2011年12月12日月曜日

最近かたづいた本④


『初恋温泉』

吉田修一 著    集英社文庫

「温泉しばり」の連作短篇集。
要は、主人公が必ず温泉宿に向かうことが条件の小説集。
三題噺のような感じで、「黒川温泉」「高校生カップル」「女
の子の方の兄夫婦が離婚危機」の三題でサラっと一篇。
「青荷温泉」「おしゃべり者同士のカップル」「隣室に聾唖
の男女」でまたサラっと一篇。実際吉田氏がサラサラっと
書いたかは知らないが、読後感はあくまで軽く、後味は苦
いものと温かいものが半々。

吉田修一はどこへ向かおうとしているのだろう。安定感は
あるが、それだけという気もする。文体が好きだから読む
けども、もちょっと驚かせてくれると嬉しいが。









『私家版・ユダヤ文化論』

内田樹 著     文春新書

思うに私はユダヤ人とその文化について、あまりに知らな
過ぎた。アインシュタインやウディ・アレンがユダヤ人であ
ることぐらいは意識としてあったが、これほど多くの映画監
督・俳優、アメリカンポップスのミュージシャン、そして自然
科学の分野で、ユダヤ人の存在が際立っているとはつい
ぞ知らなかった。
神戸女学院での講義をもとにした本書は、そのへんから
説明してくれるので嬉しい。なぜ「私家版」なのかは本書
中に詳しいが、要は自分が関心がある事柄について、自
分に問いかけながらつづってきた秘蔵ノートのようなもの
ということだ。なので「日猶同祖論」だとか「モレス侯爵」だ
とか、ヘンなものがいっぱい登場してきて、それがまたお
もしろい。もちろんレヴィナス、サルトル、フロイトも登場す
るのでご心配なく。
これまで読んだウチダ先生の本の中でいちばんおもしろ
かった。



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