2010年12月26日日曜日

南の島のティオ

池澤夏樹 著       文春文庫

子ども向けに書いた短篇小説とのこと。どおりで最初の
二篇ぐらいは結構かったるかったが、だんだん楽しくなっ
てきて、一日一篇寝る前に読んでいたのだけれど、最後
のほうは寝るのが楽しみなぐらいだった。やりおるわ。

太平洋のどっかにあるらしい架空の島で、親の観光ホテ
ルの仕事を手伝いながらも、まだまだ遊び盛りの十代前
半の少年「ティオ」が主人公。
あいかわらず「南の島での生活」と「手仕事」への著者の
偏愛が溢れている連作である。カヌーを大木からくりぬい
て作ったり、小屋を立てて屋根を葺いたりするのだが、
工程が実に具体的で、その通りにすればカヌーも小屋も
作れそうだ。傾向として、海外に長く住んだりする人は、
その手の「工程」が好きな人が多い気がする。海外では
面倒なことも多いだろうが、そういうのも含めて「工程」そ
のものが好きなんだろう。またそれを細かく描写するの
も面倒だと思わないのだろう。読者に「面倒」と思わせな
いためにはまた別の高度な技術が要るだろうけど。

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