2013年3月16日土曜日

ちかごろの読書③


『高慢と偏見』
ジェイン・オースティン 著   小尾美佐 訳   光文社古典新訳文庫

これは久々にまいった。
こんなに熱中させられるとは思わなかった。

当時のイギリスの身分制度は複雑で、本文を読んでも解説を読んでも
頭に入って来ないが、登場人物たちは「アッパー・クラス<上流階級>」
もしくは「アッパー・ミドル・クラス」ということになるらしい。
簡単にいえば、適齢期を迎えた美人姉妹の結婚をめぐる物語である。
舞踏会や午餐会で相手を見そめ、もしくは見そめられ、徐々に仲を深
めて、求婚されるのを待つ。それだけといえばそれだけの話。

しかしここには、ひたすら奥ゆかしい会話とダンスがあるだけで、現代
の恋愛小説家が使うことのできる「男女が仲を深める」ための<事件>
や<出来事>は何も起こり得ない。本屋で偶然同じ本に手を延ばすこと
も無ければ、悪漢に襲われそうになった女の子を助けることも無い(た
とえがベタすぎ?)。最初から最後まで読んでも、登場する若い男女は、
会話を交わすか、ダンスを申し込むことしかできないのである。あとは
せいぜい相手の表情や仕草から何かしらの意味を読み取るぐらい。
手紙はよく書いているが、親族や友達に書くだけで、恋愛相手には書
いていない。
この条件下で恋愛小説を書くのは難しいと思うよ。それがまた、いやに
なるくらい面白いからこれ不思議であることよ。

なるほどこれが漱石や丸谷才一のことを言うときによく言及される「イギ
リス式の小説」というやつなんだな。しばらく、オースティンにハマるかも
しれない。というか実はもう『マンスフィールド・パーク』を読んでいるとこ
ろである。









『お言葉ですが… 別巻②』
高島俊男 著       連合出版

中の一篇「宋江實録」、こういうのが高島さんの真骨頂だと思う。
宮崎市定、フルボッコである。
ほら、僕らがむりやり読まされた(失礼!)『論語』の訳者ですよ。




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