2013年2月25日月曜日

脳男


☆☆★★★        瀧本智行       2013年

レイトショーで鑑賞。観客は私を入れて5人。
冒頭にグロいシーン持ってくるもんだから、うしろの大学生カップル
が引いてたよ。

こういうサイコキラーものも、だいぶやり尽くされてきた感があるの
は制作側もわかっているらしく、なるべく多く工夫を詰め込んで、新
しいものにしよう、筋書きを読めないものにしないようにしよう、とい
う努力の跡はうかがえた。でも原作あるから、努力したのは小説家
のほうか?

しかしその工夫が功を奏したとは言い難いね。
ダメだった点はいろいろあるが、ネタバレせずには説明できないの
で、やめておこう。何より罪が重いのは、二階堂ふみの魅力をちゃ
んとフィルムに焼き付けていないことだ! 松雪泰子なんかどうでも
いいんだよ。
最後の病院の対決シーンもなぁ…。だから前も言ったけど、『羊たち
の沈黙』以降、すべての変態殺人者にはひとしくレクター博士なみ
の(以下略)…。そこんとこよろしく。

                                           2.18(月) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2013年2月24日日曜日

喜劇 女は度胸


☆☆☆        森崎東        1969年

いやはや、暑苦しい映画だね。
ある勘違いが生む「すれ違い」が物語の肝なのだが、ゲーテの
詩集を使ったその過程にいかんせん説得力がない。肝心の「す
れ違い」がアホらしいので、どうも映画全体がバカバカしく見えて
くる。役者が汗をかきかき熱演すればするほどに。

騒々しいドタバタ劇の後、ちょっとしたどんでん返しがあり、それ
はなかなか工夫されていておもしろかった。渥美清の怪演もある。

女優としては、倍賞美津子。
当時23歳、ピッチピチの新人である。「女は度胸」の主役に抜擢
されるだけあって、なるほど肝の据わった演技をしていた。

                                                             2.18(月) BSプレミアム


2013年2月23日土曜日

トイレット


☆☆☆★★      荻上直子       2010年

これは思わぬ快作だった。

荻上監督。『かもめ食堂』はおもしろかったけど、その後「めがね」
とか「トイレ」とか言い出したので「ふーん」と思って追いかけていな
かった。迂闊だったぜ。こういう映画を撮れるひとだったとは!

この作風は、どういえばいいのかなぁ。
カウリスマキのような、ウェス・アンダーソンのような、家族がみんな
ヘンという意味では『リトル・ミス・サンシャイン』のような…。

しかしこれも山田洋次セレクション。セレクトされた中ではもっとも
新しい作品である。たしかに何度もクスリとさせられるし、「家族」の
映画でもある。今でも新しい映画をちゃんと観ているんだなぁと恐れ
入った。

                                                                  2.17(日) BSプレミアム


2013年2月20日水曜日

きいろいゾウ


☆☆☆           廣木隆一           2013年

正直いって事前の期待は薄かったが、廣木さんは好きな監督だし、
あおいさん「主演」だし、釧路でもやってるし、いちおう観ないわけに
いかんでしょーが!

始まって15分でほぼ興味を失いかけるが、途中2回あるあおいさん
の"プチ濡れ場"でハッと覚醒。覚醒はするが、この夫婦の話に興味
を持続させるのは難しい。まあ要するに、つまんなかったです。

とはいえ、あおいさんの可愛さは、今までで最高かもしれない。前述
のように"プチ濡れ場"はあるし、あおいさんを堪能するという目的だ
けなら、観て損はないといえるかもしれない。服装面でいうと、「ツマ」
であるあおいさんは、作家である「ムコ」(向井理)と田舎でLOHAS
な生活をしているので、Earth, music & ecologyっぽい服をいつも着
ているのだが、これが当然可愛い。のみならず、パジャマや、果ては
喪服まで着てくださるのだが、これまたとんでもなく可愛い。

しかし向井理はまだ全然下手で、演技力の格差婚というものがある
とすれば、本作の夫婦のことだろう。あおいさんはさすがに巧い。彼
女が見せ場でビシッと決めると、すかさず続けて向井さんがずっこけ
させてくれる。まあキャリアが違うからしょうがないけど。ミスキャスト
だね。

                                            2.16(土) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2013年2月19日火曜日

神様のくれた赤ん坊


☆☆☆         前田陽一        1979年

押し付けられた小学生の子ども(だから"赤ん坊"ではないが…)
をめぐる中国地方、九州のロードムービーになっている。無気力
な渡瀬恒彦が良い感じだが、桃井かおりは、まあ、いつものあの
感じ。

                                                               2.5(火) BSプレミアム


2013年2月17日日曜日

バグダッド・カフェ


☆☆☆★★      パーシー・アドロン      1994年

私が観たのは<ニュー・ディレクターズ・カット版>というやつ。
オリジナルを観てないので何ともいえないが、けっこうな数の
カットが増えているらしい。

主演はマリアンネ・ゼーゲブレヒトというひとで、言ってみれば
単なるおばさんである。渡辺えりが主演するようなもの、といえ
ば話が早いか。とにかくこのおばはんと、"I am calling you"と
歌いあげる劇中歌が印象に残る映画である。

またタイトルが良いね。バグダッド・カフェ。いろいろイメージを
かきたてるものがある。劇中では"Out of Rosenheim"と出た
けど、そっちが原題で「バグダッド・カフェ」は邦題なのかな。

                                                                   2.5(火) BS 12


2013年2月16日土曜日

ちかごろの読書


『横道世之介』
吉田修一 著    文春文庫

文庫になったので、いそいそと読む。

一読、うーむ。こういう感じじゃないんだよねー、という、
漠然とした不満。ストレスなく文章を読み進められる貴重
な(存命の)小説家なので、頑張ってほしいのですよ。
ハッキリ言おう、内容薄くねぇ?

映画がもうすぐ公開だそうで。監督は『南極料理人』の
沖田修一。あまり期待できないなー。観るには観るが。











『春、バーニーズで』
吉田修一 著    文春文庫

これもなー。「最後の息子」のその後、かい。
アッサリしすぎてて、読んだそばから消えてなくなっていくよ。

2013年2月9日土曜日

東京家族


☆☆☆★★★            山田洋次          2013年

さすが山田洋次。見事。
と、思いましたけどね、私は。

『東京物語』を観てから行ったほうがよりおもしろいのは確かだが、
別に観ていなくても、一本の映画として、良作ひしめく山田作品の
中でも出色である。特に、山田作品のウェットな人情というか、日
本映画特有の湿度の高い感じというか、まあ要するに「寅さん」が
好きなひとは好きになるんじゃないでしょうか。乾いたオフビートな
ものしか認めないひとには耐え難い世界だろう。

特筆すべきは当然、『東京物語』では戦死して居なかった昌次(妻
夫木聡)という人物を創作したこと。このフラフラしている末っ子とい
うのが、個人的にも非常に親近感あり。そしてすごくうまくいってる
んじゃないかなぁ、と僕は思うなぁ(山田洋次風に)。
蒼井優も、おいしい役を実においしく「ごっつぁんです!」という感じ
で見事にものにしていた。あんなおいしい役を作ってあげるなんて、
山田監督は蒼井優が大好きなんだね。俺も負けないくらい大好き
ですよ。

                                         2.3(日) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2013年2月8日金曜日

とんかつ大将


☆☆☆          川島雄三         1952年

白黒の、50年代の映画を観てると落ち着くようになったのは、
完全に山田洋次のせい。もとい、おかげです。

いまの映画は、カラーなのはもちろん、音だって照明だって
カメラだって、もう信じられないぐらい進歩してきたはずなの
に、じゃあ信じられないぐらい映画がおもしろいものばかりに
なったかというと、まったくそんなことはなく、未だにおもしろ
い映画とゴミのような映画とが競って作られているわけで。
その比率は50年代よりも良くなっているんだろうか。まあ当
時だってゴミのような映画はたくさんあっただろうからね。
そのへんのことは小林信彦先生に聞くしかない。
文春の連載で小林先生、本作を取り上げていた。当時はタ
イトルだけで観る気がしなかった、と。たしかにそうだ。

                                                    1.24(木) BSプレミアム


2013年2月5日火曜日

馬鹿まるだし


☆☆☆★★         山田洋次        1964年

「無法松の一生」を下敷きにした、荒くれ者と美人の奥さんの
悲しい恋の話。山田洋次、若い時の監督作だが、若い時から
ツボを押さえとるね。
ハナ肇の毎度張り切りすぎの演技には、ちと閉口させられるも
のの、細部まで行き届いたおもしろい映画である。

女優は、桑野みゆき。このひともめちゃくちゃ可愛いね。
『兄とその妹』に出ていた桑野通子の娘さん。

ハナ肇が桑野みゆきを「ご新造さん」と呼ぶのが、私には耳慣
れなかったのだが、もともとは武士の奥方のことをこう呼んで
いたらしい。明治期には良いとこの若奥さん全般にも使うよう
になった、とのこと。時代劇では普通なのだろうか。時代劇あん
まり観ないからな。参考までに。

                                                        1.20(日) BSプレミアム


2013年2月4日月曜日

キル・ビル


☆☆☆★     クエンティン・タランティーノ      2003年

実は初見。
観なくてもだいたい想像がついたので、今まで食指が動かなかった。
観てみると、やっぱりほぼ想定の範囲内。
「おっ」と思ったのは、栗山千明ぐらいか。良い表情してた。

それはそうと、釧路でもタランティーノの新作「ジャンゴ・アンチェイン
ド」をやることが決定! 全国公開からはなぜか1か月遅れだが、ま
あ仕方ない。気合い入れて観るぜ。

                                                                 1.13(日) Blu-ray Disc


2013年2月3日日曜日

東京キッド


☆☆☆             斎藤寅次郎              1950年

美空ひばりの主演作。
「♪ 右のポッケにゃ夢がある~」の歌が有名である。

前作『悲しき口笛』の曲(「♪ 丘のホテルの赤い灯も~」)も
何度も出てくる。
ストーリー上、親代わりとなる川田晴久はひばりの本当の師
匠とのこと。ふたりで流しの歌手としてクラブをまわるシーン
が楽しい。

花菱アチャコ、エノケンの怪演もあり。堺駿二も出ている。誰
かというと、マチャアキのお父さんである。感動的に似ている。
正直いうと私はマチャアキが二世タレントだとは知らなかった。

                                                        1.12(土)  BSプレミアム


2013年2月2日土曜日

野性の証明


☆☆★★★      佐藤純彌       1978年

どうしてこう大味なんだろうなぁ。
撮影現場でも心あるスタッフは「いやぁさすがにこれは
おかしいだろ(笑)」と思ってるはずだが。「原作者に怒ら
れねーか」とかね。

                                                          1.12(土) BSプレミアム