2012年6月26日火曜日

ジョゼと虎と魚たち


☆★       犬童一心       2003年

私にはとても愛おしい映画である。
最後に観たのは、たぶん大学2年じゃなかろうか。
久しぶりに観ても、やっぱり良かった。むしろ良さを増していた。

この映画の池脇千鶴が可愛すぎると俺は思う、と宣言したあた
りから、しばしば周りからロリコン呼ばわりされるようになり、今
でもそういうレッテルを貼ってくる輩はいるのだが、俺は信念を
曲げたりはしない。なぜなら、目がかすみそうなぐらいはるか先
を、小林信彦先生が走っているの見えるから…。

まあそれはいいとして、今回驚いたのは、上野樹里の出演シー
ンが記憶していたよりずっと多かったことだ。私の記憶では、い
ちばん最後、ジョゼの家を出た妻夫木くんが橋の上で上野樹里
と落ち合うシーンだけだと思っていたのだが(少な!)、全然そん
なことはなくて、最初から大学の友だちとして出てきてるじゃーん。
大学生の私が、いかに池脇千鶴の出演シーンにのみ全力を注
で観ていたかがわかるエピソードである。

反対に、強烈に覚えているシーンがいくつもあって、それが愛おし
い。たとえば新井浩文が車を貸しに来るシーン。最高。これ以来、
新井浩文という俳優が大好きになった。
妻夫木くんは"三股男"をさわやかに演じており、憎めない。感情
をあらわにしない妻夫木くんは、最後まで何を考えているかよく分
からないが、妻夫木くんがジョゼに惹かれていくのも、ジョゼが妻
夫木くんに心を許していくのも、とても自然だと思う。脚本も演出も
うまいのだ。
同じコンビ(犬童一心・渡辺あや)の作品で『メゾン・ド・ヒミコ』があ
るが、こちらは未見。今度観てみるかな。

                                                                6.24(月)    HBC


2012年6月24日日曜日

かたづいた本

『最後の息子』
吉田修一 著  文春文庫

今まで読み落としていた、吉田修一の最初期の短編集。
まだ芥川賞の候補になって落選していた頃の3篇を収録している。
結局受賞にいたった「パーク・ライフ」は老成しすぎていて新人らし
くなかったが、さすがにこの3篇には「習作」の感じが残っていて、
いまとなっては好ましい。偉そうなことをいえば、ここにはまだ添削
の余地があるという気がする。これ以降はもう安定感がハンパなく
て添削する箇所なんてなくなってくる。しかしもちろん、添削の余地
がないことと面白い小説であることはイコールではないのが小説の
難しいところである。
3篇のなかでは「破片」の荒っぽい弟と、「Water」主人公の心根の
真っ直ぐな少年が心に残る。








『長崎乱楽坂』
吉田修一 著  新潮文庫

長崎のディープな土地に生まれ育った兄弟を中心にして、そのまわ
りのディープな人間模様を、吉田修一の確かな筆致で描いた連作
短篇集。多用される長崎弁がリアルな感じでいい。連作短篇という
手法は、肝心な、いちばんドラマチックになってしまう場面を書かな
くて済むので、吉田修一には向いてるね。








『ドゥワッチャライク』
小沢健二 著

BOXセットについていた和装本。『OLIVE』の連載から小沢くんが
選んだ35篇を収録。
なんでも高いレベルで器用にこなすひとであるから、文章も当然の
ようにうまい。何度か声をあげて笑う。




2012年6月5日火曜日

風の谷のナウシカ


☆☆☆★★★          宮崎駿         1984年

これまた久々の鑑賞。
何度観ようと、間を置こうと、すばらしい傑作であることは疑いない。

既に日本のアニメ映画の金字塔であり、古典である。
それを踏まえてのことだが、腐海と未来文明との関係はもう自明の事
として我々の中に消化・吸収されているため、本作を観ていると、その
自明のことをあらためて説明されているようなもどかしさすら覚えてしま
う。それはもう知ってるよ!という感じ。まさに倒錯。寓話としてすぐれて
いるからこそ、そういうことも起こるのか。

そしてあまりにもナウシカが「正しい」からだろうか、若干の説教臭さを
感じてしまったのも事実である。また数年後に観ると感想も違うのかも
しれないが。

                                                                        6.2(土) STV


2012年6月2日土曜日

ファミリー・ツリー


☆☆☆★★           アレクサンダー・ペイン        2012年

「家族が危機をむかえ、崩壊しそうになるが、力を合わせてなんとか
危機を乗り越え再生する」話で今までおもしろかったためしが無い、
というようなことを以前書いた気がするけれど、この映画はけっこう
おもしろかった。外国人だと生々しさが薄れるのだろうか…? あの
特有のムズムズする感じがなく、かといって「どーでもいいわ」状態
にも陥らず、最後まで観ることができた。

先祖代々、ハワイに住んできた一族の話。ジョージ・クルーニーが
評判どおりの好演。ハワイの景色は美しい。娘は不良だけど美人。
娘の彼氏のヘラヘラした若者もなかなか良い。佳作。

                                5.27(日) ワーナーマイカルシネマズ釧路