいが(当た
り前か)、この日も席はなかなかの埋まりよう。

映画は、3歳で親に捨てられてから、森で育った半分獣のよう
な少年が保護されて、トリュフォー演じる学者(?)のもとで人間
社会に適応するよう矯正を試みるという内容。まあ普通だった。

キネマ旬報のトリュフォー特集号には橋本愛のインタビューが
載っていた。まだ『大人は判ってくれない』と『アメリカの夜』しか
観たことがないが、二つともとても好きだったので、どんどん観
ていきたいとのこと。泣けてくる。ユイちゃんはシネフィルだった
んだね。私が18のときにはまだゴダールもトリュフォーもロマン
ポルノも、何も観ていなかったよ。黒沢清や青山真治の映画で
橋本愛を観る日も近いという気がする。

                                                      10.12(日) 角川シネマ有楽町


2014年10月12日日曜日

読んだ本④


『みずから我が涙をぬぐいたまう日』
大江健三郎 著       講談社文芸文庫

表題作は「読みにくさの極地」といった趣きの、粘着質の、の
たうつような文体でもって、みずからを癌と信じて疑わない主
人公「かれ」の錯乱ぎみのモノローグと、その「遺言代執行人」、
「母親」の語りが入り乱れ、なんだかものすごいことになってい
る。三島の割腹自殺を受けて書かれた大江さんなりの「返答」
らしいのだが、どこが問題提起でどこがどう返答なのか、私の
読解力不足もあってもうよく分からない。ここでも、牛のテール
スープを大鍋で煮込む父親というモチーフが登場する。例の
蹶起のイメージも反復される。

このほか、中篇「月の男(ムーン・マン)」を収める。
こっちは比較的分かり易い。大江さんの小説には、昔は性関係
にあったけど、いまは友人、みたいな女性が度々出て来るけど、
……ま、まあいいや。








『夢十夜 他二篇
夏目漱石 著     岩波文庫

表題作のほか、「文鳥」「永日小品」を収める。

背負ってる子が重くなる話も良いが、「蛇になる。いまになる」と
歌いながら川にざぶざぶ入っていくおっさんの話が好きだ。

2014年10月6日月曜日

ジャージー・ボーイズ


☆☆☆★★★       クリント・イーストウッド     2014年

フランキー・ヴァリがもともと在籍していたフォー・シーズンズの成功とお
決まりの挫折までを描いたミュージカルを原作としているらしい。そのミュ
ージカルはむろん観たことがないが、フランキー・ヴァリに関しては、最も
人口に膾炙した「あの曲」はもちろん、サンデー・ソングブックでかかった
"Native New Yoker"という曲がカッコよくて、何枚かCDを買ったぐらいの
知識しか無い。
でもとにかくそんなの関係ないから、観たほうがいい。
わたしはだいたい、こういう長年の確執が歳月の経過で融和されるという
話型に弱いのかもしれない。正直、感動しました。
イーストウッドって、なんでこんなに巧いんですか。
現時点で今年の洋画で1番ですな。

                                                    10.1(水) ヒューマントラストシネマ渋谷


2014年10月4日土曜日

フランシス・ハ


☆☆☆★       ノア・バームバック       2014年

ユーロスペース、いや久しぶりだなー、ひょっとして5年ぶりぐらい
か、なんて思ってたら、去年『ホーリー・モーターズ』を観てました。
ブログは時に残酷な真実を映し出す。うーむ、そういえば。

そして偶然にも、そんなユーロスペースで観た映画は、カラックス
への目配りがかなり分かり易い形である『フランシス・ハ』。けっこ
う不思議ちゃん系の、ダンサーを目指す女子が主人公の白黒映
画である。主役のコの、可愛いんだか可愛くないんだか分からな
い感じがとても良い。バカなのか能天気なのか実はしたたかなの
か、そのへんも見せ所としては難しい所だと思う。あんまりバカだ
と『ホットロード』になっちゃうし。これ日本でリメイクするなら高畑
充希とかか、と今朝あさイチを観ながらふと思った。

画像はボウイの"Modern Love"に合わせて街を疾走するフランシ
ス。つまり『汚れた血』なのだが、『大人は判ってくれない』『軽蔑』
『私のように美しい娘』などの音楽も使われているとのこと。

                                                              9.30(火) ユーロスペース


2014年10月1日水曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


LIQUIDROOM 10th ANNIVERSARY
(eastern youthとの対バン)

01. 幻日
02. シリウス
03. 声

04. コワレモノ
05. 何もない世界
06. 泣いている人

07. シンメトリー
08. ブラックホール・バースデイ
09. コバルトブルー
10. シンフォニア

(アンコール)
01. 刃

                                               9.25(木) LIQUIDROOM恵比寿

注目の1曲目。
「暁のファンファーレ」のツアーは既に終わったわけで、たぶん
みんな、「月光」はもういいかな、と思っていたと推測するんで
すよ。まあそれでも「月光」だろうなと。そういうバンドですから。
しかし今回バンドはそれを読み取ったうえで、しかし昔の曲を
持って来るのではなく、「幻日」から入った。
100点です。この心意気に私はこのバンドに対して何度目かの
感動を覚えました。
「コワレモノ」~「何もない世界」の流れも良かったなー。

ベストアクトは、ほんとは「ブラックホール・バースデイ」だけど、
たぶん何度も受賞してるんで、ここは「コワレモノ」にしよう。


~関係ないけど~

10/5(日) 15:30  BSプレミアム

「世紀の伊達男 加藤和彦」

が再放送! 加藤和彦をよく知らないひとにも、いや、知らない
ひとにこそ、必見のドキュメンタリー。


2014年9月29日月曜日

八日目の蟬


☆☆☆★★★        成島出       2011年


水準の高い映画を観られて満足。
世間から孤絶したコミュニティや、ロードムービー的な要素に、
ちょっと塩田明彦の『カナリア』を想起した。
けっこう長かったが、登場人物たちの言動と動機はじゅうぶん
説得的であり、ずっと引きつけられっぱなしだった。やっぱそこ
が大事だね。
特に女優陣の演技には目を瞠るものがある。素晴らしい。小池
栄子はうまいなー。

                                                                  9.15(月) DVD


2014年9月24日水曜日

読んだ本③


『流されゆく日々1 1975.10~1976.6
五木寛之 著       双葉文庫

私は五木寛之の読者というわけではないが、1975年から日刊ゲン
ダイに「現在も」連載を続けていると聞いてその驚異的な長さに興味
が湧いた。よくそんなに書くことがあるな。私が最も興味のある70年
代カルチャーにまつわる単語が目白押しである。
寝る前にちびちび読んでいたが、けっこうおもしろかった。









『やりにげ』
みうらじゅん 著      新潮文庫

「エロ噺家」を目指していたみうら先生による「エロ小噺集」、とでもいえ
ばいいのか。自分の経験と他人のエロ話を織り交ぜているらしいが、
たいへんおもしろい。電車の中で読むと吹き出してしまうので危険。
イラストも載ってるから覗かれると変な本読んでると思われるし。


2014年9月21日日曜日

舞妓はレディ


☆☆☆★★         周防正行        2014年

楽しい映画だった。
舞妓さんに憧れ、独りで京都にやってきたものの、鹿児島弁と
青森弁のミックスでひどい訛りのある少女を、言語学者が矯正
して一人前の舞妓に仕立てる、というストーリー展開に、上映中
「そういうことか!」と思わず呟きそうになった。
そう。「舞妓はレディ」とは、「マイ・フェア・レディ」の「もじり」とい
うわけである。…ってアレ、知らなかったの、おれだけ?

「舞妓」も一つの大きな柱には違いないが、「訛り」がもうひとつ
の大きなテーマとなっていて、方言好きの私としては望むところ
である。途中、「深草少将の百夜通い」の話が出て来るが、去年
『にごりえ』で予習済みなので、これにも動じることはない。ブロ
グもたまには役に立つものである。
本家『マイ・フェア・レディ』でヒギンズ教授が、イライザの訛りを
矯正するための特訓フレーズ

The rain in Spain stays mainly in the plain.
(スペインの雨はおもに平地に降る)

って英語の授業でやりましたよね。いや、私の高校ではやったん
ですが、これから観る方はこのへんも覚えてると少し余計に楽し
めるかもしれない。

主演は上白石萌音(かみしらいし・もね)ちゃん。98年生まれだと。
ついこないだやん! と言いたくなりますね。妹の萌歌(もか)ちゃん
もタレント活動をしているそうな。よく声が出てるし、うまい。ミュージ
カルだからそりゃそうか。

                                                              9.13(土) 新宿ピカデリー


2014年9月19日金曜日

童貞。をプロデュース


☆☆☆★★          松江哲明        2007年

ようやく観ることができた。
大学のときに友達に誘われたけど、まだ松江さんも知らなかったし
なんかよく分からなかったので観に行かなかったのだ。
それを悔やんだ時はすでに遅い。釧路に赴任してしまってからは、
年に1週間だけ、それも池袋でしか上映されない映画を観るのは、
ほぼ不可能なことであった。

この映画、1と2に分かれていて、それぞれに違う童貞を松江さんが
「プロデュース」するという趣向。松江さんの指導はあくまで熱く、被
写体がカメラを構えているカメラマンからビンタされるドキュメンタリー
を私は他に知らない。そしてカンパニー松尾はすごく優しい…。
おもしろかった。でも1のほうがだいぶ良かったことを付記しておこう。
梅澤くんは強烈すぎた。やってることはみうらじゅんのエロスクラップ
に近いのだが、なんだか見てはいけないものを見ている気がした。
拾って来るっていうのがまたね…。

                                                                 9.11(木) 池袋シネマ・ロサ




2014年9月14日日曜日

リトル・フォレスト 夏・秋


☆☆☆★         森淳一         2014年

小森(=リトル・フォレスト)に住み、米も野菜も自分で作る「自
給自足女子」が主人公。いくら「一度都会に住んだ」という設定
があるにしても、橋本愛はちょっとシティガール過ぎるんじゃな
いか、と危惧していたわけで、やはりもう一つなじんでいない感
じがしてしまう。悪いけど。

もっと「人間関係」を前面に出して来ないと映画が成立しないの
ではと予想していたが、意外にもかなり原作通り、食べ物のエピ
ソードを並べただけという構成。逆に勇気があるぜと感心した。
そのへんは「冬・春」篇で展開してくるようだ。終わり方も次あり
きだったし。まあいちおう次も観ようかな。


それにしても橋本愛。今週の週刊新潮によれば、新橋ロマン劇
場の閉館を心から惜しんでラストの3本を観に行ったあげく、ロマ
ンポルノとピンク映画を観まくってて、好きな女優さんは芹明香
と宮下順子とどっかに書いたという記事には驚愕したが、この娘
は日本映画界の至宝になるかもしれないね。ガリレオなら「実に
素晴らしい」と言う所だ。女優たるもの、そうこなくちゃいけない。
きっと信用する映画評論家がいて、「日本映画史」の文脈で語ら
れる名作たちをどうしても観たくなったのだろう、と想像する。
私も大学生のとき、モルモット吉田さんのブログに登場する作品
が名画座でかかるたびに、一生懸命観たものである。ただ私は
その時もう18歳ではなかったけれど……。橋本愛はまだ18歳!
うーん。実に素晴らしい、のかホントに?
愛ちゃんは黒沢清の『ドレミファ娘の血は騒ぐ』はもう観たかな。
洞口依子が可愛いピンク映画の名作。

                                                     9.7(日) 渋谷HUMAXシネマ


2014年9月13日土曜日

ガントレット


☆☆☆        クリント・イーストウッド      1977年


監督・主演作のわりと最初のほう。
アウトローの警官役ということで、当然『ダーティ・ハリー』と比べられ
るのは織り込み済みだろう。完成度はあちらの方がだいぶ上だが。
「ある事件の証人をラスベガスからフェニックスまで護送する」という
何でもないはずの任務をサクッと遂行しようとするイーストウッドだが、
実はその証人がかなり「アブない」情報を持っていて、マフィアからも
警察からもさんざん追われまくり、彼らは何度も執拗に殺しにくる。
でもなんかいまひとつお粗末というか、緊迫感に欠けるのは気のせ
いか。最大の見せ場はラストの凄まじい銃撃シーン。ここを観るため
だけでも、この映画を観た意味はあった。

当時イーストウッドさんの愛人だった(らしい)ソンドラ・ロックをヒロイン
に起用するという豪快な公私混同をかましているのだが、アクションも
出来るし意外と悪くない。

                                                                9.5(金) BSプレミアム


2014年9月11日木曜日

【LIVE!】 相対性理論


回折Ⅰ

01. たまたまニュータウン
02. おとぎばなし(新曲)
03. キッズ・ノーリターン

04. (恋は)百年戦争
05. BATACO
06. 地獄先生
07. ジョンQ

08. Q/P
09. 人工衛星
10. YOU&IDOL
11. 気になるあの娘

12. 救心
13. 上海an
14. スマトラ警備隊
15. クリームソーダ(新曲)

アンコール
16. ロンリープラネット
17. LOVEずっきゅん

                               9/5(金) TOKYO DOME CITY HALL


『アワーミュージック』の時観て以来だから、4年半ぶりとなる。
釧路に居た間まるまる、ということか。
変化としては、やくしまるえつこ、心なしかボーカルが強くなっ
て安定感が増していた。そしてバンドにも"若干の"サービス
精神が感じられるようになった。各自のソロコーナーなんて昔
あったっけ?

半分は『TOWN AGE』から、あとの半分は昔のアルバムからま
んべんなく、というなかなか嬉しいセットリスト。昔の曲は「人工
衛星」「気になるあの娘」「(恋は)百年戦争」など、ドンピシャで
私の好きな曲をやってくれて喜びもひとしおである。久しぶりの
「LOVEずっきゅん」にも感激。あと登場曲がなぜか「千のナイフ」
だった。

演奏が凝ってたのは「キッズ・ノーリターン」。非常にカッコいい。
演奏後、例によってえつこ嬢はゆっくりとペットボトルの水を飲
んで、一息ついて、おもむろにマイクに近づき、

 「恋の死角にまわりこむ、相対性理論、回、折、1」

言い終わらないぐらいにカウントが始まっており、突入したのは
「(恋は)百年戦争」! これには感動した。バンドを知らないひと
にはまったく伝わらないと思いますけど、一応書きました。

ベストアクトは「キッズ・ノーリターン」。
「地獄先生」「人工衛星」もあらためて良い曲だと思った。


2014年9月8日月曜日

『こころ』 100年の秘密


テレビ番組をディレクターで観ることはほとんど無いが、

長嶋甲兵

というひとがいる。テレコムスタッフのディレクターだが、
実は私はこのひとのファンである。

最初にその存在を意識したのは、

「“虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」

という番組で、漱石の『虞美人草』の読書会を開いて、
文藝評論家やタレントや素人を集めて、分け隔てなく
うまく意見を引き出しながら、『虞美人草』に秘められた
謎の核心に迫る、という内容。そこで並み居る文藝評
論家やら小説家やらを相手に、涼しげに、しかしあくま
で理知的に司会進行をこなす楽しそうなディレクター氏
の様子に驚愕し、魅了されたわけである。

それからは「長嶋甲兵」の名前の付いた番組は見逃さな
いようにしてきたが、なんせテレビは映画と違って監督の
名前がなかなか表に出て来ないので、たぶんいくつか見
逃したと思う。昔は「名曲探偵アマデウス」とか「歴史秘話
ヒストリア」もいくつか作っていたらしい。私が観た中では
「明日へ -支えあおう-」も良かったし、「太宰治 短編
小説集」もこのひとがプロデューサーなのだ。

このひとは音楽も得意で、特に井上陽水と懇意らしく、「空
想ハイウェイ」シリーズとか、こないだもBSプレミアムで

「ドキュメント“氷の世界40年”
 ~日本初ミリオンセラーアルバムの衝撃とその時代~」

をやってちょっと話題になったし、

「世紀を刻んだ歌~花はどこへいった」

は色んな賞を獲った名作として、時々プレミアムアーカイブ
スで再放送されている。ちなみに「世紀を刻んだ歌Ⅱ」の
「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」もやっている。

このひとは詩もイケるらしく、

「詩のボクシング」

も数々の賞を受賞しているので私も再放送を待っているの
だが、まだ観ることができていない。


えー、なぜこんな話をしているかというと、今週水曜の番組に、
ものすごく「長嶋甲兵のにおい」のするものがあるからで、

漱石「こころ」100年の秘密
9月10日(水) 午後10時00分

という番組である。漱石の読書会というのは「“虞美人草”殺
人事件」と同じだし、小森陽一とか高橋源一郎という人選もそ
れっぽい。違ったらすいません。でも長嶋さんの番組だったら
きっと面白いと思うので、興味のある方はぜひ。
これが言いたかっただけなのである。

2014年9月6日土曜日

TOKYO TRIBE


☆☆☆★         園子温       2014年


このところ量産体制に入っているように見える園子温だが、1作
ごとに注ぐ熱量は衰えてはいないようだ。
「世界初のバトル・ラップ・ミュージカル」と銘打たれたこの映画、
観る前はとんでもない愚作だったらどうしようと密かに心配して
いた。でも蓋を開けてみれば、いつも通りバカバカしくも疾走感
に満ち満ちた、「園映画」と呼ぶより他ないものであった。

話の中身はほぼ無いに等しい。しかし物語の説明・進行の役割
を担いながら全篇を彩る「ラップ・ミュージック」がなかなかカッコ
よく、職業ラッパー達のクールさは分かるにしても、染谷くんが!
何でもこなすあの死んだ眼の青年のラップが、これなかなか乙
であった。
恒例になっている無名女優の起用も、今回は清野菜名さんとい
うらしいが、吉瀬美智子を若くした感じで可愛らしい。パンチラも
厭わずアクションに勤しんでらっしゃり、往年の満島ひかりを思い
出さずにはいられない。そしてまた『愛のむきだし』が観たくなって
くるのであった。なむなむ。

それにしても竹内力のセリフの聞き取れなさは異常だった。8割
以上何言ってるか分からないってヤバいんじゃないか。音声さん
のせいなのか、わざとなのか…。

                                                    8.31(日) 池袋シネマサンシャイン


2014年9月5日金曜日

愛のメモリー


☆☆☆★      ブライアン・デ・パルマ      1978年


「愛のメモリー」といっても松崎しげるとは関係ない。
原題は"OBSESSION"、つまり強迫観念ですか。
身代金目的で誘拐され、殺されてしまった妻と瓜二つの女性に
出会ってしまう男の話。

何とも気分の悪い話だね。
しかし最後まで緊張感を持って観ることができた。そこには手腕
を感じる。『キャリー』も観てみるとするか。

                                                                 8.23(土) BSプレミアム


2014年9月3日水曜日

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち


☆☆☆★★        ガス・ヴァン・サント     1998年


上質な人間ドラマという趣きで、「喧嘩っぱやい街のチンピラが実は
数学の天才」という突飛な設定も、うまく消化しており違和感はさほど
無い。マット・デイモン、ベン・アフレック、この秀逸な脚本を手がけた
若き二人の演技もナチュラルだし、先ごろ自死したロビン・ウィリアム
ズはさすがの名演。

観るまで題名の意味が全然分からなかったのだが、「ウィル・ハンティ
ング」というのが主人公の名前なのか。ウィルもハンティングも助動詞
と動詞にあるから紛らわしい。だから「旅立ち」と付けたのかな。それに
してもね。


全然関係ないけど、こないだ久しぶりに池袋のジュンク堂に行った。
各フロアの丁寧な陳列と圧倒的な物量を眺めているうちに、あれも読み
たいこれも読みたい、もう本だけを読んで1週間過ごしたいという、けっ
こう切実だが実現可能な欲望が頭をもたげてくる。夏休みは取らなかっ
たので、冬あたりに休みをとって、ほんとにそうしたいな。
「その1週間で読む本」を妄想するだけで楽しい。アーヴィングの新しい
やつ、ジェイン・オースティンの未読のやつ、漱石は『道草』だな、『族
長の秋』とか『白鯨』とか『花のノートルダム』とか『荒涼館』とか『挽歌』
とか『火山の下』とか『ピンチランナー調書』とか、長年わが本棚に鎮座
しているだけのやつらも読んであげたいし、山田宏一も四方田犬彦も
高島俊男も高峰秀子もミラン・クンデラもカズオ・イシグロもリルケもヘッ
セもまだまだあるし、たまには吉田修一も読んでやってもいいし、ドスト
エフスキー『未成年』もあるし、うーん、結局1週間じゃ全然足りんな。

                                                                 8.23(土) BSプレミアム


2014年8月31日日曜日

ホットロード


☆☆         三木孝浩        2014年


ひどいんだろうなと思って観に行くと、案の定であった。
覚悟して観たんだから文句を言う筋合いでもないか。

しかしこのひとは『ソラニン』からほとんど変わっていない。
まず最低限の辻褄は合わせて欲しいものである。暴漢に
襲われたときどうやって助けの電話をかけたんだとか、勝
手に家に入って来ていいのかとか、敵のアジトはなんで分
かったんだとか、どうやって先回りしたんだとか、細かい部
分がザルすぎてイライラする。

暴走族内部の力関係のことは私にはよく分からないが、新
しく族のリーダーになろうという男が、いたいけな中学生と付
き合っていても、それは別に威厳とかには関わらないのだろ
うか。何だか気になって仕方なかった。
別にロリコンが暴走族をやって悪いわけではないが、仮に私
が暴走族の下っ端で毎日こき使われているとして、新たにリー
ダーを襲名した男が中学生と付き合っていたら、なんかシラ
けるというか、やめたくなると思うが。
でもきっと、すれっからしとしか付き合わないはずの暴走族の
リーダーが、純真な中学生と付き合うという、そこがまさに原
作マンガの新しいとこだったんだろうね。失礼しました。しかし
ヤクザ映画は大好きなのに、ヤンキーの映画にちっとも面白
いものが無いのはなぜだろう。社会性が無いからだろうか。
能年ちゃんも、これに懲りたらヤンキー映画にはもう出ない方
がいいね。

                                                         8.21(木) 新宿ピカデリー


2014年8月24日日曜日

読んだ本②


『女体の森』
みうらじゅん リリー・フランキー 著    扶桑社

週刊SPA!の連載「グラビアン魂」、その7年半(!)にもおよぶ長
大な歴史からいいとこどりをした渾身の「グラビア論」である。これ
は一つの「達成」であり「金字塔」であって、もう後にも先にも、かく
もばかばかしい情熱をもって、のみならず、その情熱を"持続"させ
て、ただただ「女体」について語り続けた本は出ないのではない
か。大著ではあるが、個人的には必読の書と考える。

まあ色んなことに造詣が深いおふたりなので、笑っちゃうだけでな
くそれを通り越して感心してしまうことも多いのだが、ちょっと気に
入った部分を抜粋。話の流れとしては、グラビアのコにも彼氏が居
たりするかもしれないけれど、それはいたずらに羨ましがったり妬
んだりするものではない、というくだり。

リリー たとえば後輩の彼女に水着見せてって言っても、見せてくれ
     ないでしょ。でもグラビアのコは仕事とはいえ水着姿を見せ
     てるんですよ。となるとこれはもう、"ありがたい"なんですよ。
みうら 年取ると、その"ありがたい"という精神が芽生えてくるよね。
リリー 棟方志功が「ありがたやありがたや」って言いながら彫ってた
     じゃないですか。あれですよ。

ここで棟方志功がぱっと出て来る反射神経がもう最高である。










『いのちの食べかた』
森達也 著       角川文庫

食肉加工について、子ども向けに分かり易く書いている。ぼくたちが
食べる豚、牛、鶏の肉は、「どこで」「どのようにして」殺され、加工さ
れているのだろう、ということだ。子ども向けとはいえ森さんの「いつ
もの感じ」は消しておらず、周りに合わせず自分の頭で考えること、
自分で想像してみることが何よりも大事だ、と説く。こういう題材の
解説に、森さん以上の適任はいないだろう。
芝浦屠場の話から始まり、江戸時代の身分制度から被差別部落の
話にも当然なっていく。

森さんは『東京番外地』でも芝浦屠場に行っていたが、やはりドキュ
メンタリーにしたいと思って何度か通っていたらしい。しかし企画が通
らない、と。また言ってるよ、と森さんの読者なら思うだろう。まあ、森
さんらしいですよね。

装画は五十嵐大介。