2013年4月29日月曜日

冒険者たち


☆☆☆★★          ロベール・アンリコ       1967年

最初観たときから、なんとも名状しがたい不思議な魅力を感じ、
もっかい観たいと思っていた。念願かなって再見したわけだが、
記憶通り、ストーリーはたいしてよくできているとも思わないが、
やはり良い。この魅力は、陳腐な表現だが、「ロマン」、と言い
たい気がする。

この映画のもう一人の主役は音楽。独特のピアノの旋律が、
ロマンを掻き立てるよね。

                                                          4.24(水)  BSプレミアム


2013年4月25日木曜日

舟を編む


☆☆☆★★             石井裕也          2013年

出版社の辞書部門。話には聞くが、赤字が約束されている
ような部門を社内に抱え続けるのは、ひとえに利益を追求
するだけが出版社の社会的役割ではないという、ある種の
"矜持"が支えているとか、いないとか。

辞書好きの高島俊男先生にもぜひ観てほしい映画であった。
少し波乱はあったものの、おおむね順調に新しい辞書が作
られました、という話である。のみならず、単なる活字オタク
だった松田龍平は超美人の奥さん(宮﨑あおい)までもらう
のだが、あおいさんは現実感の薄い「できすぎた妻」を好演。
まあしかし、ぴったりな役を用意してもらった感は強い。

『川の底からこんにちは』には驚嘆し、迷わずその年のベスト
ワンを謹呈したものの、『ハラがコレなんで』にはワーストを進
呈したいほどの落胆を覚えた石井監督。演出に徹した本作だ
が、やはり実力は相当あるんだと思う。凡作にもなり得た本作
を救っているのは演出力だと思った。

池脇千鶴が最近役の幅を広げて成功しているのに対して、あ
いかわらず宮﨑あおいは聖女のような奥さんの役で、既存の
イメージを一歩たりとも逸脱することがなく、その点ではまった
く進歩が無い。だけど、可愛かったなぁ…。
『きいろいゾウ』で可愛さギネス記録を更新したあおいさんだが、
早くも記録を塗り替えたといっていいだろう。その可愛さは天井
知らずや~。

                                        4.14(日) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2013年4月24日水曜日

贖罪


☆☆☆★★        黒沢清        2012年

黒沢清によるWOWOWドラマ。
小学生のとき、同級生が殺された事件の犯人を目撃したことで、
その後の人生の歯車が微妙に狂っていく"女たち"、それぞれの
"贖罪"をテーマとした連作ドラマである。黒沢清が監督・脚本で
力いっぱいやったんだから、当然ながら高いレベルの作品に仕
上がった。それぞれが1篇の映画といってもよい出来である。
殺された少女の母親を小泉今日子が演じている。

第1話「フランス人形」
蒼井優と森山未來。全体を振り返ると、やはり一番デキがいい
のはこの回かな。人形しか愛せない男ってやっぱ森山未來の他
に考えられないもん。








第2話「PTA臨時総会」

小池栄子。好演だったが、話じたいはちょっと低調。








第3話「くまの兄妹」
安藤サクラ。相変わらずの怪演である。加瀬亮に向かって全速
で走っていくとこなんか恐いとしか言いようがない。








第4話「とつきとおか」
池脇千鶴。ここのところ池脇千鶴が良いんだねぇ。「ヤな女」の
役が増えてきてる気がするが。








最終話「償い」
ここで最初の「少女殺し」の謎が解き明かされる。いわば解決篇。
まあでも、謎解きじたいにはあまり興味も湧いていなかった。黒
沢清の演出をひたすら楽しむ連作ドラマという見方が正しいのか
どうか分からないが、そのようにしか見られなかった。

                                                                     4.6(土) DVD







2013年4月15日月曜日

ちかごろの読書⑤


『国境の南、太陽の西』
村上春樹 著    講談社文庫

新作に向けて気持ちを盛り上げるために(これ、どっかで聞い
たね)久しぶりに手にとった。札幌からの帰りの電車(4時間)で
一気読みを敢行。そしてあまりの面白さに、しばし虚脱感にとら
われる。
島本さんは雨の夜にやってくる。そして「僕」が店にいると、ピア
ニストは気を利かして「スタークロスト・ラバーズ」を弾くんですよ。
もうたまんないですよ、この世界。

たしかに最後のエピソードのせいで後味は悪いが、ああなるの
分かってたからこちらにも相応の覚悟ができており、心が自然と
防御態勢をとるという異様な読書状態であった。

少女のころ美しかったひとが、大人になってその輝きを失うという
挿話は最新作に通じるところもある。










『極北』
マーセル・セロー 著  村上春樹 訳  中央公論新社

新作に向けてさらに気持ちを盛り上げるために、去年の訳書まで
持ち出して春樹祭りを執り行なう。
なるほど訳者あとがきにあるとおり、意外感に満ちた小説であり、
一章先の展開がまったく読めない。なおかつ読者を先に引っ張る
力業にも優れている。質の高い小説、というのが最初の感想。
凍死するものが最後に感じるのは体が焼けるような「熱さ」である。
ほんとかね。


2013年4月13日土曜日

ちかごろの読書④


『マンスフィールド・パーク』
ジェイン・オースティン 著   中野康司 訳   ちくま文庫

さすがに2作続けて大長篇を読んだので、お腹いっぱいです。
が、大満足。ジェイン・オースティンはおもしろい!
ファニー、エドマンド、ミス・クロフォード、もうとても他人とは思えない。

しばらく間を置くが、いずれは残りの4作を読もうと思う。











『現代<死語>ノート』
小林信彦 著      岩波新書

無理に過去を美化しようとしない小林さんの文章には自然と
リアリティが宿る。
東京オリンピックは、東京に住む人間にとっては最悪だった、
という証言には内実がこもっている。











さて、春樹の新刊を読み終わったばかりだが、感想はどうしよう。



2013年4月11日木曜日

ジャンゴ 繋がれざるもの


☆☆☆★★★     クエンティン・タランティーノ    2013年

構造としては『イングロリアス・バスターズ』に似たものを感じた。
緊迫感の醸成の仕方や、それが弾けるときの映画的快感の作
りかたは、おそらく前回会得したものだろう。名人芸の域に達し
ている。
ある構造を借りて来て、そこに別な物を注入することで自分だ
けのフィクションにする。ある意味でタランティーノは村上春樹
と同じことをやっているとも言えるわけである。

ディカプリオは一世一代の超悪役をものにしていた。前回、一
世一代の悪役でアカデミー助演男優賞受賞のクリストフ・ヴァ
ルツは、一転して善人役。もちろん単なる善人などタランティー
ノ映画に出て来るわけはなく、歯医者を装った賞金稼ぎで、め
ちゃくちゃ腕は立つが、ちょっとお人好しなので善人に見える
だけである。

しかし165分もあったとは到底思えないな。
おそらく今年のベストワンだろう。

…いや待て、今年は宮崎駿の新作が控えている。
一騎打ちになりそうだ。

                                      4.6(土) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2013年4月9日火曜日

レザボア・ドッグス


☆☆☆★★★     クエンティン・タランティーノ    1991年

新作に向けて、気持ちを盛り上げるためとりあえず「レザボア」
を鑑賞。案の定、最高に盛り上がる。
シビれるポイントは枚挙に暇が無いが、今回は「ミスタ・ブロンド」
が警官の耳を切り落とす前に踊るテキトーなダンスにシビれる。
耳を切るのは『続・荒野の用心棒』へのオマージュでもあったの
だな。

「ナイスガイ・エディ」っていうネーミングも最高だよね。

                                                                3.29(金) Blu-ray Disc


2013年4月8日月曜日

突撃


☆☆☆★      スタンリー・キューブリック     1957年

こないだの『博士の異常な愛情』をきっかけに、キューブリックが
気になり出した。
本作は、塹壕の中で突撃命令を待つ兵士をカーク・ダグラスが
激励する移動ショットが有名な戦争映画だが、キューブリックは
当然単なるドンパチでは終わらせない。組織としての軍隊の硬
直性を痛烈に皮肉る「苦い映画」である。

                                                                       3.28(木) DVD


2013年4月6日土曜日

NINIFUNI


☆☆         真利子哲也       2011年

宮崎将、ももいろクローバー、ほか出演。

何が良いのやら、俺にはさっぱりだった

                                                           3.28(木) DVD


2013年4月5日金曜日

続・荒野の用心棒


☆☆☆★★      セルジオ・コルブッチ     1966年

原題は"DJANGO"つまり「ジャンゴ」。
タランティーノの新作"DJANGO UNCHAINED"はこの作品にオマージュ
を捧げたものとなる。当地では4/6(土)公開なので、まだ観ていないが…。
どうも西部劇とかマカロニ・ウェスタンって、自分で進んで観ようとは思わな
いんであるが、やっぱり名作とされているものはそれなりに面白い。
いや、「それなり」というより、かなり面白かった。

棺桶を引きずりながら荒野をゆく伊達男。彼の名は「ジャンゴ」。
70年代歌謡曲のようなメインテーマがバカバカしくて、切ない。

ちなみに『荒野の用心棒』とは関係ない、まったく独立した作品である。

                                                                           3.27(水) DVD


マグノリア


☆☆☆★★      ポール・トーマス・アンダーソン     1999年

寡作の巨匠PTAの有名作である。
「何かがある」という感じを画面にみなぎらせながら、思わせぶりに進行
していく映画なので、ノレないひとには辛かろうと思う。私は好きだがね。
ハスミンはきっと嫌いだろうな。

肝心のオチ(例の"雨"です)を既に知ってしまっていたのだが、非常に
楽しく観ることができた。「不吉さ」が「楽しい」というのも、映画ファンの
ある意味屈折した嗜好なんだろう。でもこの映画は楽しい…ですよね?
特にトム・クルーズ。大笑いしました。
このひとは風格のある映画を撮るよ。

PTAは新作『ザ・マスター』が公開中。
どうも好評とは言えないようだが、出張があれば観たいと思っている。

                                                                            3.26(火) DVD


2013年4月3日水曜日

恍惚の人


☆☆★★★       豊田四郎       1973年

『風と共に去りぬ』から一転、といっては失礼かもしれぬが、一転。
「恍惚の人」とはつまり今でいう「認知症」のこと。「介護」をめぐる
終わりのない苦しみを高峰秀子が耐え忍ぶ映画である。
救いの無い映画は観ていてツライものがある。

原作はご存じ有吉佐和子。脚本は松山善三。

                                                          3.24(日) BSプレミアム


2013年4月2日火曜日

風と共に去りぬ


☆☆☆★★★      ヴィクター・フレミング      1939年

高評価が続きますが。
こんなに名作ばかり観てたら当然か。

戦後、この映画を観て、戦争中にこんなん作ってる国と戦って勝てる
わけがなかったと改めて思った、というような文章を複数見た気がす
るのだが、誰だったか思い出せない。別に国力(軍事力)と映画を作
れる「余裕」とが直結するとは思わないが、鑑賞中、しきりとそのこと
を思い出してしまったのは、やはりこれだけの"絢爛豪華"な映画を、
1939年に作れてしまうアメリカという国の圧倒的な「パワー」に思いを
馳せずにはいられなかったからだろう。

スカーレット・オハラは決して万人に親しまれるキャラクターではない。
むしろこんなヒロインで3時間半もつのか、と思うぐらいだが、不思議
ですね。メラニーの人物造型も秀逸。

                                                                  3.23(土) BSプレミアム