2011年11月25日金曜日

最近かたづいた本②


『ゴダールと女たち』

四方田犬彦 著      講談社現代新書

女たち、ということで俎上にあがるのは『勝手にしやがれ』のジー
ン・セバーグ、『女は女である』『はなればなれに』『気狂いピエ
ロ』に主演し、ゴダールのミューズといえばやはり今でもこのひとの
アンナ・カリーナ、『中国女』のアンヌ・ヴィアゼムスキー、番外で
『万事快調』のジェーン・フォンダ、そして約40年前より現在に至
るまでのパートナーであるアンヌ=マリ・ミエヴィル。
「女たちを軸にゴダールを語る」というのがもちろん本書のミソで、
四方田氏の得意顔が目に浮かぶようだが、センセイ意外と今回は
おとなしめで、あんまりおもしろくなかったというのが正直な感想。
センセイなりにもっとハッタリかましてくれないと。しかし比重の問題
として、女たちのエピソードが多いとゴシップ本っぽくなってしまうし、
各映画の要約が多いとどうしても退屈である。本書は、後者に近い。












『持ち重りする薔薇の花』

丸谷才一 著       新潮社

十年に一冊しか長篇を発表しないかはりに、毎回、楽しみに待つ
に十分値する上質な小説を、われわれ庶民にご提供くださる丸谷
御大。今回は前作『輝く日の宮』から八年しか(しか!)経ってゐな
いからかなのか、読み終へてどうも「長篇読んだー!」といふ満足
感には程遠く、腹にたまらない、とでもいふか。長めの中篇といった
おもむきであった。それが悪いと言ってるわけではないが、八年ぶ
りでこれなら、十年かけて長篇を書き上げていただきたかった、と
いふ、まあ単なる読者のわがままです。十年後も、お待ちしてをり
ます。

元経団連会長の昔語りの小説なんて、丸谷さんにしか書けないし
誰も書かうと思はないだらう。中心になるのは、その元経団連会長
を勤めた人物と、若き弦楽四重奏団(カルテット)との付き合ひ。
その辺の人間関係の綾を書かせればもちろん見事なものである。
そしてやはり、正かなづかひで新作小説を読めるといふだけで嬉し
い。ただ、ハイライトが「紫一色の虹が立つ!」では、どうも寂しい気
がしたが。




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