2012年9月21日金曜日

天地明察


☆☆☆★       滝田洋二郎      2012年

『おくりびと』はスルーしてしまったので、滝田監督の作品は初
めて観る。原作小説もよく売れたらしい。渋川春海、関孝和、
貞享暦と、そういえば日本史で習ったなぁ、ぐらいの人物たち
に着目して、見事にエンタメに昇華させた点は、発想として秀
逸ですね。そりゃあ文化庁の補助金も取れるわ。

序盤、あまり時間が無いので、岡田くんと宮﨑あおいの”馴れ
初め”に時間を割けない。ほとんど一目で惚れる必要があるの
だが、そこで採用されたシーンが忘れがたい印象を残す。さっす
がはピンク出身の監督という感じ。ご覧になれば分かると思う。
村瀬塾を訪れたときの、あれです。あのシーンだけ浮いてるもの。

                                          9.17(月) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2012年9月19日水曜日

酔いがさめたら、うちに帰ろう。


☆☆☆       東陽一      2010年

まずタイトルが良いよね。

 酔いがさめたら、うちに帰ろう。

『今夜、すべてのバーで』(中島らも)というのもあった。
これも良いタイトルだと思うけど、どちらもアル中の話だ。
「酔っ払い文学」(そんなものがあるとすれば、だが)に
認定されるには、まず何はともあれカッコいいタイトルを
考えなくてはならないらしい。

                                                       9.10(月) HBC


2012年9月17日月曜日

コクリコ坂から


☆☆☆☆       宮崎吾朗      2011年

どうしてこんなに良いんだろう。
あらためて、気合を入れて見直してみたが、私はこの映画の
隅から隅までほとんど全部が好きである事を確認した。リアリ
ズムのジブリ作品では最高傑作だと思っている。

朝ごはんを作る海ちゃんと、「白い花の咲く頃」で集会をごまか
すシーンでどうしても目頭が熱くなってしまう。主題歌の「さよな
らの夏」も良い歌だが、最後のほう、理事長の前で歌う校歌(?)
もなかなか良い歌だと思う。水沼と海の妹は結局付き合うんだ
ろうかこの後。

特典映像では初号試写のときの宮崎親子の挨拶などが見られ
る。喋っているうちに急に激昂してスタッフを怒鳴りつけ始める
「白いひげのおじさん」に驚愕。ひとしきり怒鳴ったらまた普通の
挨拶に戻っていた。

                                                           9.10(月) Blu-ray Disc


2012年9月14日金曜日

インビクタス/負けざる者たち


☆☆☆★★     クリント・イーストウッド    2009年

これはこれで、うまくいき過ぎなお話?
きっと降旗康男が撮ったら何のおもしろみもない映画になるだろうが、
イーストウッドはそんなことはしない。ワンカットごとに企みがひそんで
いる気がして油断も隙も無い。

                                                          9.9(日) BSプレミアム


2012年9月13日木曜日

最強のふたり


☆☆☆★★  エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ  2012年

フランス映画ながらスマッシュ・ヒットを飛ばしているということで観て
来た。たしかに快作である。

「やつは私に同情しない」という理由で大金持ちの障害者と貧民層の
人間がウマが合い、お互いに良い影響を与え合っていく。それほど新
しい発想でもないが、というかハッキリいって既視感ありまくりだが、
そこは別に気にならなかった。ちょっとうまくいき過ぎ、という感じもす
るが、ひたすら痛快で良いんじゃないですか。
ただ「これは実話に基づく物語」はもう聞き飽きたね。

                                                           9.7(金) ディノスシネマズ札幌


2012年9月11日火曜日

エノケンのちゃっきり金太


☆☆☆       山本嘉次郎        1937年

エノケンの軽快な動きには一見の価値がある。
「ちゃっきり」とは「巾着きり」、つまりスリのこと。

ひさびさの一日三本鑑賞。
朝、陽が高いうちからカーテンを閉め切って一本目。
いやぁ、まだ昼か、などと言いながら車で映画館へ出かけ
二本目。
帰って来て、寝る前に短いやつをもう一本。
至福ですなー。
ただ、こんな生活でいいんだろうか…。

                                                 9.4(火) BSプレミアム


2012年9月10日月曜日

あなたへ


☆☆☆        降旗康男        2012年

なんだかとても「真っ当な」映画だった。悪い意味で。
登場人物はみんなある程度の秘密を抱えてはいるものの
良いひとばかり。悪人が出て来ないと退屈である。そんな
事言ったら健さんに殴られそうだが。

                                  9.4(火) ワーナーマイカルシネマズ釧路


2012年9月9日日曜日

秋刀魚の味


☆☆☆★★★           小津安二郎        1962年

山田洋次は「遺作が傑作というのは珍しいし、幸せなことですね」と
いうようなコメントをしていたが、たしかにそう思う。遺作ということを
抜きにしても、小津映画のある種の到達点のように思った。

一方で、もうこの頃の小津は大衆からは見向きもされていなかった
という話も聞く。それはそうかとも思う。だって、『晩春』(1949年)から
数えても13年間、同じような話ばっかり作ってる巨匠が居たら、普通
はあきれるだろう。

しかし製作から50年を経て、再評価やらなにやらがあった後、BSプレ
ミアムで放送されたものを私がハードディスクに半年以上放置したあ
とにやっと観られる運びとなった本作は、実に心愉しい映画だった。
同級生のおっさん3人(笠智衆、中村伸郎、北竜二)が小料理屋に集
まって飯を食いながら、非常にどうでもいいようなことを話している、
それだけで楽しくなってくるのはなぜなんでしょうね。昼からビール飲
んでるし、昼休みも長そうである。うらやましい。

                                                                   9.4(火) BSプレミアム


2012年9月8日土曜日

ロッキー2


☆☆☆★         シルヴェスター・スタローン     1979年

いやぁ、ロッキーが本気になるまでが長い長い。
こっちは上映時間を知ってるもんだから、90分が経過してもまだ
昏睡状態のエイドリアンに不眠で付き添い続けるロッキーにはさ
すがに「大丈夫なのか!」とハラハラした。
「この先まだ本格的に練習して、その後試合のシーンもあるのに
ほんとに入るんだろうか」と不安が高まった頃、ようやくエイドリア
ンの指が動いて昏睡から醒め、(本気)練習再開となる。
画像はロッキーのランニングについてくる子どもたち。映画のハイ
ライトが試合そのものではなくこちらであるのは言う間でもない。

                                                              9.3(月)  BSプレミアム


2012年9月5日水曜日

冬の華


☆☆☆★★       降旗康男       1978年

ムショ帰りのヤクザを演じるのは高倉健。
健さん演じる「ヒデ」は、その誠実な人柄で人望がある。
しかし15年ぶりに戻ってきた組では、組長は絵画の収集
に狂っており、きな臭い抗争の気配が漂い始めている。
この機会にヤクザの世界から足を洗おうと考え始めてい
たヒデも、やがて否応なく、血で血を洗う抗争に巻き込ま
れていく…。

こう書くと普通のヤクザものと何も違わないようだが、ここ
にヒデを育ての親と信じ、「おじさん」と慕う可憐な娘(池上
季実子)をからめてくるのが脚本家・倉本聰の勝負なので
ある。

この勝負は結果的に、物語のトーンに多少の甘ったるさを
もたらしはしたが、成功だったと思う。ラスト、喫茶店でトボ
けてみせる健さんが実に実にシブかった。そうこなくちゃ!
と思わず独りテレビに快哉を叫んだものである。

あと、中華料理屋の店主を演じる小沢昭一が絶品であった。

                                                             9.2(日) BS朝日


2012年9月4日火曜日

ロッキー


☆☆☆★★     ジョン・G・アヴィルドセン    1976年

たぶんまともに観たのは初めてである。
アポロのパンチを喰らい続けるロッキーに目頭が熱くなる。
15ラウンドの死闘が終わり、走り寄ってきたエイドリアンに
かけた第一声が
「帽子は?」
全篇にわたって、こういうセリフが巧い。ロッキーとトレー
ナーのミッキーの何気ない会話も味があるし。

                                                   8.28(火)  BSプレミアム