2013年12月31日火曜日

もらとりあむタマ子


☆☆☆★★       山下敦弘      2013年


帰省してとりあえず何か一本、と思ってこれに。
甲府の実家でぐうたらしている女の子の役を前田敦子。
出づっぱりの主演だが、とても良い。写真屋の息子と
ともに、かなり笑わせてもらった。周りも笑ってた。
年の最後に良い映画を観たぜ。


そんな年の瀬に飛び込んできた大瀧詠一の訃報…。
信じられない。ほんとに信じられない。
秋にはまだFMで「アメリカン・ポップス伝 PART.Ⅲ」を
やっていたのに。私は大瀧さんのラジオでの喋りが好き
だった。洒脱で、都会的で、恐るべき博識なのだが、決し
て押し付けがましくならない。あれがもう聞けないと思うと
寂しいぜ。
真にポップス界の巨星と言えるひとだった。
「A LONG VACATION」や「EACH TIME」ももちろん
素晴らしいが、アイドルを中心に色んなひとに提供した曲
もまた素晴らしく、「作曲:大瀧詠一」のクレジットがある曲
を探してずいぶん聴いた。
松田聖子のアルバム「風立ちぬ」のA面5曲をプロデュー
スしていて、これを聴くだけでも大瀧詠一のメロディの独特
さ、ナイアガラ・サウンドの魅力が分かるというものだ。

そんな2013年。今年観た映画は104本。

                                            12.29(日) 渋谷シネパレス


風の谷のナウシカ


☆☆☆☆        宮崎駿      1984年

去年もクリスマスイブは休みで家に居て、「北の国から
 '98 時代」を見て終わった覚えがあるが、今年も休み
とはな。ナウシカとNHKスペシャルをいくつか観ていたら
もう深夜だった。

小さい王蟲を囮にしてるペジテの奴らの若い方が、捨て
身で飛び込んでくるナウシカを見て「ラステル様!」って
言ってるんだね。初めて気づいた。

特典の、鈴木敏夫と庵野秀明の対談がおもしろかった。

                                             12.24(火) Blu-ray Disc


2013年12月23日月曜日

年末の読書②

『死刑』
森達也 著     角川文庫

著者いわく「死刑をめぐるロードムービー」。
著者自身である「僕」は考え、悩み、ひとの意見を求め、現場
に足を運び、死刑囚に会い、そしてまた考える。少しずつ着実
に、思考のレベルを上げていくのだ。しかし、死刑をめぐる道
ゆきに終りは無い。

読み終わってむしょうに『夏の流れ』が読みたくなって、近くの
本屋で探すも、まあ、有るはずもなく。ちーん。だいたい講談社
文芸文庫のコーナー自体がほんとにちょこんと、40cm幅ぐら
いしか無いんだもん。そりゃ有るはずねぇわ。今度札幌行った
ときに買おう。

丸山健二の芥川賞受賞作『夏の流れ』は、高校の時に現代文
の授業で読み、感想を書かされて以来いちども読み返していな
いが、印象は強烈である。私は当時、ニュースステーションで
見た本村洋のたたずまい(と鋭い舌峰)に衝撃に近いものを受
けていたので、そのことを書いたと記憶している。
本書には本村洋とのメールのやりとりも引用されている。









『阿寒に果つ』
渡辺淳一 著     扶桑社文庫

あの渡辺淳一の本を読む日が来るとは思わなかったが、この
小説だけは、釧路や阿寒が登場することと、夭逝の(自死した
人間にもこの表現を使っていいのかどうかは分らないが)少女
画家がモデルということで、以前から気になっていた。買って
3年ほど本棚で熟成させたわけだが、このたびふと手に取って
読んでみると、これがなかなかおもしろい。文章はまったく巧い
とは思わないが、やはり題材が鮮やかだし、いちいち細部がよ
く描けている。まあ実際にあったことがほとんどだからもしれな
いが。
加清純子(というのがモデルになった少女画家の名だが)という
ひとは興味深いね。他にも本があるようなので、読んでみようと
思う。画集も見たい。


2013年12月22日日曜日

LOVE LETTER


☆☆☆★★★       岩井俊二      1995年

う~む。観終わって俺は唸ったね。
これが長篇映画デビューとは恐れ入る、というぐらい巧い。

大学院のとき、研究室を抜け出して名画座で観て以来、
久しぶりに観たけど(通算すると4度目ぐらい)、今回がい
ちばんおもしろかった。
冒頭の雪上に寝ている中山美穂の横顔から、起き上がった
彼女をとらえながらのズームバックでそのまま小樽の街が見
えるところまで長回しなんていうのはもう、「摑み」として非常
にオシャレなんじゃないでしょうか。随所にキラリと光る工夫
が凝らされていて、恋愛映画はたいていかったるいと思って
いる筆者だが、まったく長さを感じない。

                                                     12.10(火) BSプレミアム


2013年12月18日水曜日

年末の読書

『新樹の言葉』
太宰治 著      新潮文庫

「葉桜と魔笛」という短篇、タイトルだけは前から知っていて、
そのどことなく甘美な響きからどんな短篇なんだろうとあれ
これ想像してはいたのだが、良い短篇ですねぇ。巷にあふれ
ている難病ものの映画なんかよりずっと切なく胸が締めつけ
られるようである。

他にも「花燭」「新樹の言葉」「愛と美について」「誰も知らぬ」
など。「愛と美について」なんて、どんだけ巧いんだあんた!
と詰め寄りたいぐらい巧い。そして「春の盗賊」には爆笑。
泥棒相手に説教する話なのだが、最高。









「イエスタデイ」
村上春樹 著     文藝春秋新年号

「女のいない男たち2」というサブタイトルは、これが連作短篇
であることを意味していよう。ヘミングウェイに同じタイトルの
短篇集があるのですね。知らなかった。

今回は、「イエスタデイ」に関西弁の歌詞をあてて風呂場で歌
う男の話である。やはり三人称でリアリズム。2作目も良い感
じ。この路線、けっこう好きかも。

また立ち読みで済ませてしまった。
実は週刊文春、ちかごろの中国・韓国への攻撃的・挑発的な
記事に嫌気がさして買っていない。低級な雑誌に成り下がった
感が否めないので、しばらく買い控えることにする。しかしたく
さん読んでいるコラムがあるので、仕方がないからぜんぶ立ち
読みしている。すごく時間がかかる。でも買うのは癪だからしょう
がない。

2013年12月15日日曜日

【LIVE!】 山下達郎

  PERFORMANCE 2013

01. 新・東京ラプソディー
02. SPARKLE
03. LOVE SPACE

04. ずっと一緒さ
05. あしおと
06. ひととき
07. スプリンクラー
08. PAPER DOLL
09. FUTARI

10. God Only Knows (The Beach Boys Cover)
11. Groovin' (The Young Rascals Cover)
12. 光と君へのレクイエム
13. My Gift To You (Alexander O'Neal Cover)

(アカペラコーナー)
14.Berra Notte
15.Have Yourself A Merry Little Chiristmas (Judy Garland Cover)

16. DANCER
17. 希望という名の光(+今日をこえて)
18. メリーゴーラウンド
19. LET'S DANCE BABY~硝子の少年~アイ・ガット・ア・ウーマン
20. アトムの子 (+アンパンマンのマーチ)
21. LOVELAND ISLAND

-Encore-
01. クリスマス・イブ
02. RIDE ON TIME
03. 愛を描いて -LET'S KISS THE SUN-
04. YOUR EYES

                                                    11.30(土) ニトリ文化ホール


あちらがタヌキ親父なら、こちらは「早口おやじ」か。
3時間半のライブ、堪能いたしました。素晴らしすぎます。

一昨年、ライジングサンで初めてライブを観ていたく感銘を受
け、いや、とまれ、これは"夏フェスで達郎"という特殊な環境
に依存するものかもしれんと、去年、確認のために帯広で単
独ライブを観て、あらためて圧倒され魅了され、これなら札幌
まで観に行ってもいい、という確信を深めたので、この度ほん
とに観に来た、というわけである。

この間、アカペラアルバム以外ほとんどのアルバムをそろえ、
勉強を重ねた結果、カバー曲以外はすべて知っていたという
のは良かったことよ。

とにかく最初の3曲がカッコよすぎて、永遠に聴いていたかった。
と言いつつ、ベストアクトは
「スプリンクラー」
「PAPER DOLL」
で迷う。PAPER DOLLの達郎のさりげないカッティングからの
始まりには鳥肌が立ったが、それ以上にスプリンクラーの歌唱
は素晴らしかった。
ということで、「スプリンクラー」に決定!

2013年12月13日金曜日

夢と狂気の王国


☆☆☆★         砂田麻美        2013年


『エンディングノート』の砂田麻美が、『風立ちぬ』と『かぐや姫の
物語』を製作中のスタジオジブリに潜入する。そんなおいしい状
況なら、そのへんのものをテキトーに撮っても面白いものに成り
そうだね、なんて言っちゃいけない。

ジブリといえば私はかねがね、あのいかにも扱いにくそうな監督
(それも二人も、だ!)を、ほいほいと転がして映画を作らせている
プロデューサー・鈴木敏夫という人間が、どう見てもいちばん「悪い
奴」だと思っていたので、もしあいつの内面に迫っていたら、これは
相当に見応えがあるかもしれない、と思っていた。

結果的には、鈴木敏夫のタヌキ親父っぷりよりも、とりあえず事務
スタッフの三吉さんの可愛さから目が離せなかったわけで、ワンカッ
トでも多く三吉さんが登場するように願ったほどである。『かぐや姫』
の完成がまったく見えて来ない焦りの中で、移動中の車内、鈴木敏
夫が「高畑さんは映画を完成させたくないんだよね。宮さんは少なく
とも完成させたがるからずっとラクだ」みたいなことを言っていたの
が印象的だった。

カメラの前で饒舌をふるう宮崎駿のサービス精神にも感心するが、
そのへんはNHKの番組でも見ているので、さほど驚きはない。しか
しよくあんな環境で仕事ができるよね。カメラに見詰められながら
仕事をするというのは、どういう心境なのか考えてしまう。

「ジブリにしのびこんだマミちゃんの冒険」

この宣伝文句も鈴木敏夫が考えたっていうじゃないですか。
みんな転がされてるんだ、タヌキ親父に。

                                                         12.1(日) シネマフロンティア


2013年12月4日水曜日

死刑弁護人


☆☆☆★★       齊藤潤一     2012年

世に弁護士は何万人と存在しているというのに、なぜ死刑
が絡むような、世間の耳目を引く事件の弁護はいつも安田
好弘なんだろう。と、ちょっとでも不思議に思ったことのある
ひとは、観るといいかもしれない。なるほど、と思うかもしれ
ないし、思わないかもしれない。
私にはけっこう興味が尽きないドキュメンタリーであった。
私はお人好しが主人公の映画だと点が甘くなるのかもしれ
ないな。

とりあえずこれで、100本目! ありがとうありがとう。

まだひと月以上を残しての、いうなれば"余裕の"達成であ
る。これもひとえに、わたくしも社会人4年目となり、ますます
「時間の使い方がうまくなった」ことの証左にほかならず、決
して今年が「暇な一年だった」ということを示すものではない
事は、あえて強調するまでもないだろう。ないよね!

                                                    11.25(月) BSプレミアム


2013年12月2日月曜日

キャリー


☆☆★★★      キンバリー・ピアース     2013年

普通をちょっと下回るぐらいの出来かな。
一応ホラー映画、なのか。まったく怖くないが。

今回クロエちゃんは徹底的にいじめられる役だが、やはりという
べきか、『キック・アス』のヒットガールのイメージが強烈なので、
キネ旬にも誰かが書いていたが、
「本気で戦ったらお前がいちばん強いだろ!」
というツッコミが常に頭を去らない。これはけっこう気が散ります。

最近新作映画にハズレが多い。
そんなこんなで、99本目。

                                                   11.24(日) イオンシネマ釧路


2013年11月30日土曜日

かぐや姫の物語


☆☆☆        高畑勲       2013年

初日に鑑賞。
予告を観るかぎりでは、俺の好きな感じじゃないなぁ、と思い
ながら観に行ったのだが、その種の予感はたいてい当たるも
ので、私には眼前を綺麗な映像が通り過ぎていくだけの作品
に思えた。

たぶん高畑監督は、根本の部分が「真っ当」なんだと思う。
ストーリーや発想はいつも奇抜だし、ディテイルに凝っている
ことも分かるし、実際見事なものだ。しかし、いかんせん、心
に引っ掛かって来ない。
あるいは印象批評に過ぎるのかもしれないが、137分のこの
映画を全部観ても、『風立ちぬ』で、列車で飛ばされた帽子を
返しに来た菜穂子と二郎が、ヴァレリーの詩で心を通わせる
たったのワンシーンほどにも心がざわつかないのである。
それってどうなの、と思ってしまう。

                                              11.23(土) イオンシネマ釧路


2013年11月28日木曜日

夏の終り


☆☆☆        熊切和嘉        2013年

ふーむ。
妻子ある作家(小林薫)と、幼馴染の青年(綾野剛)との間
を、昭和初期の女性としてはたぶんかなり「奔放に」行き来
する女(満島ひかり)の話なのだが、うーん。どーも。
なぜいまこの話なのか。いまいち必然性が感じられない。
満島ひかりを色っぽく撮るために昭和初期なんだ!という
のなら許すが。

実はもう97本目(!)。今年の達成はもう時間の問題である。
なんかすいません。

                                               11.17(日) イオンシネマ釧路


2013年11月26日火曜日

悪の法則


☆☆☆      リドリー・スコット      2013年

あの忘れがたい映画『ノーカントリー』の原作者である
コーマック・マッカーシーという人が書いた本作の脚本を、
みんなが映画化したがったが、権利を得たのはリドリー・
スコットだったということらしい。

メキシコから巧妙に麻薬を輸入するワルたちの話で、この
手の話は既にさんざっぱらヤラれ尽くしてるような気もする
が、"犯罪映画"というだけでやっぱり、いそいそと映画館に
出かけてしまうのである。我ながら良い客だ。

全体を流れるドライな感じが好ましいし、スタイリッシュなカ
メラワークがかっこいい。しかしワクワク感は宙吊りのまま、
30分経っても50分経っても、説明不足で一向に話が見えて
来ない。俺、何か重要な伏線とか説明を見逃したんだろう
か、と不安を抱えたまま展開はどんどん進んでゆき、まあ
さして驚きは無い結末を迎えたのであった。
ああ、ペネロペ・クルス。あのDVD-R、観たいような観たく
ないような。

画像は悪い顔したハビエル・バルデム。
もっと悪い奴かと思ったのに、たいしたことなかった。

                                            11.16(土) イオンシネマ釧路


2013年11月24日日曜日

中島みゆき 『夜会VOL.17 2/2』 劇場版


☆☆★★     

  出演・プロデュースほか 中島みゆき      2013年

個人的に今年は非常に熱心に中島みゆきを聴いた年だった
ので、さて「夜会」とはどういうものなのだろうかと興味が湧き、
観に行ってみた。

ははぁ。
歌とジェスチャーだけで物語を語ってゆく、わたしには理解の
及ばない世界だったが、まあ好きなひとにはたまらんのだろう。
私は歌を聴いてるだけでいいや。
しかし中島みゆきのライブには行ってみたいと思い続けて何年
も経つが、いまだ実現せず。

                                         11.13(水) イオンシネマ釧路


2013年11月23日土曜日

あの夏、いちばん静かな海。


☆☆☆★★★        北野武       1991年

素晴らしい。
何度でも、声を大にして言おう。
この頃のたけし映画はほんとうにすごいのだ。
なんか心地良いんだなぁ、このリズムが。

                                                                11.12(火) HBC


2013年11月19日火曜日

男はつらいよ 望郷篇


☆☆☆★★        山田洋次      1970年

『男はつらいよ』第5作。
傑作といわれているだけあって、なるほど中身が濃い。

一度カタギになって、「額に汗して働く」決心をした寅さんだった
が(もうこの時点でそうとう可笑しい)、長山藍子にフラれ、結局
またフーテン生活に逆戻り。最後は舎弟の昇と海で戯れるシー
ンで終わる。ほんとはこれでシリーズも終わりにするはずだった
という。

                                                          11.12(火) BS JAPAN


2013年11月17日日曜日

天空の城ラピュタ


☆☆☆☆           宮崎駿         1986年

ブルーレイで観てもやはり最高である。
画質の違いは正直わからなかったが、
後輩よ、貸してくれてありがとう。

今回はポムじいさんに泣けた。
「はて、パズーによく似た子鬼だ」

                                            11.5(火) Blu-ray Disc


素直な悪女


☆☆☆★       ロジェ・ヴァディム      1956年

ブリジット・バルドー、いわゆるBBですね。

本来「悩ましい」というのはこの映画におけるBBのようなことを
いうのであって、未解決の問題が山積していてどっちに舵を
切ればいいのか「悩ましい」などと書くいまの使い方は誤用だ、
と嘆いていたのは小林信彦だったか。小林先生はBBではなく
「オレンジのビキニを着てプールからあがってくるハル・ベリー」
を例に挙げていたと記憶しているが。

弟の嫁さんがブリジット・バルドーで、さして広くも無い家でひと
つ屋根の下暮さなければならないとしたら、それはもうかえって
地獄だろうね。困ったものだ。

                                                                   11.5(火) BS 11


2013年11月14日木曜日

秋の読書④


『暴力団』
溝口敦 著      新潮新書

ヤクザ映画もマフィア映画も、犯罪映画全般が好きなので、
前から興味はあった。
暴力団員はふだんは何をしているのか、どうやって収入を
得ているのか、組に属するというのはどういうことなのか、
などなど、「知りたいこと」をとても平易な文章で解説してく
れている。過不足なく。

読んでると「仁義なき戦い」が観たくなってくるぜ。








「ドライブ・マイ・カー」
村上春樹 著      文藝春秋12月号

本屋での立ち読みで済ませてしまった。86枚だから読め
ちゃいました。文春さんすいません。最近380円の価値は
無い「週刊文春」を毎週ちゃんと買っているので許してくだ
さい。

なかなか「読ませる」短篇だった。
三人称でリアリズムという最近の傾向だが、これまでの
どの短篇にも似ていない、しかしそれでいて村上春樹で
しかあり得ない、良い感じだったと私は思います。
新境地、とまでは言わないが、春樹がまた新しい方向に
向かっていることが実感できるのはファンとしてはまこと
によろこばしい。



2013年11月12日火曜日

男はつらいよ フーテンの寅


☆☆☆          森崎東       1970年

『男はつらいよ』シリーズ3作目。
見慣れた「寅さん」に比べると、ドタバタが多く、ひとつひとつ
のカットが短い。演出と編集でここまで変わるのかと思うほど
だが、なるほど『喜劇 女は度胸』の騒々しさを思い出した。
まあ山田洋次の寅さんとは別物だと思えば特段、論難する
こともなかろう。元気のいい渥美清が見られる。

                                                       11.4(月) BS JAPAN


2013年11月6日水曜日

秋の読書③


『パン屋再襲撃
村上春樹 著    文春文庫

帯広からの帰りであった。
カバンの中に電車で読むものが何も無いことに気付いて
恐慌に襲われ、街の本屋でいろいろ迷った末に、なぜか
『パン屋再襲撃』に落ち着いた。「ファミリー・アフェア」が
大好きなのと、「象の消滅」をもっかい読みたかったから。

しかし「ファミリー・アフェア」はなんで読んでてこんなに楽し
いんだろう。春樹も楽しんで書いているのが伝わってくる
からか。










『きりぎりす』
太宰治 著    新潮文庫

読んでないやつならなんでもいいやと、適当に選んだわけだ
が、本作には太宰が得意とした「女性の告白体」の小説が
多く収められている。有名な「女生徒」は入っていないけれど。

いやぁ、堪能しました。お見事。どれもよかったなー。
特に選ぶなら「皮膚と心」「千代女」かな。「善蔵を思ふ」も、
最初と最後のバラのエピソードが印象に残る。「畜犬談」も
可笑しい。最後は、ぞっとするような「水仙」と「日の出前」で
締めくくられている。あんまりおもしろいもんだから、あっと
いう間に読み終わってしまった。

しかし、かなづかいが気になる。
全集以外で、正かなづかいで太宰が読める本は無いのかな。



2013年11月4日月曜日

居酒屋兆治


☆☆☆★        降旗康男       1983年

函館が舞台の映画って多いね。

高倉健と大原麗子の時代がかった純愛が本筋なのだろうが、
サイドストーリーというのか、本筋以外のところがいろいろと
とっ散らかって、なんだか散漫な印象。加藤登紀子って、普通
に出てたけど、そういうひとだったっけ。

健さんの店「兆治」は料理もうまそうで、ちょっと行ってみたい
と思った。伊丹十三が居るときは行きたくないが。

しかし大原麗子ほど「男を狂わす(もしくは男が勝手に狂う)女」
が似合う女優もいないという気がする。いったい、あの潤んだ目
は何だ。けしからん。

                                                 10.26(土)  BSプレミアム


2013年11月2日土曜日

秋の読書②


『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」
と叫ぶ人に訊きたい』
 正義という共同幻想がもたらす本当の危機

森達也 著    ダイヤモンド社

タイトルに引っかかった。
森さんが何を「訊きたい」のかが気になって買ったようなものだ。

森さんは繰り返し繰り返し、眼前の状況について、ちょっと立ち
止まって考えてみようよと呼びかける。想像してみよう、と。
「考えたんだけど、自分にはこれが正論にしか思えないのだ」
ということを何度も何度も書く。正直、まとめて読むと同じ話が
多いことが分かるのだが、そこは力業というか、最後にはきちん
と落とし前をつけてくるのである。











『世界クッキー
川上未映子 著    文春文庫

週刊新潮の「オモロマンティック・ボム!」は相変わらず毎週
楽しんで読んでいるが、あれとはけっこう文章が違う気がする。
敢えて書き分けているのだろうか。
川上さんの文章をまとめて読んでみると、意外なほどに太宰治
の影響がうかがえる。言葉のはしばしに。擬音の使い方に。
吹き出してしまうような箇所が特に太宰的であることに気付く。

そしていまわたしは太宰を読んでいるのだった。
相変わらずの影響されやすさ。

機関車先生


☆☆☆         廣木隆一       2004年

原作は伊集院静。
坂口憲二は瀬戸内の離島に赴任してきた男前の先生だが、
若いころ剣道の試合でのどを傷め、声を発することができない。
口を「きかん」先生だから、機関車先生、というわけである。

まあ終始「ありがち」な話が続き、のんびりゆったりでいくぶんは
退屈な映画である。でも子どもたちは良い味出してるし、廣木
監督の得意技である「じりじり移動ショット」も随所で光る。

                                                           10.24(木) BSプレミアム


2013年10月30日水曜日

秋の読書①


『恋しくて』
村上春樹 編・訳   中央公論新社

当然、春樹の新作短篇「恋するザムザ」目当てで買い、
真っ先に読んで「ヘンな話」と思ったわけだが、それ以外
の春樹セレクトの短篇もなかなかおもしろい話が多かった。

「ジャック・ランダ・ホテル」なんていう短篇は特に変わって
て、おもしろい。
…と思ってたら、著者のアリス・マンローってこんどのノー
ベル文学賞のひとだね。なるほど。興味が湧いた。
短編集は何冊か出ていて、高松在住の主婦がこれまでの
作品をこつこつ訳してきているらしい。こういうの、良いよね。

他にも良作多数。個人的には『バースデイ・ストーリーズ』
よりも好きです。










『ぼくの歌、みんなの歌』
森達也 著     講談社文庫

毎回ある1曲(もしくはあるミュージシャン)をとりあげて、
森さん自身の状況と当時の時代背景を重ねながらつづる、
割合パーソナルなエッセイである。自伝的、といったら
おおげさか。しかし「歌」への個人的な思い入れを語るに
はどうしても自分史的な言及をせざるを得ないよね。
こういう本は選曲が自分と合わないと読む気がしないが、
森さんとは趣味が合うらしい。私も好きな曲ばかりだった。





2013年10月27日日曜日

【LIVE!】いきものがかり


 1   1.2.3 ~恋が始まる~
 2   気まぐれロマンティック
 3   マイサンシャインストーリー

 4   風が吹いている
 5   あしたのそら
 6   なんで
 7   恋愛小説

(センターステージ)
 8   月とあたしと冷蔵庫
 9   東京

10   MONSTER
11   ぱぱぱーや
12   うるわしきひと
13   キミがいる
14   笑ってたいんだ
15   笑顔

(アンコール)
 1   じょいふる
 2   ありがとう
 3   ぬくもり

                           10.12(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

良い曲を作り、それを巧いひとが歌う。

当たり前のようでつまらなく聞こえるけれど、
「それができれば苦労しないよ」というのがおお
かたの凡百な歌手の思うところだろう。
いまのいきものがかりは明らかにマジカルなもの
を帯びていて、いちファンとしては、いつまでも
それが消えないよう願うばかりだ。

ベストアクトは「東京」にしよう。
良い曲だ。
もちろん、水野くんの作る曲も素晴らしいけどね。


2013年10月25日金曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


01. 異国の空
02. 神の悪戯
03. ブラックホールバースデイ
04. ハッピーエンドに憧れて
05. カラビンカ
06. 生命線
07. ガーデン
08. 未来
09. クリオネ
10. 雨に打たれて風に吹かれて
11. 真夜中のライオン
12. 戦う君よ
13. コバルトブルー
14. バトルイマ

<Encore>
01. 舞い上がれ
02. サニー
03. 涙がこぼれたら

                              10.11(金) ペニーレーン24

ファンは満足したんじゃなかろうか。
少なくともわたしは満足しました。
「未来」だって良い曲に聞こえました。

「理想のセトリ」を語り出したらキリがないが、このB面と
シングルの混ぜ方にはセンスを感じる。自分たちのこと、
そしてファンが求めるもの、その両方がよく分かっていな
いとこういう選曲にはならないだろう、ってバックホーンを
知らないひとには何を言ってるのかわからないだろうけ
れど。
まあ「クリオネ」は無くてもよかったかな。代わりに「夜空」
でもやっていただけたら幸いでした。

ベストアクトはひさびさに登場した「ブラックホールバースデイ」
か「ハッピーエンドに憧れて」かで迷って、

「ブラックホールバースデイ」

に決定。よかった。










2013年10月24日木曜日

地獄でなぜ悪い


☆☆☆★★★       園子温       2013年

★の1つは勢いであげちゃおう。や、オマケし過ぎかなー。
迷いどころだが、とまれ、園映画の新たな「女神」(と表記して
"ミューズ"とルビを振りたい)の誕生を寿ぐ意味でも、二階堂
ふみに捧げよう。乾杯。慈愛と酷薄と凶暴の女神。『ヒミズ』を
懐かしく思い出すほどの彼女の「脱皮ぶり」を抜きにしてこの
映画を語ることはできない。

詩的な要素は排除し、徹底的にばかばかしい方に振り切れた
本作、テンションは『愛のむきだし』に近い。

♪ 全力歯ぎしりLet's Go

という歌を、映画館を出たひとがみな口ずさまずにはいられな
い程のばかばかしさなのである。

しかし、観たひとは分かるだろうがあの「お別れのキス」、たぶん
相当難しいよね。相手の口が血まみれなら、こちらもかなり出血
している気が。星野源が「まだ口の中しみる?」とか訊いてたが、
そんな程度で済むのだろうか。まあいいか。

                                               10.11(金) シネマフロンティア札幌


2013年10月21日月曜日

プライドと偏見


☆☆☆★★       ジョー・ライト       2006年


原作通り、舞踏会と食事会と旅行しかしてないが、けっこうおも
しろかった。長い物語をうまくまとめて健闘している。
キーラ・ナイトレイ、良いですな。

しかしなぁ、ジェーンはもっと「誰が見ても美人」じゃないと。エリ
ザベスのほうが可愛かったらダメじゃん。

                                                           10.5(土) BSプレミアム


2013年10月17日木曜日

夜がまた来る


☆☆☆★        石井隆       1994年


ある文春の連載でこの映画が紹介されていたのを読み、
ほほう、若いころの夏川結衣には興味あるな、と思って
借りてきた。あのキツい感じのお顔が良いですな。

物語は、麻薬のルートを調べるためにヤクザに潜入捜査
していた夏川結衣の恋人が殺されるところから始まる。
夏川結衣も家に押しかけてきたヤクザに輪姦され、復讐
にと組長を待ち伏せて殺そうとするも失敗。絶望して何度
も自死を試みてはなぜか根津甚八に救われるが、いつし
か水商売に身をやつし、しっかりシャブ漬けになって人格
も崩壊していって…
という感じで、「おーい」と言いたくなるほど悲惨なストーリー
なのである。寺田農の悪役っぷりが良い。

私は石井隆にあまり思い入れは無いのだけど、5年前に
観ていたらあるいはけっこう夢中になったかもしれない。
こういうダークな暴力の世界を描いてチープにならないの
は簡単なことではないと思う。

                                                       10.3(木) DVD


2013年10月15日火曜日

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q


☆☆☆★★★        庵野秀明      2012年


劇場で観たときよりもずっと面白かった。
あの時はあまりに意味不明で、きっと多くのひともそうだったの
だろう、YouTubeに「Qをわかりやすく解説する」といった内容の
動画がアップされ、それを見てふむふむ、なるほど、そういう事
だったのか、と多少は作品世界に踏み込めた気がしたのだった。

まずあの14年後という設定よりも(あ、言っちゃった)、用語が
聞き取れない&分からないのがまず問題であり、

リリン、ヴンダー、DSSチョーカー、ガフの扉、アダムスの器、
Mark.6、L結界密度…。

まさにもう、「カヲルくんが何を言ってるのかわからないよ!」
と叫ぶシンジとまったく同じ気持ちなのである。

今回、それらの用語がよく分かったわけではないが、まあだい
たいこういうことだろ、と見当が付いてから観たこの「Q」、ずい
ぶん面白いんですわ。ほんとによく考えられてる。普通自分が
考えた自分にしか通じない用語を、説明も無くあんなたくさん
盛り込みむか? 受け入れてもらえる、という強い確信がなけ
ればできないことだと思う。

                                                       9.30(月) Blu-ray Disc


2013年10月5日土曜日

東京戦争戦後秘話


☆☆☆          大島渚         1970年

なかなか複雑なストーリーで、要約するのは面倒なのでしない。
「映画で遺書を残して死んだ男の物語」というサブタイトルが
中身をよく表しているような、いないような。
まあ1本のフィルムをめぐる奇妙な物語である。しかし事前に
よく考えておかないと、撮りながらわけが分からなくなりそうだ。

                                                                   9.30(月) DVD


2013年10月3日木曜日

さよなら渓谷


☆☆☆★      大森立嗣       2013年

ある業を背負った男女の物語で、まずそこに説得力が無いと
すべてが破綻してしまうという、なかなか映画の原作に選ぶに
はリスキーな作品だと思う。
質問に対して返答に詰まり沈黙する場面がとても多い映画だが、
間延びしていたという印象はあまり無い。まあそりゃ答えに詰ま
るよな、という問いかけばかりだし。

ラストは原作にない「ある問いかけ」だったが、はっきり言って
不要である。あんなこと別に知りたくないし、意味のある問いか
けとも思えない。製作側が「逃げた」という印象しか無いね。

全国公開からは4か月遅れの当地での公開となった。
客は私を入れて5人。まあそうなるよな。そもそもこういう映画が
あることが認知されているのだろうか。私が宣伝担当だったとし
ても、この映画をどう宣伝していいやら途方にくれると思う。結局
真木よう子のラブシーン(激しめ)があるよってことで推していく
しかないという結論に達すると思う。

しかし大西信満は上川隆也に見えて仕方ない。そして渓谷に
真木よう子がいるとどうしても『ゆれる』を想起してしまう。

                           9.29(日) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年10月1日火曜日

そして父になる


☆☆☆★★        是枝裕和        2013年


まず前提として言っておくのは、映画としての質は高いということ。
素人がおいそれと「いやーここはおかしいでしょ」と突っ込める
ようなところはほとんど無い。そういうのは先回りして説明されて
いるか、あえて「説明しない」ことを暗示されている。

しかし観たあと、妙に肩が凝ったのは、この映画が基本的に「詰
め込みすぎ」だからではないのか。意味過剰。意味のないカット
がひとつも無いというのは、それはそれで観ていて疲れるものな
のだ。ということを初めて知った。

カンヌ効果か福山目当てか分からないが、40人ほど入っており、
当地にしては大入り。良いことだ。

役者も好演している。特に尾野真千子の"健気な妻"っぷりに、
完全にやられる。こういう役の方が合ってるよ絶対。
そしてリリー・フランキーはなぜあんなにいつも巧いのか。毎回
感心してしまう。

蛇足だが、「お受験」のオープニングに『レイクサイド マーダー
ケース』を思い出したのはきっと私だけではないだろう。

                                9.28(土) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年9月26日木曜日

許されざる者


☆☆☆★★      李相日       2013年

あまり期待していなかったが、良い映画だった。
イーストウッド版をほどよく忘れていたのがかえってプラス
に作用した模様。一緒に行った後輩は「あまりに忠実に
イーストウッド版を踏襲しているのが気になってなんだか
集中できなかった」と言っていた。

骨太な物語は雄大そのものの上川地方の風景とマッチし
ており、「正しい金の使い方」という感じがした。撮影は大変
だっただろうが、映画が良ければ報われるというものだ。

邦画の大作映画で「うん、おもしろい」と思ったのはいつ
以来だろう。ちょっと思い出せないぐらい前だと思う。

特筆すべきはキャスティングが絶妙で、ズバリ的中という感じ。
イーストウッドに渡辺謙は鉄板だろう。このひと以外に居ない。
モーガン・フリーマンに柄本明。もう見飽きた柄本明だが、今
回は良かった。あのアイヌ青年は誰だろうとずっと思っていた
が、なんと柳楽優弥! なんとも頼りになる役者になったものだ。
素晴らしかった。渡辺謙を雇う女郎に小池栄子。顔を切られる
のが忽那汐里。女優陣も好演。

客は全然入っていなかった。お時間ある方は観に行って下さい。
「あー映画観たわぁ」と思える久しぶりの邦画です。

                             9.22(日) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年9月25日水曜日

夏に読んだ本②

『知に働けば蔵が建つ』
内田樹 著    文春文庫

もともと紙数制限のないブログの文章だからなのか、
ウチダ先生のこの手の本の文章には適度に「タルい」
ところがあって、それがかえって寝る前に読むのに適
しているのである。
寝る前に読むのはずっと小林信彦だったのだけど、
最近は週刊文春か内田樹です。








『羊をめぐる冒険』
村上春樹 著    講談社文庫

いやー急に読みたくなっちゃって、読んだらやっぱりおも
しろいんですわこれが。でもところどころ「若書き」っぽい
文章や比喩も見受けられ、春樹にも「あまちゃん」時代が
あったのだとひとり萌えながら読みました。
十二滝村開拓の歴史に登場するアイヌの青年のことは
すっかり忘れていた。単なる脇のエピソードにしておくのは
もったいないほど良くて感心する。いるかホテルのハゲが
来ている支配人をなぐさめるキキが可笑しい。あ、まだこ
の小説の時点では「キキ」という名前はありませんが。


2013年9月24日火曜日

二等兵物語 女と兵隊・蚤と兵隊


☆☆★★★       福田晴一        1955年

伴淳三郎と花菱アチャコの共演で当時かなり人口に膾炙した
という「二等兵シリーズ」の第1作。ふたりが軍服姿でスクリーン
に登場しただけで笑いが起こったというから、相当な人気だっ
たんですね。

しかし今観ても…残念ながらおもしろくはない。
『拝啓天皇陛下様』の渥美清のような破壊力は無いし、花菱
アチャコはピエール瀧にしか見えないし、人情ものの部分に
しても、泣かせるというよりは、なんだかさんざん観てきたよう
な話だし。
それは私がすれっからしになったということなんでしょうか。
伴淳三郎の最後の演説シーンに救われたが、それもまあこ
ういう展開しかないよな、という感じで。ああ、いかん。もっと
虚心坦懐に映画を観るよう心がけます。

                       9.21(土) BSプレミアム


2013年9月23日月曜日

BUNGO~ささやかな欲望~

<見つめられる淑女たち>

オムニバス映画      2012年

文豪たちの短篇を、それも若干エロス寄りな短篇を"気鋭の"
映像作家たちが映像化したもの。
まったく独立した短篇3つなので、以下別々に採点する。

「注文の多い料理店」 原作:宮沢賢治
☆☆★      冨永昌敬

主演は石原さとみ。
映画的には、いいところはまったくなし。
演出が悪いんじゃないの。


「乳房」 原作:三浦哲郎
☆☆☆      西海謙一郎

水崎綾女。
ぐっとレベルが上がって、「見せる」演出を堪能。
しかし空襲警報下の理髪店とは、エロいシチュエーションを
考えるものですな。三浦先生、さすがであります。


「人妻」 原作:永井荷風
☆☆☆★      熊切和嘉

谷村美月。
さらにレベルが上がり、息詰まるような、生唾飲み込むような
「妖しさ」に感嘆。当ブログは谷村美月を応援しています。
まだ観ていない方は早急に『カナリア』と『17歳、京都着。
~恋が色づくその前に~』を観てください。

                            9.17(火)  DVD


2013年9月19日木曜日

サブウェイ

 デジタル・レストア・バージョン

☆☆☆★      リュック・ベッソン      1986年

地下鉄というある意味で異空間を舞台にした、なんとも摑みどころの
無い話である。なんとなく「ハードボイルド・ワンダーランド」を思い出
す。こっちのが先だけど。

クリストフ・ランベール。
良い面構えの俳優だ。不敵で冷酷で、かと思えば繊細でフラジャイル
な表情もあって、見てて飽きない。金髪がよく似合ってる。

ジャン・レノはスティックでテーブルをかたかた叩く変人として登場。
たいして重要な役割を果たすわけではないが、かなりインパクトある。

                                                                 9.12(木) BSプレミアム


2013年9月16日月曜日

フラッシュバック・メモリーズ


☆☆☆★★             松江哲明           2013年

レンタルなので当然2Dでの鑑賞。

音楽映画ということで、隣人が居ないのを確認してから、壁が
ディジュリドゥの低周波でビリビリ鳴るぐらいの"気持ちいい音量"
を堪能。しかし不思議な楽器だ。演奏するのは難しいんだろうか。
どのへんにGOMAさんのクリエイティビティがあるのか最後まで
分からなかったが、プリミティブ極まる楽曲のポリリズムな感じは
心地よい。

                                                                9.9(月) DVD


2013年9月9日月曜日

テレビ漬けでした


ちかごろ更新できていないのは、テレビ漬けだったからです。
パッと思い浮かぶだけでも…

「零戦 ~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」「よその歌 わたし
の唄」(山田太一ドラマ)「LIFE! 人生に捧げるコント」「基町アパー
ト」「食わず嫌い 古田新太×有村架純」「達人達 半藤一利×
宮崎駿」「今夜も生でさだまさし 水戸」「プロフェッショナル サザ
ンオールスターズ」「プロフェッショナル 宮崎駿」「北川景子 地中
海」「坂本龍一 Playing the Orchestra」

ざっと勘定しただけでも、これだけ不定期の番組が入ってきて
ウチの可哀相なHDDレコーダーを圧迫し、早く観て消さなけれ
ば新たに番組が録れない状態であった。それに輪をかける形
で「あまちゃん」はたいてい2回観ている上に面白い回は消せな
いし、空耳アワードはあるし、ちょっとした試験は受けねばなら
んし。とりあえず映画も本もおあずけ、であった。つまり仕事が
忙しかったとかではないということですね。テレビ観るのが仕事
のうち、とはまだカッコよすぎて言えないので、単に好きだから
観ているだけですね。
しかし面白い番組も多くて、テレビはまだまだ面白い、と自信を
もって言える気がした夏でした。山田太一のドラマはつまんな
かったけど。

さて、猛チャージのおかげでだいぶ空きができたので、これから
は映画でっせ。レビューは期待せずにお待ちください。

2013年9月2日月曜日

夏に読んだ本①

『クヌルプ』
ヘルマン・ヘッセ著    高橋健二 訳    新潮文庫

クヌルプはとらえどころがない。
そして、ゴルトムントを知ってしまった後に読むと、幾分似たところの
あるその人物像はちょっと地味に思える。
しかしやっぱりヘッセのこういう小説、好きです。
ヘッセの小説の重要な要素のひとつが「放浪」であることは間違いな
いが、果たして「放浪する主人公たち」にヘッセは何を託したのか。
もうちょっとまとめてヘッセを読む時間が欲しいなー。こうも飛び飛び
だと、前に読んだやつを忘れてまう。










『世界のすべての七月』
ティム・オブライエン著   村上春樹 訳   文春文庫

春樹をしてその「下手っぴいさ」から目が離せないというティム・オブラ
イエン。本作は、卒業から31年目の大学同窓会に集まった、かつての
"Don't trust over 30"な学生たちが繰り広げる群像劇である。
もうお腹いっぱいになるほどのみじめさ、悔恨、みっともなさ、情けなさ
が連作短編の形で着々と積み重ねられ、とってもグロテスクなタペスト
リーが編み上げられる。読後感はあくまで胃もたれしそうなほどの「アメ
リカ的物語」であり、あまりオススメはしないが、あぁアメリカだなぁ、とい
う感じが満載の小説が読みたい時にはぜひ手に取っていただきたい。

2013年8月27日火曜日

ゴダール・ソシアリスム


☆☆☆       ジャン=リュック・ゴダール     2010年


ゴダール先生。もう引用でしか語ることは無いのでしょうか。
わけが分からない、というのも言い飽きました。
それでも「ゴダールの新作」と言われると、観なければならない
ような気がして落ち着かないのです。

画像はユニクロのCMじゃないですよ。本編の一部です。

                                                               8.19(月) Blu-ray Disc


2013年8月25日日曜日

ポンヌフの恋人


☆☆☆★★        レオス・カラックス       1992年


あのメイキングを観たらいろんなカットをもう一度確かめたくなって、
ずるずるとまた最後まで観てしまった。
なんだろう、いわゆる「腹持ちのいい映画」というやつで、観終わって
からもいろんなシーンが気になる。今回は水上スキーのシーンにグッ
ときた。

ジュリエット・ビノシュは綺麗ですね。

これでアレックス三部作を制覇。ポーラXはどうやって観よう。

                                                                          8.14(水) DVD


2013年8月24日土曜日

エルミタージュ幻想


☆☆☆      アレクサンドル・ソクーロフ       2003年


90分ワンカットで有名な映画。
いったいどれほどのリハーサルと、段取りの確認と、何回の撮り
直しがあったのかが気になって仕方がなかった。

                                                              8.11(日) BSプレミアム


2013年8月19日月曜日

風立ちぬ


☆☆☆★★★      宮崎駿       2013年


おかわりして来た。

初見のときにも感じたが、カプローニさんが出て来るシーンがだいたい
おもしろくない。二郎、早く夢から覚めろ。その一方で、至極当然だが
菜穂子が絡むと俄然映画が活き活きと動き出す。紙飛行機を飛ばし
合うシーンの美しさたるや…。

婚礼の夜だけなぜか絵が細田守風になる、という友人の指摘は正しい
気がする。

                               8.10(土) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年8月18日日曜日

ポンヌフの恋人


☆☆☆★★       レオス・カラックス       1992年


カラックスについて「ゴダールの再来」という惹句はそれほどピンと
来ないね。才能ある監督だというのは間違いないが。

なんと言っていいのか適切な言葉の持ち合わせがなくて困るが、
この映画は「なんか、いい」ですよ。映画の題名を聞いて「あー、あ
の映画ねー。内容は…全部忘れたけど、なんか主人公が○○で
○○してたのだけは覚えてるわ」ということは誰にでも(たぶん)よ
くあって、普通はそういうシーンが1つでもあれば、その映画は「ま
だ良いほう」だったと言えるのではないかと思うが、この映画には
そういうシーンがやたらにあるのである。あのシーンもこのシーン
も、ことごとく画が「キマってる」といったらいいのか。

そしてメイキングを観て驚愕。ポンヌフとはセーヌ川にかかる橋なの
だが、…あれ全部セットかい! こういうのを見ると、興行の世界と
いうのは、傍で見ているぶんには面白い。まったく憧れないけれど。
映画監督(特に大作映画の)とペテン師は紙一重という感がありま
すね。

                                                                       8.7(水) DVD