2011年4月27日水曜日

アフタースクール

☆☆☆★       内田けんじ      2008年


                                                4.24(日)  HBC


めし

☆☆☆★       成瀬巳喜男      1951年


                                                  4.17(日)  BSプレミアム


2011年4月26日火曜日

鉄道員 [ぽっぽや]

☆☆☆         降旗康男        1999年

これってそんなに良い映画かなぁ。ただ淡々と流れていくだけで、
「文体」にあまり惹かれなかった。いつも言ってる気がするが、
「ひっかかり」の無い映画って、あまり存在価値が無いと思ってい
て、この映画には「ひっかかり」があまり感じられなかったというわ
けです。ただ淡々と物語が進んでいって、終わってしまった。そう
いう印象。
しかし、また女優の話ですが、この時期の広末は手がつけられな
いぐらいの可愛さ。今でも可愛いけどね。キャンドル・ジュン…。










この映画にも出演されていますが、スーちゃんが亡くなってしまう
なんて、あまりに唐突なことで驚いています。私は七十年代最高
のアイドルはキャンディーズだと固く信じていますし、もしその時代
に少年時代を送っていたら完全にキャンディーズ狂いだったと思
います。それにしても、いろんな人の追悼のコメントから、こんな
にも人柄の良さが伝わってくる人って居ない気がします。ランちゃ
んとミキちゃんの弔辞全文を始業前に読んでしまい、思わず職場
で泣きそうになってしまいました…。スーちゃんのご冥福をお祈り
いたします。

                                                   4.10(日)  BSプレミアム


2011年4月25日月曜日

最近やっつけた本

インド夜想曲


アントニオ・タブッキ 著   須賀敦子 訳     白水uブックス

ボンベイ、マドラス、ゴアと南インドを舞台に、失踪した友人を探し歩く
男を主人公にした奇妙な味わいの話。去年インドに旅行したばかりな
ので、そしてボンベイには二泊したので、そのとき目にした光景なんか
を懐かしくを思い出しながら読んだ。
主人公は一応居るものの、なんだか影が薄く、どちらかというと旅先で
出会うさまざまな人たち、そしてインドそのものを描くことに専念してい
るようだ。バスの待合所で畸形の男に占いをしてもらう場面が強く印象
に残る。
インド独特の空気がよく出ている小説だと思う。
読後、NHKの「わたしの世界遺産」という番組を見ていたら、「世界遺産
を舞台にしたおすすめの小説」として豊崎由美さんがこの本を紹介され
ていた。

これも同期が貸してくれたもの。けっこう良いとこ突いてくるので、すぐ読
んでしまう。


闊歩する漱石


丸谷才一 著      講談社文庫

御大による初期漱石論。『吾輩は猫である』『坊つちやん』『三四郎』を称
揚する一方で、後期の『こゝろ』『明暗』などを「初期の漱石にみなぎつて
ゐた祝祭的文学観は失はれて、じつに不景気なことになつてしまつた」と
バツサリである。さすがは御大といふ感じ。
私はダントツで『坊つちやん』、次が『猫』、『それから』をはさんで『三四郎』
の順で好きなので、初期が好きといふことにならう。私が中学生だったら、
本書を通してあらためて見えた漱石とその作品について、春休みの宿題
の読書感想文を書きたいところだが、社会人となってしまった今、春休み
など無いのであった。

読書感想文といへば、とても苦労して、忍耐に忍耐を重ねて『猫』を読み
通したことを思ひ出す。そして当然なんにもおもしろくなかった。あれが中
学3年(?)か。思へば遠く来たもんだ。海援隊ぢゃないよ。


2011年4月24日日曜日

なくもんか

☆☆☆★     水田伸生     2009年

阿部サダヲがすべてだろうね。阿部サダヲの芸を楽しむ
ための映画であると私は受け取った。そして前半は予想
以上におもしろかった。それだけに、後半の失速ぶりが
残念ですね。

                                                           4.6(水) STV


2011年4月23日土曜日

二十四の瞳

デジタル・リマスター版

☆☆☆☆       木下恵介      1954年

観るのは三度目。
何度観ようとも、最後の大石先生の歓迎会の場面で目から
水分が出るのを抑えられない。
私の最も好きな女優・高峰秀子の出演作の中でも、代表作
と呼んでおそらく誰からも異論の出ない、傑作中の傑作であ
る。「完璧な映画」というイメージからは程遠いかもしれないが、
圧倒的な力技で「もっていかれる」感が非常に強い。こんなの、
そりゃあ泣くだろ、というやつである。

高峰さんは去年、亡くなってしまった。子役時代から、時には
年に8本というすさまじいペースで映画に出演し続け、1979年
にすっぱりと潔く女優業をやめてからも、今度はその文才を
活かして数多くの潔いエッセイを書いた。カラッとした性格が
そのまま反映されたおもしろい文章を書くひとで、『わたしの
渡世日記』などは私はかなり愛読したクチである。文春文庫
に入っている。

                                                4.5(火)  BSプレミアム


2011年4月17日日曜日

東京物語

デジタル・リマスター版

☆☆☆☆         小津安二郎         1953年

観るのは二度目。
一度目は、映画を熱心に観るようになって間もない頃、早稲田
松竹(たしか初めて行った)で、「麥秋」と本作の二本立てだった。
当時は大学二年生だったわけだが、ご多分に漏れず、あまり
面白いとは思わなかった。「ふーん。で、どうしたの」という感じ
だった。
いま「東京物語」を観て、こんなにも胸が騒ぐのは、一体どういう
わけなのだろう。そのざわつきは、原節子の「私、ズルいんです」
という有名な場面で頂点に達するわけだが、観終わっても、そし
て数日が経過しても、理由はわからずじまいである。
大学のときから何百本か映画を観て、私自身が「映画に求めるも
の」が相当変遷してきたというのは、ひとつの事実ではあるだろう。
では私は映画に何を求めるのか。わからないねー、さっぱり。

                                                   4.4(月)  BSプレミアム


2011年4月16日土曜日

JUNO

☆☆☆★★       J・ライトマン      2008年

16歳で妊娠してしまった高校生JUNOちゃんの10ヶ月間を追った
ストーリー。何年か前に「14才の母」というドラマがあったが、あち
らの志田未来の役どころとはだいぶ違って、JUNOちゃんはパン
クロックとギターをこよなく愛し、大人と会話するときは常に「余計
なジョーク」を言わずにおれない、なかなか愉快な子なのである。

映画として観たとき、JUNOの周囲の大人が寛容すぎる・理解が
ありすぎて不自然だとか、「十代の親をもつ家庭は得てして不幸」
と言った検査技師を論破したことになってるがあれじゃ全然論破
できてねーとか、いろいろ批判はあり得るだろう。しかし映画が進
むうちに、だんだんとJUNOちゃんのクールを装った健気さが愛お
しくなってきたのは確かであって、映画の好き嫌いって結局そうい
うところで決まってしまうので、私はこの映画は好きだ。

「仁義なき戦い 代理戦争」以来、5本連続で非常に好ましい映画
が続いた。どれも自信を持って「面白いですよ」とオススメできるも
のばかりである。まあおれが作ったわけじゃないけど。
そして来週からはついに、山田洋次監督が選ぶ「家族」の映画50
本がBSプレミアムで始まる。さっき数えたら、50本中16本は観てい
たが、非常に楽しみであることに変わりはない。

                                                               3.31(木)  BS-2


2011年4月13日水曜日

潜水服は蝶の夢を見る

☆☆☆★★      J・シュナーベル     2008年

大胆でありながら繊細な、というか、静謐でありながらダイナ
ミックな、「個」の映画でありながらどこまでも「家族」の映画
であるような、いずれにせよかなりしたたかな作りになって
いることは間違いない。
さすがフランス映画だけあって都会的で、感動の押し付けを
極度に嫌う。主人公の性格には好感がもてるし、モノローグ
もウィットに富む。

あらすじを説明することはできるが、してもあまり意味がない
と思うので、やめておく。「描き方」に最大限の意味を込めて
いる映画だと感じたので。秀作。

                                                3.23(水)  BS JAPAN


それでも恋するバルセロナ

☆☆☆★★       ウディ・アレン      2009年

ペネロペ・クルスとスカーレット・ヨハンソンが、ハビエル・バルデムを
取り合う話であると小耳にはさんだので、果たしてそんな荒唐無稽が
成立可能なのかといぶかっていた。だってそうでしょう?
しかし。ウディ先生にかかると、それもたちまち楽しき映画に早変わり、
ナレーションがちょっとうるさい感じはするが、けっこう"快作"じゃない
かと思う。ウディ先生も自作の中でけっこう気に入っているらしい。
「BRUTUS」の映画特集で言っていた。

                                                        3.23(水)  BS JAPAN


2011年4月12日火曜日

初恋のきた道

☆☆☆★     チャン・イーモウ    1999年

チャン・ツィーの主演。
最初、お婆さんが登場して、長年連れ添った夫の葬式のことで、
息子ともめている。画面はモノクロである。すると、お婆さんが
若かりし頃、村に唯一の学校の先生として赴任してきたのちの
夫との馴れ初めを回想するシーンになり、画面は一気に華やか
なカラーになる。お婆さんの少女時代をチャン・ツィーが初々しく
演じる。この「チャン・ツィーの初々しさ」が本映画のすべてである
といってまず差し支えなかろう。
『ダンス・ダンス・ダンス』の登場人物であるユキの可憐な美しさ
を描写した文章に、記憶で書くので正確でないかもしれないけど、
人の心の複雑な回路の奥にある池に、確実に小石を投げ込んで、
そこに波紋を立てることができるような美しさ、というようなのが
あったが、19歳のチャン・ツィーの健気ないじらしさにその表現を
思い出したといったらいささか褒め過ぎだろうか。チャン・ツィーの
可愛らしさと、その初恋の相手の学校の先生のキモい笑顔がとて
も印象的。先生は「声が良い」という設定なのです…。

                                                         3.20(日)  BS日テレ


2011年4月10日日曜日

仁義なき戦い 代理戦争

☆☆☆★★★      深作欣二      1973年

これが、これこそが「映画」だろうが、文句あるんかいワレ、という
確信を深めるに至ったシリーズ3作目。この映画の何もかもが好き
だ。とりわけ、役者の顔と声が好きだ。

要約してしまえば、広島におけるヤクザの抗争で、たくさんの人が
死にました、という話にまとまる。何が「代理戦争」かというと、大阪
では巨大な二つの組が覇権を争っているのだが、それが大阪では
直接的な殺し合いとして表出せず、大阪の後ろ盾を得た広島の組
どうしが広島で、血で血を洗う凄惨な抗争をするに至っているという
話なのである。ちょうど朝鮮戦争が、ソ連とアメリカの代理戦争で
あったように。
組どうしの関係は1作目よりもさらに複雑になり、親切なナレーション
が無いととてもついていけないほどだが、呉の小さな所帯である広能
(菅原文太)の組が、代理戦争の荒波をなんとか泳ぎきろうと足掻く
わけである。変な話、鶏口となるも牛後となるなかれ、という言葉を思
い出しもするのだが、組織を守るために苦悩するトップの話でもある
わけだ。菅原文太が死ぬほどかっこいい。

                                                  3.18(金)  DVD


2011年4月9日土曜日

肉体の門

☆☆☆     五社英雄    1988年

五社英雄と聞くと、友近が浮かんでしまう人も多いのではない
かと思う。少なくとも私はそうだ。1本も観たことがなかったので、
ちょうど民放BSでやってたのを観てみた。

敗戦直後の日本で、裕福な生活を夢見て、春を鬻ぐことでコツ
コツとお金を貯めているいわゆる「パンパン」たちの話。かたせ
梨乃と名取裕子が共演。たくましく戦後の混乱期を生きるパン
パンを迫力十分に演じる。二人ともまだ若く、ときたまのぞくあ
どけなさが良い。
しかし、観たあとで知ったけど、この話って5回も映画化されてい
て、1964年には鈴木清順のもあるのかよ。しまった、そっちだっ
たな。

                                                3.13(日)  BS-TBS


2011年4月7日木曜日

ラヴァーズ・キス

☆☆       及川中      2003年

花も恥じらう、当時17歳の宮﨑あおいが出演している。それはもう、
その点に関しましては、間違いないです。が、ただそれだけの映画。
おもしろくもなんともないわ! と、ちゃぶ台があるならひっくり返した
かった。
何が哀しくてこんなくだらない映画に出演するのか。宮﨑さんおよび
その事務所には「ユリイカ」で始まったキャリアをもっと大事にしてほ
しいものだ。

この先も「ツレがうつになりまして。」「神様のカルテ」と、観る前から
いうのもなんだけど、あまり期待できそうにないラインナップが控えて
いるというではないですか。もっと出演する映画を慎重に選んだらど
うでしょうな、と誰かあおいさんの事務所に言ってくれませんか。
「少年メリケンサック」は、良かったですから。

                                                        3.12(土)  HBC


2011年4月6日水曜日

亀も空を飛ぶ

☆☆☆     バフマン・ゴバディ    2004年

イラン出身の監督バフマン・ゴバディの2本立て。
1本目は、子どもの目から見た戦争。不思議な題名の意味は、
観終わってもよく分からず。なかなか普通じゃない、奇妙な味
わいのある映画だったが、出来としてはまあ普通、かなぁ…。









ペルシャ猫を誰も知らない


☆☆     バフマン・ゴバディ    2009年

2本目は、イランの首都テヘランを舞台に、アンダーグラウンド
で活動するミュージシャンたちの話。なのだが、反政府的なき
わどいことをしているという緊張感が彼らからまったく伝わって
来ず、ただ退屈だった。
この2本立ては久々にイマイチだったなー。早稲田松竹のライ
ンナップはいつも素晴らしいだけに、ちょっと残念だった。しか
し日本一の名画座だと思っています。

                                                3.5(土)  早稲田松竹

2011年4月5日火曜日

雑文集

村上春樹 著   新潮社

インタビュー集ならまだしも、文章を集めた春樹の新刊を
読むのがこんなに後回しになったというのは、我ながら
(というか我だけが)驚くべきことだ。
なんだかんだ言っても、やはり優先順位が下がってきてい
るのだろう。徐々に。小説は発売日に買って貪り読むけれ
ども、小説以外にはそれほど熱心になれなくなってきている、
ということか。そういえば、フィッツジェラルドの『冬の夢』も、
チャンドラーの『リトル・シスター』もまだ読んでいない。やれ
やれ。


2011年4月4日月曜日

花を運ぶ妹

池澤夏樹 著  文春文庫

とにかく長いやつがいい、と注文したら、これを貸してくれた、
いつもの同期である。
バリ島を舞台にした小説を読むのは初めてだ。相変わらず
南国が好きだな、池澤さんは。帯広出身なのに。

絵描きの兄と、フランスで通訳などをして生計を立てている
妹。それぞれが語り手の章が交互に現れる、いわば「世界
の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」方式(長いな)。
そして絵描きの兄の章では、地の文で著者が主人公に「お
まえ」と呼びかける形式で、完全に『楽園への道』を先取りし
ている。それには驚いたものの、小説としての柄の大きさと、
ドライブ感に関しては、…まあ比べちゃいけない。まったく及
ばないなー、残念ながら。文章はうまいから許そう。

2011年4月3日日曜日

名文どろぼう

竹内政明 著       文春新書

著者は、数ある新聞コラムの中でも随一といわれる讀賣新聞の
「編集手帳」担当を長くつとめた人物とのこと。いわばコラムの名
人だが、その著者が古今東西の「粋な」文章を引用し、紹介して
いくという趣向。「粋な」文章とは、なにも文学に限ったものではな
く、サラリーマン川柳から電報まで、多岐にわたる。

一読して、なんだか高島俊男さんの「お言葉ですが…」を水で薄
めたような本だな、という印象。たしかにおもしろい文章、ハッとさ
せられる表現がたくさんあって楽しいが、高島さんを読んでしまう
とどうも、薄味に感じる。

とは言っても、この趣向が嫌いなわけがない私であるので、一気
に読了してしまった。
中でも特に良かったものをひとつ。北杜夫が高校時代、苦手だっ
た物理の試験の答案に書いたという詩を、引用の引用になってし
まうけれど、書き写してみる。


恋人よ
この世に物理学とかいふものがあることは
海のやうにも空のやうにも悲しいことだ

恋人よ
僕が物理で満点をとる日こそ
世界の滅亡の日だと思つてくれ

僕等には
クーロンの法則だけがあれば澤山だ
二人の愛は
距離の二乗に反比例する

恋人よ
僕等はぴつたりと
抱き合はう!

                       <帝国芸術院賞授賞作品>
                               ――斎藤宗吉


これが北杜夫の作だというのがまた面白さを倍増させていると思う。
才能というのは、もちろん環境に左右される部分もあるにせよ、親
から直接受け継ぐ天才というのも、厳然としてあるんだなぁ、としみ
じみ感じ入る。小沢健二や宇多田ヒカルを見ててもそう思いますよ。

2011年4月2日土曜日

悪童日記

アゴタ・クリストフ 著        ハヤカワepi文庫

これはたしかに凄い。ここまで平易な言葉で書かれた戦争ってあるだろ
うか。徹底的に平易な言葉を選択するのは、ちょっと村上春樹を思い起
こす。明らかに第二次大戦中のハンガリーを舞台にしながらも、「大きな
町」「小さな町」などと、寓話的な要素を盛り込んでいるのも、どことなく春
樹好みのやり方だろう。

本書は、避難所で読んだ。大地震が起きたとき、私は帯広出張の帰りの
電車の中だった。白糠で停車中に揺れを感じた。震度3~4ぐらい。揺れ
がおさまるとすぐに車内アナウンスがあり、「避難所に誘導いたします」と
のこと。せいぜい4ぐらいの震度で、なにをおおげさな、これだからJRは、
と思いながら、しぶしぶ駅員に付いていった避難所の体育館でテレビを見
て、愕然とすることになる。緊急ニュースでは「震度7」という阪神大震災以
来聞いたことの無い震度を告げている。地震による被害の詳細はその時
点では分からなかったが、ヘリから撮ったリアルタイムの津波による激甚
な破壊の様を見せられて、茫然と時間は過ぎ、気付くと1時間以上もテレビ
を見つめ続けていたのだった。

結局その日は、大津波警報が出続けていたため、電車は動かず、道路も
通行止めで、おまけに電話も繋がらない。避難した体育館に泊まるしかな
かった。
眠くないし、話す相手もいないので、ひたすら『悪童日記』を読んでいた。20
分おきにニュースを見るために立ったりしていたが、不思議と読み始めたら
集中できた。読む本が無かったら危なかった。帯広に大きい本屋があった
ので、感動して思わず3冊買ったうちの1冊が本書だった。初めての土地で
本屋に入ると必ず記念に何か買ってしまう性癖がこんなところで役に立った。

ということで『悪童日記』はおそらく生涯、あの白糠の寒い避難所で過ごした
一夜と分かちがたく結びついた小説となるだろう。私など、たった一夜で済ん
で幸運なほうだというのは分かっているのだが。